捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

あさの紅茶

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6.嘘つき

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とにもかくにも、一旦帰って荷物をまとめて、雄一に別れることを告げて家を出よう。その方が、雄一だって堂々と桃香ちゃんと恋人になれるだろうし、私という障害がなくなって清々するはず。うん、それがいい。そうしよう。

仕事が終わって自宅に戻り、身支度を整える。変に整えられたベッドに違和感を覚えて、ふっと昨夜の出来事が頭をよぎった。

ここで二人がイチャイチャしていたのか……。

思い出して吐き気がした。口元を押さえて必死に心を落ち着かせる。

本当はもう全部捨ててしまいたい。ベッドもシーツも雄一も。桃香ちゃんが触ったもの全部、視界にすら入れたくない。

このアパートも、解約しなくちゃ……。

「莉子、今日も向こうに泊まるのか?」

いつの間にか近くに来ていた雄一に声をかけられて、はっと我に返った。
頑張れ私、平常心、平常心……。

「うん、そうだね」

「どうだった、お祖父さん」

心配そうに聞いてくるけれど、雄一は祖父が死ぬことを望んでいた。この言葉の裏に、どんな禍々しい感情が潜んでいるのだろう。嫌悪感が湧き上がってきて、思わず目線を逸らした。

「うん、あんまりよくなくて……しばらく向こうでサポートしながら、ソレイユに通おうと思うの」

「ふーん。ま、いいんじゃね?」

「ありがとう。荷物準備するね」

雄一は興味なさそうに返事をしてソファに寝転がった。

本当はありがとうだなんて、全然言いたくない。言葉にするのも憚られる。だけど、ソレイユを守るためにも、ここで弱音を吐いたらいけない。雄一と桃香ちゃんの思うようにはさせないんだから。

それに、私が家を空けるとなればきっと昨夜のようにまたここに桃香ちゃんが来るはず……。

そう考えたところで吐き気が込み上げてトイレに駆け込んだ。冷静でいたいのに怒りがわなわなと湧いてくる。じわりと濡れた目元を、トイレットペーパーで急いで拭った。
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