捨てられた彼女は敏腕弁護士に甘く包囲される

あさの紅茶

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2.縋りたい気持ち

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「一般論を言いますね。もし浮気が原因で別れるとしても、莉子さんはまだ結婚されていません。そうなると恋愛関係については法律による規制はありません。慰謝料を取りたいと思っても、なかなか難しいでしょう」

「慰謝料……」

「ただ、婚約しているだとか、その婚約関係を証明できれば、請求できる可能性もあります。浮気の証拠を押さえたいなら、写真とか録音とかあるといいですね」

ゴクリ、と息を飲んだ。
私は雄一の浮気を突き止めたいのだろうか。もし突き止めたらどうなる? 別れる? でももし何もなかったら、疑った私の心は罪悪感に苛まれるかもしれない。どちらにせよ、雄一とこの先も上手くいく未来が見えない。

「もしかしたらその女性が香水を付けてきたのはわざとかもしれないですね」

「わざと?」

「莉子さんに気づかせるための匂わせのようなものですね」

「え、どうして。隠したいものなんじゃ……」

「人間の心理は複雑ですからね」

そう言われて、今までの桃香ちゃんの態度が急に疑念に満ちたような気がした。一生懸命働いてくれていると思っていたけれど、雄一と仲良くしていたり、近づいたり、あれもこれも私への当てつけなんじゃないかと感じてしまう。

「そうはいっても、彼と別れたくないのなら、今は詮索されない方が精神的にもいいかもしれません。こういう問題はとても疲弊しますからね」

「確かに、今とても苦しいです。まだ何もしていないし、ただ疑っているだけというか……」

「僕は職業柄白黒ハッキリさせたいタイプなので、とことん調べますけどね」

「私も穂高さんみたいに強くなりたいです」

「莉子さんは頑張っている。十分強いですよ。今日、ここに来るのも、僕に話をするのもずいぶん勇気がいったでしょうし」

ね、と柔らかな笑みを向けられて、なんとも言い難いムズムズした気持ちになった。少しだけ、心の闇が浄化されるような、そんな気持ち。穂高さんの優しさがひたひたと浸透してくる。
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