空を飛ぶ能力しかないと思っていましたが、いつの間にかヒーローになってました。

無自信

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第5部 第3話

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 次の日の土曜日の夜、ネットだけでなくテレビのニュースまで4日後の最終試験の話題で持ちきりになっていることに辟易したショウは自分の部屋で大好きな推理小説を読んでいた。

ショウは人が発言したことは創作物のことでも事実と違うと分かってしまうので、推理もののドラマや推理ものの映画は犯人がすぐ分かってしまうために能力を授かった日から受け付けなくなってしまった。そのため大好きな推理ものを楽しみたい時はもっぱら小説を読んで楽しんでいた。

「(うーん、このノダってやつが怪しいんだよな~。)」と考えていたところにスマホからlineのメッセージの着信音が鳴った。

「(誰だよ?今いいところなのに…ヒイロからか…。)」

楽しいひと時を邪魔されて少しイラつきながらもヒイロからのメッセージを確認した。

「4日後の最終試験の為に特訓したいので明日ちょっと付き合ってくれないか?」というヒイロからのメッセージに対してショウは、「(特訓?ヒイロがヒーローらしくあってくれるのは嬉しいけど何するんだろ?『了解。何時にどこに行けばいい?』っと。)」ショウが返信を送るとすぐにヒイロからありがとうという意味のスタンプと「9時に○○駅前に来てくれるか。」というメッセージが送られてきた。

「(9時に○○駅前か。8時前に起きれば間に合うな。了解っと。)」

ショウはヒイロのメッセージの返事に了解という意味のスタンプを送るとまた推理小説を読み始めたがベッドに横になりながら読んでいたためいつの間にか眠ってしまった。



 次の日の日曜日の朝8時55分、ショウは○○駅前でヒイロを待っていた。
ショウは几帳面な性格なので何事も5分前行動をとっていた。
それから2分後にヒイロがやってきた。

「ごめん。ごめん。待ったか?」と、ヒイロは約束の時刻までまだ時間があったが待たせたことをショウに謝った。

「いや、全然。まだ約束の時刻まで時間があるし、謝らなくてもいいよ。」

ショウは全く気にしていないことを素直に伝えた。

「それでこれからどこへ行くんだ?」

ショウが行き先をヒイロに尋ねると、ヒイロは「もう一人来るからちょっと待って。」と答えた。

「(もう一人って誰だろう?)」と考えながらショウはヒイロに言われるがまま待った。そして9時になるとパッと2人の前にユウキ・ヒデオの相棒であるエンドウ・コウイチが現れた。

「ごめん。待たせたかな?」

「いえ、ついさっき来たばかりです。今日はよろしくお願いします。」

ヒイロは急に現れたコウイチに挨拶していたが、ショウはまだ状況が理解できず黙っていた。

「それじゃあ行こうか?」

と、コウイチが場所を移そうとしたので、ショウはヒイロを肘で小突きながら「ヒイロ。コウイチさんを呼んでどこに行こうっていうんだ?」と小声でヒイロに尋ねた。ヒイロは今気が付いたような顔をして「あー、ごめん。ごめん。言ってなかったっけ?これからコウイチさんにヒデオさんが普段トレーニングしている山に連れて行ってもらうんだ。」と答えた。

「ヒデオさんがトレーニングしている山って。ヒイロ、ヒデオさんに怪物退治の教えを請おうっていうのか?」

「まさか。自主練に都合がいい場所だからちょっと借りるだけだよ。」

「そうか…。」

ヒイロの返答にショウは少しがっかりしているようだった。

「それじゃあ、俺に掴まってくれるか。」

コウイチが2人の会話が終わると話を進めようとした。2人が返事をしてコウイチの腕に掴まると3人はヒデオがトレーニングしている山にワープした。



 3人が山にワープしてくるとヒデオがサンドバッグにパンチを繰り出している光景が目に入った。ヒデオはすぐに3人がやってきたことに気付き「やあ、ヒイロくんにショウくん。よく来たね。」と声を掛けてきた。

「今日は僕の特訓の為に場所を提供していただきありがとうございます。ところで今のパンチを見ていると空手というよりはボクシングに近い気がするのですがヒデオさんってボクシングもやってらしたんですか?」

ヒイロはヒデオのトレーニングをする姿を見て疑問に思ったことを聞いた。

「あー、これは最終試験の為にいろんな格闘技を学んでいて、昨日習ったボクシングの復習をしていたんだ。まあ、付け焼き刃だけどね。」

「へー!すごいですね!ヒデオさんの強さをもってしても、まだまだ驕ることなく上を目指そうとするなんて本当にすごいです!」

ヒイロは正直にヒデオを称賛した。

「いや、そんなことないよ。ところでヒイロくんはどんな特訓をするんだい?一応頼まれた通り、イトイから普段怪物退治に使っている人形を何体かもらってきてあるけど。」

ヒイロはヒデオの問いを待ってましたと言わんばかりの表情をして「僕の予想では『光のぬし』たちはかなり離れたところ、もしかしたら太陽系の外くらい離れたところからやってきたんじゃないかと考えているのですが、そうだとしたら僕の能力にはまだ1つあってしかるべき能力があると僕は思うんです。」と持論を述べた。

