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チチチ……と鳥の鳴き声が微かに耳に響き、窓からは朝陽が眩しいほどに降り注いでいる。
わたしはうーんと伸びをしながら目をこすった。

「……ここ、どこだっけ?」

あふ、と大あくびをしながらまわりを見渡し、昨晩のことをぼんやりと思い出した。

「あっ! ママのお店に泊まらせてもらったんだった!」

ふかふかのお布団でぐっすりと寝たせいかすこぶる体の調子がいい。
ママのお店は外観は普通の路地裏のレストランで、部屋も質素な造り。だけど、なぜか布団は高級宿屋並みのふかふかさ。

……って、高級宿屋になんて泊まったことないけど。イメージよ、イメージ!

わたしはもそりと起き上がってそろりと部屋を出る。と、芳ばしい香りが微かに鼻をくすぐった。においを辿って一階へ下りれば、お店のキッチンでママが何か作業をしている。

「ママ、おはよう」

「アンタいつまで寝てるのよ。仕事は始まってるのよ」

「だって、あのお布団が気持ち良すぎるんだもん」

「羽毛布団よ、気持ちいいに決まってるでしょ」

「うもう……?」

「どうでもいいけど、早く朝ごはん食べちゃいなさいよ」

「えっ! ごはんがあるの?」

昨日と同じカウンターに座れば、目の前にドンと置かれるプレート。

「トーストとゆで玉子。あとコーヒーね」

「……なにそれ? また異世界の食べ物?」

「そうよ。だいたい、アンタの世界って美味しい食べ物がないのよね~」

「そんなことないと思うけど……」

内心、何言ってんだと思いつつ、トーストをひとかじりする。サクッと軽い音が耳に心地よく響き、瞬間、わたしは目を見張った。

「何これ! 美味しい!」

「そうでしょうとも。……なんか、アンタ新鮮で面白いわね」

ママは対面に座ってわたしが食べる様をケタケタと笑いながら眺める。わたしはひとくちひとくち噛みしめるように味わって食べた。

最近はお金がなくて一日一食なんて当たり前だった。しかも果物とか、市場で安く手に入れられるものばかり。それが昨晩はナポリタンを食べさせてもらえ、朝はこうしてトーストをいただいている。ママに出会わなかったら野たれ死んでいたに違いないというのに。

「ママ、本当に感謝してる」

「なあに? 気持ち悪いこと言わないでよ。誰がタダで食べさせるって言ったの?」

「えっ? お金取るの?」

「一宿一飯の恩義って言葉があるでしょうが。今日も馬鹿みたいに働いてもらうわよ」

「じゃあやっぱりここで働かせてくれるのね?」

「アンタ、調子に乗るんじゃないわよ!」

呆れたママの顔。
何だかんだ言いながら、本当は優しいんだって、わたしはもうわかってるんだからね。
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