そんな恋もありかなって。

あさの紅茶

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一章◆お見合い

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個室に案内されると、先方はすでに座って待っていた。
祖母同士が共に挨拶をし、自分たちの番が来る。
こういう場合、どちらから先に挨拶すべきなのかと考えていたが、相手側が一向に口を開かないので、居たたまれなくなって杏奈が口を開く。

「えっと…。三浦杏奈と申します。本日はよろしくお願い致します。」

ペコリと頭を下げつつ彼を盗み見ると、相手側の祖母が彼を叩いているのが見えた。

「しっかりせんかい。」

小突かれて、彼は頭を掻きながら柔らかい笑みを落とした。

「すみません。横山広人と申します。どうぞよろしくお願い致します。」

丁寧な挨拶の後、お互い目が合う。
と、ふいと視線を外されて杏奈はムッとした。

(何だこの態度は!)

じっと広人を見ると、ほのかに頬がピンクに染まっているような気がする。

(ん?もしかして照れてるの?)

そう思うと、何だか自分まで影響されて気恥ずかしくなってきて、杏奈はごまかすためにコホンと咳払いをした。

「えっと、広人さんとお呼びしても?」

「ええ、もちろんです。僕も杏奈さんとお呼びしてもいいでしょうか?」

お見合い前に祖母から写真と簡単なプロフィールを見せてもらっていた。
横山広人35歳。杏奈より7歳歳上だ。
目が悪いのか、分厚いレンズの黒淵メガネをかけていて、一歩間違えると牛乳瓶の底のようなメガネだ。

(…ダサいわね。)

けれどそれを除けば、シワのない上品なスーツを綺麗に着こなし、柔らかい物腰は好印象だ。
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