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8.あふれる想い

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智光さんの運転する車は市街地を抜けて郊外へ入った。流れる風景に少しずつ田畑など自然が多くなっていく。

ずっと、両親のお墓はないものだと思っていた。
だけど私が知らなかっただけで、ちゃんと作られていたのだそう。石井さんがその事実を突き止めてくれ、教えてくださった。

外はジリジリと蝉が鳴き始め、いつの間にか夏の日差しに変わっている。照りつける太陽が肌に痛い。

大きな百合が入った花束を胸に抱える。

霊園は広大な土地にあり、自然豊かに綺麗に管理されていた。

幸山家と書かれた墓石はお花もお線香の残り灰すらなく、水が枯れている。まわりに敷き詰められている砂利の間からはいくつもの雑草が生えていて、誰も来ていないことを証明しているようだ。

「掃除するか」

「はい」

智光さんと手分けして雑草を抜いたり墓石を磨いたり、一生懸命に掃除した。

容赦ない日差しに汗がしたたり落ちてくる。一心不乱に墓石を磨いていたら、被っていた帽子をぎゅっと押さえられた。目深にかぶり、視界が少し狭くなる。

「熱中症になったら大変だろう。そろそろいいんじゃないか?」

「そうですね。ありがとうございます」

本当は喪服とか、せめて綺麗な格好で来たかったけれど、掃除を想定してTシャツにパンツというラフな格好で訪れた私たち。Tシャツに汗染みが出来るほどの暑さだったので、大正解だ。

持ってきたお花を挿すと、智光さんが水を注いでくれた。なみなみと揺れる水面が太陽の光を反射してキラキラと輝く。

お線香の煙がゆらりと上った。
微風に煽られながら高く高く上ってゆく。

帽子を脱いでから手を合わせ、目を閉じた。

お線香の香りが広がり、しんとした時間が訪れる。耳に届くのは風に揺れて葉がこすれ合う音とセミの鳴き声だけ。遠くの空には真っ白で大きな入道雲がもくもくとわいていた。
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