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14.まどろみ

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朝はいつも通りに起きて、穂高さんの出勤に合わせて家を出る。向かう先はソレイユだ。休業したからといって放置しておくわけにはいかない。かといって、開店はさせられないんだけど……。

窓を開けて新鮮な空気を取り込む。軽く掃除をしていつものBGMをかけると、止まっていた時間がゆるりと動き出す気がした。

お客さんは誰も来ない。休業しているから当たり前なんだけど、そういえばソレイユを継いだ直後もこんな風に閑散としていたことを思い出した。

いつでも開店できるように店の中を整える。これからどうしていくか、ちゃんと考えなくちゃ。

ふいにトントンと扉がノックされて、私は顔を上げた。

「えっ? 藤本さん?」

ソレイユの常連さんだった藤本さん夫妻がにこやかに立っていて、急いで鍵を開ける。

「莉子ちゃん、心配したわよ。臨時休業だなんて、どうしたの?」

「すみません。突然お休みしてしまって。今日はどうされたんですか?」

「どうもこうもないわ。心配だったから覗きに来たの。そしたら莉子ちゃんがいるんだもの。嬉しくなっちゃって」

藤本さんは楽しそうにペシペシと私の腕を叩く。「元気そうでよかったわぁ」とご夫婦で頷きあっている。

そんな風に思ってくれることが嬉しくて、胸がじんと熱くなる。

「よかったら、コーヒー飲んでいきませんか?」

「えっ? いいの?」

「もちろんですよ」

藤本さんを席にご案内して、私はキッチンでコーヒーを淹れる。旦那様はブラック、奥様はアメリカンがお好き。砂糖やミルクは使わない。いつものモーニングセットは出せないので、気持ちばかりの豆菓子を添えた。
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