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6.求めている

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新居に引っ越して一日目。
私の頭の中はベッドのことばかりでいっぱいになった。

本当、自分の頭の中、大丈夫かと心配になる。
なるべく考えないようにと片付けに集中してみたり料理に集中してみたり……。

そうやって過ごしているうちにあっという間に夜になってしまい、その時は刻一刻と近づいている。

ああ、どうしよう、緊張する。

お風呂から上がって無駄にキッチンをウロウロしてしまったり、リビングで普段見ないテレビをつけてしまったり。

……落ちつかない。

智光さんはというと、夕食のあと一人書斎に籠もって仕事をしている。
邪魔しちゃ悪いと思って声はかけていない。

はぁ、そわそわしてるのは私だけかぁ……。

その後もウロウロしてしまったけれど気づけば二十二時を超えていて、智光さんは未だ出てこず。私は勇気を振り絞って一人寝室の扉を開けた。

大きなベッドに枕が二つ。
ベッドに座ってみれば、ちょうどいい硬さに肌触りのいいお布団で吸い込まれそうになる。前に使っていたお布団もふかふかで気持ちが良かったけれど、このベッドもなかなかだ。

「……先に寝ちゃおうかな?」

仕事中の智光さんに声をかけるのも憚られるし、かといって待っていて一緒にベッドに入るのも緊張する。だったらここは先に寝てしまう方が気持ちが楽かもしれない。

ぐるりと一通り考えを巡らせたあと、私はそうっとベッドに入った。智光さんが狭くならないようになるべく端の方に寄る。

智光さん、お仕事忙しいのかな?
広いベッドに一人きりだと何だか寂しく感じてしまう。

「早く来てくれないかな……」

緊張するとか言いながら恋しい気持ちもあったりして。

そんな矛盾した気持ちを抱えながら、私はいつの間にか眠りに落ちていた。お布団の気持ちよさには抗えなかったようだ。

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