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プロローグ

プロローグ

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朝の見回りと掃除は日課だ。
社員が気持ちよく働ける環境づくりは社長の俺が率先して行うことで社員の士気も上がるというもの。

「社長、おはようございます」

いつからか、出勤時間の早い彼女も一緒に掃除をするようになった。
いや、もしかしたら俺が社長になる前から、彼女の日課だったのかもしれない。
それくらい、彼女は自然に溶け込んでいる。

「今日もいいお天気ですね」

「ああ、そうだな」

彼女はいつだって健気で素直で、まるで春の風に揺られる一輪の花のように柔らかく笑う。
そんな彼女に俺は癒されつつ、けれど愛想のない相槌しかうてない、つまらない男で少し申し訳なく感じる。

彼女は仕事の面でも責任感が強くとても気が利いて、けれど誰かに媚びを売るだとか良く見られようだとか、そんなことは思っていなくて。
分け隔てなく与える優しさは、さながら女神のように皆を癒し、そして包み込んでゆく。

彼女のまわりはいつもあたたかくて穏やかで、心安らげる空間が広がっている。

そんな君に特別に愛される人は、さぞかし幸せなのだろうと、心の奥底で羨ましく思っていた。


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