「あってしかるべき能力?」

ヒデオはヒイロの言わんとすることがわからずそのまま聞き返した。

「はい。僕の能力は『光のぬしが乗ってきた乗り物のように空を飛べる能力』なので、光のぬしが遠く離れた地球にやってくるために必要な…………する機能が能力として僕に備わっていると思うんです。」

「…………する能力?確かに宇宙を舞台にした作品を見ると結構出てくるけど…。」

ヒデオはヒイロの回答に半信半疑でした。

さらにコウイチが「ヒイロくん、言いづらいんだけど『光のぬし』が地球に住む僕たちのところに来た時の乗り物が地球に向かってきたときの乗り物とは限らないんじゃないかな?例えば大きな母船に乗って地球にやってきて、地球に着いたら小型船で僕たちのところに来たのかもしれないよ?」とヒイロの予想を否定するような予想を口にしましたが、ヒイロは自信たっぷりに「いえ、確実に…………する能力は備わっているみたいですよ。なっ!ショウ!」とショウに答えを委ねた。

「なんでショウくんにそんなことが分かるんだい?」

ヒデオはごく当たり前に質問した。
するとショウではなくコウイチが口を開いた。

「待て、ヒデオ。確かショウくんの能力は『対象者が事実と違うことを言った場合それを見抜く能力』だったはずだ。つまりさっきのヒイロくんの発言が正しいかどうかはショウくんには分かってしまうというわけだ。だよな?ショウくん?」

「はい。僕にはさっきのヒイロの発言が正しいことが分かっています。」

ショウがきっぱりと言い切ったため、ヒデオとコウイチはヒイロの発言が正しいことに驚きつつも、ヒイロの本当の能力のすごさに笑ってしまった。

「ハハハ。まさか宇宙まで飛んでいけるだけじゃなくて、…………までできるとは驚いたな!これはもしかしたらレーザーとかも出せるんじゃないのかな?」

ヒデオは冗談っぽく言った。

「ハハハ。確かに。敵を攻撃する能力がついていてもおかしくないよな。」

コウイチもヒデオの冗談に乗っかった。

「いや、さすがにレーザーは出せないみたいですよ。」

ヒデオとコウイチの冗談にショウが真面目に返答するとそれが面白かったのか2人はまた笑いだした。

「ハハハ。冗談だよ。ショウくん。冗談。ハハハ。…ところで…………する能力と人形を使ってどんな特訓をしようっていうんだい?」

コウイチはひとしきり笑った後本題に戻した。

「えーと、うまく説明できないんですけど、僕が高速で飛びながら…………ようと思うのですが…。」

ヒデオとコウイチとショウは真剣な表情をしながらヒイロの説明を聞いていた。するとヒデオがまず口を開いた。

「これができたらすごいと思う。いや、もしかしたら俺なんか太刀打ちできないくらい強い能力になるかもしれない!」

「うん。確かに。倒せない敵なんかいないんじゃないかな?」と、コウイチもすごさを認めた。

それに対してヒイロははにかみながら「でもまだ絵に描いた餅ですけどね。」と答えた。

「でもそれなら絵に描いた餅を本当の餅にすればいいだけじゃん!ヒイロならできる!俺は信じてる!」

ショウが真剣な表情で応援してくれたのでヒイロは余計にはにかみながら「ハハ、まあ頑張ってみるよ。」と答えた。

「あっ!」ショウが何かに気付き声を上げた。

するとショウはヒイロのことをジトーっとした目で見ながら「ヒイロ!もしかして今日俺を呼んだのって自分の能力の確認をするためだけだったのか?」と尋ねた。
それを聞いたヒイロは特に悪びれもせずに「そうだよ。」と答えた。

ヒイロの態度が癪に障ったのかショウは「だったら昨日電話ででも聞けば良かっただろ?ほぼ俺がここにいる意味ないじゃないか!」と怒りの声を上げた。

それでもヒイロは悪びれることもなく、それどころかニヤリと笑いながら「何言ってんだよ、ショウ。前に俺のことをヒーローだって言ってくれただろ?俺がこの特訓によって活躍できれば今度こそ本当にみんなのヒーローになれるかもしれないんだぞ!その特訓を間近で見られるんだから来た意味はあるだろ?」と言い切った。そう言われてショウは言い返す言葉が見つからず黙ってしまった。

「見てろよ、ショウ!俺はヒーローになるぞ!」
ヒイロはそう言って少し顔を赤らめながら特訓を開始した。
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