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6.求めている

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予期せぬ涙はほんのりと目元を腫らしてしまい、出勤するなり目ざとく敦子さんに見つけられて心配をかけてしまった。

「社長とケンカでもしたの?」

「いえ、違うんです。ただちょっといろいろあって。私の顔そんなにひどいですか?」

「ひどくはないけど、ちょっと気になるっていうか……」

「はー、困ったなぁ」

濡らしたハンカチで目元を冷やす。智光さんにも仕事を休むかと散々心配されてしまったし。

「どうした、やえちゃん」

「社長が原因なら俺たちで社長室に殴り込みに行くけど?」

田辺さんと安川さんが次々と声をかけてくれる。ありがたいことこの上ないけど、やはり心配をかけてしまって申し訳ない。

「もー、田辺さんも安川さんも落ち着きなさいよ」

「俺たちのやえちゃんに何かあったら社長に文句言ってやらないと」

「気持ちはわかるけどねぇ」

「社長が嫌になったらいつでも戻ってきな。俺たちがやっつけてやるよ」

「おーい、やえちゃんが困ってるでしょー」

敦子さんは楽しそうに笑う。田辺さんも安川さんも私の味方だと声高に励ましてくれる。
なんてあったかくてありがたいのだろう。その優しさがよけいに胸を熱くする。

「皆さん、心配してくださってありがとうございます。ぐすっ……」

「やえちゃんー!」

はらりと落ちた涙に田辺さんがギョッと目をしば立たせる。

「ちょっと社長室乗り込んでくるわ」

安川さんが立ち上がり、私たちの騒ぎっぷりに他の社員さんたちも巻き込んで大騒ぎをしてしまった。申し訳ない気持ちとありがたい気持ちで胸がいっぱいだ。

敦子さんだけが「あー、この会社ってほんと平和よねぇ」とお茶をすすっていた。

その後、私の知らないところで智光さんは「やえちゃんを泣かせた悪者」として説教されたらしい。社長の威厳なんてこれっぽっちもなかったわ、と敦子さんがおかしそうに笑いながら教えてくれた。

公私混同して本当にごめんなさい。
さすがに反省しています。
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