捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

あさの紅茶

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9.暴く

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私はどうしたいんだろう。ソレイユを守りたい、それだけしか頭になかった。だから雄一をどうしたいかなんて、わからない。別に慰謝料なんてほしくない。訴えたいわけでもない。だけどこのままでいいなんて、思っていない。

「……雄一にはもうソレイユに関わってほしくない。でも……感謝はしてる。今まで一緒に頑張ってくれて……ありがとう」

数年、一緒に働いたことは事実だから。優しくしてくれたことだってあったし、助けられたこともたくさんあった。それらもなかったことにするのは、ちょっと違うかなと思う。甘い考えなのかもしれないけれど。

でも穂高さんは「莉子さんがそれでいいなら、いいですよ」と、すんなり受け入れてくれた。雄一は私の言葉に、もう文句を言わなかった。ただ悔しそうに拳を握りしめている。

「ソレイユはどうなるんですか?」

桃香ちゃんが消え入りそうな声で呟いた。泣きそうな桃香ちゃんの背をそっと撫でる。

ソレイユは結局しばらく閉めることになるだろう。今までと同じように経営するには、キッチンが私一人では心もとない。それに、売上が落ちていることも事実なのだ。こんなことがなくたって、いつかはお店を閉めることになっていたかもしれない。また経営ができる状態になるまで、悔しいけれどお休みするしかないんだろうな。桃香ちゃんにも千景さんにも申し訳ないけど……。

「桃香ちゃん、千景さん、本当にごめんなさい。私の力不足でこのままソレイユを続けることが難しいんです。だから……」

「私、待ちます! ソレイユが再開するのを。だから、一緒に頑張らせてください」

「桃香ちゃん……」

うるっと瞳を潤ませながら私の手を握る桃香ちゃんに、ありがたいなと胸がきゅっとなったのだけど。握られていた手を穂高さんが乱暴に引き剥がして、何事かと目を丸くした。

「なっ、何するんですか!」

桃香ちゃんが抗議の声を上げるけれど、穂高さんはピクリとも動じない。それどころか、ニッコリと笑みを浮かべる。でも瞳の奥はまったく笑っていない。得も言われぬ威圧感に、息をのんだ。

「間瀬桃香さん、あなたにも話がありますよ」

「え?」

「彼と一緒にソレイユの土地を売ろうと計画していましたね」

「な、何言ってるんですか? 私は雄一さんに脅されていただけで、関係ないです。これから莉子さんと一緒にソレイユで頑張って働きたいって思ってるんですから。ねえ、莉子さん」

「あ……」

口を開こうとした私を、穂高さんが手で制す。余計な口出しは無用とばかりに目配せされ、私は口をつぐんで目を伏せた。
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