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本物の家族

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また来るねと笑顔でバイバイをしてご機嫌に家に帰ったすずは、しばらくはいつも通り過ごしていたが、寝る前になって急にぐずりだした。

「ママがいいー。ママにあいたいー。」

さっからこの一点張りだ。
大泣きしながら訴えてくる。

「またお休みの日にママに会いに行こうね。」

「やだ。いまがいい。」

どう声掛けしても、どうあやしてもまったくダメで泣き声が大きくなるばかりだ。

「すずの好きなおせんべいあるよ。食べようか?」

「いらないもん。ママがいいー。」

いつもなら食いつくおせんべいも今日ばかりは効力を持たない。
柴原さんが抱っこしようにも全力拒否だ。

まったく手がつけられず、私は打ちのめされた気分だ。やはりママは偉大だ。私ではダメなんだ。ママじゃないから。
半年以上会っていなくても、すずにとってのママは変わらずにママで。それはもうどうしようもないけれど、この半年間すずと築いてきた関係は一瞬にして吹き飛ばされるような衝撃だった。

「そんなにママがいいなら、ママのとこにいきな。ねえねのとこに来るな!」

イライラが限界を超えて、思わず感情的に叫んだ。私はすずをリビングに残したまま、ドスドスと足音うるさく自室に入る。
すぐにギャン泣きする声が聞こえてきたが、それすらも腹立たしい。
私は耳を塞いだ。

泣きたいのはこっちだ。
これ以上私にどうしろというの。
こんなにも頑張ってるのに。

もう、嫌だ。
自然と涙が溢れてきて、私は膝を抱えてぐずぐずと泣いた。
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