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1.八重桜
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しおりを挟む今日の夕飯は生姜焼きにお味噌汁、サラダ。
三人分準備してから、私はダイニングから逃げるように洗濯物を取り込みに外に出た。
叔父さん叔母さんが食べている間、そこに私の居場所はないからだ。
洗濯物を畳みながら、うっすらと聞こえてくる会話に心を無にする。聞きたくないのに聞こえてくる。むしろ聞こえるように言っているのかもしれない。
「生姜焼きかよ。俺あんまり好きじゃないんだよね」
「なんか薄味ね。いつまで経っても上達しないわ、あの子」
お兄さんと叔母さんが夕飯にケチをつける。叔父さんの声は聞こえないけれど、きっと同意しているのだろう。
心がモヤモヤと黒く染まっていく気がする。
ちゃんと小麦粉をまぶしてお肉が柔らかくなるようにした。
タレもレシピどおりに作って絡めた。
お味噌汁はこうじ味噌にした。
栄養バランスも考えてサラダも添えた。
それなのに文句ばかり。
毎日毎日、これ見よがしに紡がれる会話に辟易する。
ああ、嫌だ。
早く明日になってほしい。
私は洗濯物を床に投げつける。
軽い布たちはさして音を立てることもなく、ふぁさっと床に落ちていった。
少しもストレス発散にはならなかった。
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