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5.婚姻届
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その後智光さんは「やっぱり邪魔になりそうだから今日はこれくらいにしておく」とそそくさとキッチンを去った。
寂しいような、ありがたいような、複雑な気分だ。
ちょうどご飯も炊き上がった。
親子丼とお味噌汁をよそい、テーブルに並べる。
「やえの分は?」
「あ……」
言われて、気づく。
いつもダイニングテーブルに私の席はなかった。だから自分の分をテーブルに並べるという発想がなかった。そんな自分が惨めに思える。
智光さんは私の背を押し「座って」と促す。
親子丼とお味噌汁をよそって私の前に並べてくれた。
「さあ、いただこうか」
「……いただきます」
智光さんと向かい合って箸をつける。自分で作ったものなのにとんでもなく美味しく感じて目頭が熱くなる。
「美味いな」
「ありがとう……ございます……」
私は顔を上げられない。
だってこんな嬉しいことはないんだもの。
食卓を囲んで私が作った親子丼を美味しいって食べてくれる、そんな日が来るなんて思ってもみなかったから。
心があったかくなって、ああ、なんかいいなこういうのって、感じられることがすごくすごく幸せ。
「智光さん、ありがとうございます」
お礼を言えば智光さんはふっと目尻を下げる。
「やっぱりやえは笑っている方がいい」
なんて甘く微笑まれるものだから、私の胸はきゅーんと悲鳴を上げた。
寂しいような、ありがたいような、複雑な気分だ。
ちょうどご飯も炊き上がった。
親子丼とお味噌汁をよそい、テーブルに並べる。
「やえの分は?」
「あ……」
言われて、気づく。
いつもダイニングテーブルに私の席はなかった。だから自分の分をテーブルに並べるという発想がなかった。そんな自分が惨めに思える。
智光さんは私の背を押し「座って」と促す。
親子丼とお味噌汁をよそって私の前に並べてくれた。
「さあ、いただこうか」
「……いただきます」
智光さんと向かい合って箸をつける。自分で作ったものなのにとんでもなく美味しく感じて目頭が熱くなる。
「美味いな」
「ありがとう……ございます……」
私は顔を上げられない。
だってこんな嬉しいことはないんだもの。
食卓を囲んで私が作った親子丼を美味しいって食べてくれる、そんな日が来るなんて思ってもみなかったから。
心があったかくなって、ああ、なんかいいなこういうのって、感じられることがすごくすごく幸せ。
「智光さん、ありがとうございます」
お礼を言えば智光さんはふっと目尻を下げる。
「やっぱりやえは笑っている方がいい」
なんて甘く微笑まれるものだから、私の胸はきゅーんと悲鳴を上げた。
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