年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

逃げるなよ

005

三条大橋まで歩いてくるとぶわっと風が吹き抜ける。下には鴨川が流れていてとても綺麗だ。四条からずいぶんと歩いて来て一旦一休みだ。

橋の欄干から川のせせらぎの音を聴くだけで心が浄化されていくようだった。

だが、それは一瞬のこと。
ふと目につくカップル、カップル、カップル。

「……はあ？！」

そうだった、ガイドブックにも書いてあった。鴨川の堤防沿いはなぜか等間隔に座るカップルが名物なんだった。初日にこんなものを見てしまうなんて、完全にプラン間違えた。

私はこんなのを見に来たんじゃないのに。
むくむくとわき上がる気持ちはやがてイライラへと変わっていく。

そして気付いたときには鴨川に向かって叫んでいた。

「どいつもこいつもイチャイチャしやがって！ムカつくわー！お前ら全員結婚して幸せになりやがれ！幸せにならないと許さないんだからっ！」

もう何言ってるのか自分でもよくわからない。勝手にポロポロと涙が溢れて止まらなくなった。

道行く人が避けていくのが分かる。
そりゃそうだ。突然叫んだかと思うと人目も憚らず泣いているのだ。回りの人にはヤバいやつにしか映らないだろう。

いいの、知らない土地だから。
綺麗な景色なのに私の心だけが荒んでいる。
何が傷心旅行だ。
そんなの建前で楽しもうと決めてたのに。
本当に傷心旅行だよ……。