捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

あさの紅茶

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11.過去の傷

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ふと、目を覚ました。まだ部屋は薄暗い。サイドテーブルに置かれた時計を確認すると、午前三時。暖かな布団に包まれてもう一度眠りの淵に誘《いざな》われる。ぎゅうっと毛布に丸まったところで、はっと気づいた。

「あれ? 穂高さん……?」

一緒に寝ていたはずの穂高さんがベッドにいない。あれはすべて夢だったのかと思ったけれど、毛布の中の私は服を着ていない。でもしっかりと包まっていて寒くはない。サイドテーブルには私が着ていたシャツや下着が綺麗に畳まれていた。

ささっと着替えて、毛布を片手にリビングへ行く。するとやはりソファに穂高さんが寝ていた。テーブルの上には開きっぱなしのノートパソコン。もしかしてあの後また仕事をしていたのだろうか。スクリーンセイバーになっているので、途中で寝てしまったのかもしれない。眼鏡もかけたままだし……。

そうっと近寄って毛布をかけた。
眼鏡も外してあげたほうがいいよね?

すっと眼鏡を抜く。きれいな寝顔がスクリーンセイバーの明かりに照らされて、とても色っぽく見える。薄く引いた唇も、色気があって……。と、急にあの情事を思い出して心臓がバクバクと暴れ出した。

愛してるって言ってくれて、私も好きだって告白して、それで――

「どうしたの?」

「あ……ご、ごめんなさい。起こしちゃった」

「いや、また毛布持ってきてくれたんだ? おいで」

「え、あっ……」

「ごめんね、寂しかった?」

穂高さんの胸の中に引きずり込まれて、またしても私は後ろから抱きかかえられた。穂高さんと毛布の温もりが心地良い。

「もう少し寝かせて」

そんな甘えた声の呟きが聞こえたと思うと、またすーという規則的な寝息に変わる。デジャヴのような感覚に可笑しくなりながらも、私もそのまま目を閉じる。

そっか、私、寂しかったんだ。一人で寝るなんて当たり前だと思っていたのにな。不思議な感覚。

こうしてくっついて眠るのがすごく幸せ。ソファなんてベッドよりも狭いのに。それでもいいって思えてしまう。

私、こんなに幸せでいいのかな?
どんな魔法にかけられたの?
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