俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい

あさの紅茶

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それぞれの想い

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「えっと……」

と、奈々が言葉に詰まっていると、

「思い付きの転職ならやめとけ」

祐吾は冷たく言い、一人リビングへ入っていった。

「ちょっと待って!」

祐吾を追いかけながら、奈々も抗議の声を上げる。

「何だ?」

「私だって祐吾さんみたいにしっかり働きたいの」

「今はしっかり働いてないのか?」

「働いてるけど……でも……。ずっと派遣社員っていう雇用形態に負い目を感じてるの。派遣社員のくせにって言われるのが嫌なの」

奈々は震えそうになる唇にぎゅっと力を入れて、

「祐吾さんに見合う彼女になりたいの」

と、祐吾に訴えるように言った。

祐吾はふんっとバカにしたような態度でソファにどっかり座ると、

「ほんとにお前はどうしようもねーな」

とそっぽを向いた。

奈々は泣きそうになる気持ちを必死に抑えながら、ただその場に立ち尽くした。

二人の沈黙を破るかのように、祐吾は大きな溜め息をついた。奈々はぎゅっと身を引き締める。次は何を言われるのか、はたまた呆れられてしまったのか、固く握りしめた手は気を抜くと震えてしまいそうだった。

そんな奈々をチラリと見ると、祐吾はふいと目をそらす。

「お前、案外おっちょこちょいだし、頑固だし、小動物みたいにちょこまか動くし、雑用も力仕事もするし、まわりのおっさんたちにも凄みを利かすし、危なっかしいんだよ」

祐吾は不機嫌そうに言う。

「そのくせ誰とでも仲良くなるし、すぐ笑顔を振り撒くし、可愛いし、ほっとけないし、俺の目の届く範囲にいやがれ。何が俺に見合う彼女になりたいだ。バーカ」

祐吾は口悪く言ったつもりだったが、

「あれ?私、褒められた?」

と奈々は意外にもポジティブに受け止めていた。

何だかとても嬉しいことを言われた気がする。嬉しい気持ちが勝って頬は自然と緩んでしまうが、心は少し複雑だった。
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