22 / 26
22
しおりを挟む
ストンと音もなく綺麗に地上に降りたママは両腰に残っている牛刀二本をスッと抜く。
「さあ、ここからが大仕事よ。はい、これアンタの分」
そう言って一本をわたしに差し出してくる。「あ、うん」と素直に受け取ってみたものの、ママったらまさか牛刀を使う数を予想して持ってきていたのだろうか。
ママは人差し指を地面に向けて空中でくるくると円を描いた。それは魔法陣を形作り淡い光を放つ。
「何してるの?」
「転送魔法陣を描いてるんだけど?」
さも当然かのように言われても困る。
「ママって魔法使いなの?」
「アタシはあれよ、しがないレストランのママ」
指で魔法陣を描けて、精霊の力を借りて、八百万の神?を簡単に扱っているママ。しがないレストランのママで済ませられるものじゃない。しかも魔法使いだったとしても相当なレベルでしょ。
「こんな魔法見せられて、誰が信じるのよ」
「アンタ、信じる者は救われるって言葉知らないの? それにアンタだってコバルトファイヤードラゴン倒したくせに勇者を名乗る気なさそうじゃない?」
「わたしは勇者はやめたもん。今はウェイトレスなの!」
「だったらアタシと同じじゃない。アタシはママで、アンタはウェイトレス。たまたまコバルトファイヤードラゴンを倒しただけってこと。んで今はそのお宝を頂戴するところ」
わかるようなわからないような、ただの屁理屈のようなことを言ってのけるママ。まあでもそのおかげでコバルトファイヤードラゴンを無事に倒せたわけだし、よかったんだけど。だって一時は死ぬかも、と考えたわけだし。
ていうか、勇者や魔法使いが逃げ出す中、ママは余裕しゃくしゃくだった気がするんだけど……。まあいいや、深く考えるのはやめよう。深みにはまる気がする。
「いいこと? コバルトファイヤードラゴンが倒れたことを嗅ぎつけてここに来る奴らより早く、剥ぎ取れるものは剥ぎ取っちゃうのよ」
「それはいいけど持って帰れないじゃない?」
「そのために転送魔法陣をつくったんでしょーが。その上に置けばアタシの店にひとっ飛びよ」
と、ママは肉を剥いで魔法陣の上に乗せる。淡い光と共に一瞬でその姿は消えてなくなった。
転送魔法陣っていうのは結構な上位魔法で、魔法力だけじゃなく繊細な微調整が必要となってくるもの……って、もう何だっていいや。とにかくママは万能ってことだけ理解しておこう。うん、そうしよう。
「さあ、ここからが大仕事よ。はい、これアンタの分」
そう言って一本をわたしに差し出してくる。「あ、うん」と素直に受け取ってみたものの、ママったらまさか牛刀を使う数を予想して持ってきていたのだろうか。
ママは人差し指を地面に向けて空中でくるくると円を描いた。それは魔法陣を形作り淡い光を放つ。
「何してるの?」
「転送魔法陣を描いてるんだけど?」
さも当然かのように言われても困る。
「ママって魔法使いなの?」
「アタシはあれよ、しがないレストランのママ」
指で魔法陣を描けて、精霊の力を借りて、八百万の神?を簡単に扱っているママ。しがないレストランのママで済ませられるものじゃない。しかも魔法使いだったとしても相当なレベルでしょ。
「こんな魔法見せられて、誰が信じるのよ」
「アンタ、信じる者は救われるって言葉知らないの? それにアンタだってコバルトファイヤードラゴン倒したくせに勇者を名乗る気なさそうじゃない?」
「わたしは勇者はやめたもん。今はウェイトレスなの!」
「だったらアタシと同じじゃない。アタシはママで、アンタはウェイトレス。たまたまコバルトファイヤードラゴンを倒しただけってこと。んで今はそのお宝を頂戴するところ」
わかるようなわからないような、ただの屁理屈のようなことを言ってのけるママ。まあでもそのおかげでコバルトファイヤードラゴンを無事に倒せたわけだし、よかったんだけど。だって一時は死ぬかも、と考えたわけだし。
ていうか、勇者や魔法使いが逃げ出す中、ママは余裕しゃくしゃくだった気がするんだけど……。まあいいや、深く考えるのはやめよう。深みにはまる気がする。
「いいこと? コバルトファイヤードラゴンが倒れたことを嗅ぎつけてここに来る奴らより早く、剥ぎ取れるものは剥ぎ取っちゃうのよ」
「それはいいけど持って帰れないじゃない?」
「そのために転送魔法陣をつくったんでしょーが。その上に置けばアタシの店にひとっ飛びよ」
と、ママは肉を剥いで魔法陣の上に乗せる。淡い光と共に一瞬でその姿は消えてなくなった。
転送魔法陣っていうのは結構な上位魔法で、魔法力だけじゃなく繊細な微調整が必要となってくるもの……って、もう何だっていいや。とにかくママは万能ってことだけ理解しておこう。うん、そうしよう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
子猫マムと雲の都
杉 孝子
児童書・童話
マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。
マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
オレの師匠は職人バカ。~ル・リーデル宝石工房物語~
若松だんご
児童書・童話
街の中心からやや外れたところにある、「ル・リーデル宝石工房」
この工房には、新進気鋭の若い師匠とその弟子の二人が暮らしていた。
南の国で修行してきたという師匠の腕は決して悪くないのだが、街の人からの評価は、「地味。センスがない」。
仕事の依頼もなく、注文を受けることもない工房は常に貧乏で、薄い塩味豆だけスープしか食べられない。
「決めた!! この石を使って、一世一代の宝石を作り上げる!!」
貧乏に耐えかねた師匠が取り出したのは、先代が遺したエメラルドの原石。
「これ、使うのか?」
期待と不安の混じった目で石と師匠を見る弟子のグリュウ。
この石には無限の可能性が秘められてる。
興奮気味に話す師匠に戸惑うグリュウ。
石は本当に素晴らしいのか? クズ石じゃないのか? 大丈夫なのか?
――でも、完成するのがすっげえ楽しみ。
石に没頭すれば、周囲が全く見えなくなる職人バカな師匠と、それをフォローする弟子の小さな物語
絡まるソースのような
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
幼馴染の奏太が貧血で倒れたことをキッカケに、彩夏がバァヤ(おばあちゃん)として奏太の夕ご飯を家で作ってあげることに。
彩夏は奏太に対してバァヤ目線で、会話をしていく。
奏太は彩夏のことが恋愛として好き。
しかし彩夏は奏太のことが実は恋愛として好きだということに気付いていない。
そんな彩夏と奏太が料理で交流していき、彩夏が恋愛に気付いていくストーリー。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる