上 下
34 / 55

第4部 第3話

しおりを挟む
 ヒイロのクラスをチカラが覗いてみると、ヒイロは普段と特に変わらず席に着いて隣の席のヤハギ・チヒロと話をしていた。チカラがツバサの方を向いて「ほら、何も変わらないじゃないか!」と言うと、ツバサが「パッと見た感じはね。でもそれは学校にいるからだよ!」と反論してきた。

「えっ?」

「この学校って『光のぬし』から能力を授かった人たちが通っているから、他の人の能力と自分の能力を比べて対抗心や劣等感を抱いている人もいるじゃん。そういう人は能力で誰かが目立つと嫉妬からか、突っかかってくるかその人を無視したりするじゃん。そういう環境だからか、ヒイロも学校では調子に乗った言動はあまりしないんだよ。」

「それじゃヒイロが本当に調子に乗ってるか分からないじゃん!」

「でも、会話の端々にちょっと調子に乗った発言とかがあるから、とりあえず話しかけてみてよ!」

「分かったよ。」

ツバサに促されてチカラはヒイロに話しかけた。

「おはよう、ヒイロ。ヤハギさん。」

「おっ!久しぶりだな、チカラ。おはよう。」

「ウドウくん、退院したんだ!久しぶり!おはよう。」

「ごめんね。ヒイロとヤハギさんが話している途中に割って入って。」

「大丈夫だよ。大した話してないし。それよりも何か話したいことでもあったんじゃないの?」

「あぁ、うん…えーっと…。」

チカラは何も考えずにヒイロに話しかけてしまったので、適当な話題がすぐには思いつかなかった。そこでチカラは「(もういっそ聞いちゃおう。ツバサが言ってることが本当ならそれらしい反応するかもしれないし。)」と思い、「いや~、なんかヒイロが最近周りの人たちにチヤホヤされて調子に乗ってるって話を聞いたからホントかなぁって思って…。」と疑問に思っていたことをヒイロに単刀直入に聞いた。

「チカラ、それ誰に聞いた?」

チカラの質問を聞いたヒイロは真剣な表情で力に聞き返した。

「えっと、その…ツバサに。」

「そっか。それはウソだよ。俺は調子になんか乗ってないよ。」

ヒイロは微笑みながら答えた。

「そっか!それなら良かった!」

「別にチヤホヤされてなんかないし、正当な評価を受けているだけだから。」

「(ん?)」

チカラはヒイロの今の発言が少し引っ掛かった。

「大体、ツバサがおかしいんだよ!自分は読者モデルをしたりしてチヤホヤされているのに、俺の方が注目された途端に俺がおかしくなったとか言い出すしさ。きっと自分よりも人気のある俺に嫉妬してるんだよ!」

「(う~ん、これはツバサのヒイロがおかしくなったっていう発言もちょっと分からなくもないかも。)」

「チカラなら俺の気持ち分かってくれるよね?」

「うん、分かるけど…。」

「おいおい、誰が誰に嫉妬してるって言うんだよ?」

ヒイロの発言に我慢できず、異議を唱えるためにツバサが話に混ざってきた。

「何だ、ツバサいたんだ?誰が誰にって、ツバサが俺にだよ。一昨日、登校中に写真を撮られていた俺を見て、『すごいね!ヒイロは…。』って言ってたじゃん!」

「確かに言ったし、今でもその気持ちは変わらないけど、僕が『ヒイロはおかしい!』って言ってるのは嫉妬からじゃなくて、周りの人たちの態度が変わったのに合わせてヒイロの態度が実際に変わったからおかしいって言ってるんだよ!」

「いやいや、別に変わってないし、それに変わったって言っても、今話題になってる俺に興味を持ってる人たちに対しての態度だけだろ。」

「それは…そうかもしれないけど…。」

「ちょっと2人とも落ち着いて!」

ヒイロの反論に反論できずにいるツバサを援護するためにチカラは2人の間に割って入った。

「何だよ、チカラ?俺は落ち着いてるよ。」

「なら言わせてもらうけど、ヒイロ!確かに今の周りの人たちのヒイロに対する態度の変化は、ヒイロの功績に対して正当な評価だと思うし、ヒイロが喜ぶのもわかる!僕も嬉しいしさ!だけどね、ヒイロ。キミは僕たちへの態度だけは変わってないって言ってるけどそれは違う!以前のヒイロなら『ツバサが自分に嫉妬してる!』なんてツバサを蔑むようなことは言わなかったよ!」

「……。」

チカラの発言が的を射ていたのでヒイロは何も言い返せなかった。

「そうだね。ソラくん、それは良くないかも。」

今まで黙っていたチヒロもチカラの意見に賛同した。

「前の空を飛ぶことしか出来ないことを悩んでいたソラくんの方が良いとは思わないけど、以前のソラくんはツバサくんが載っている雑誌を買ってきたのを見せてくれたり、チカラくんが怪物退治したニュースの話を嬉しそうに話してくれたり、とても友だち想いだったよ。そこは前のソラくんに戻ってほしいな。」

チヒロがしゃべり終わると、ヒイロは申し訳なさそうに「…ツバサごめん。チカラやヤハギさんに言われてやっと分かったよ!俺が周りにチヤホヤされておかしくなってたことに。ホントにごめん!」と、ツバサに謝罪した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

ヲダツバサ
キャラ文芸
「これは、私達だけの秘密ね」 京都の料亭を継ぐ予定の兄を支えるため、召使いのように尽くしていた少女、こがね。 兄や家族にこき使われ、言いなりになって働く毎日だった。 しかし、青年の姿をした日本刀の付喪神「美雲丸」との出会いで全てが変わり始める。 女の子の姿をした招き猫の付喪神。 京都弁で喋る深鍋の付喪神。 神秘的な女性の姿をした提灯の付喪神。 彼らと、失くし物と持ち主を合わせるための店「失くし物屋」を通して、こがねは大切なものを見つける。 ●不安や恐怖で思っている事をハッキリ言えない女の子が成長していく物語です。 ●自分の持ち物にも付喪神が宿っているのかも…と想像しながら楽しんでください。 2024.03.12 完結しました。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

青い祈り

速水静香
キャラ文芸
 私は、真っ白な部屋で目覚めた。  自分が誰なのか、なぜここにいるのか、まるで何も思い出せない。  ただ、鏡に映る青い髪の少女――。  それが私だということだけは確かな事実だった。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜

玖羽 望月
恋愛
 親族に代々議員を輩出するような家に生まれ育った鷹柳実乃莉は、意に沿わぬお見合いをさせられる。  なんとか相手から断ってもらおうとイメージチェンジをし待ち合わせのレストランに向かった。  そこで案内された席にいたのは皆上龍だった。  が、それがすでに間違いの始まりだった。 鷹柳 実乃莉【たかやなぎ みのり】22才  何事も控えめにと育てられてきたお嬢様。 皆上 龍【みなかみ りょう】 33才 自分で一から始めた会社の社長。  作中に登場する職業や内容はまったくの想像です。実際とはかけ離れているかと思います。ご了承ください。 初出はエブリスタにて。 2023.4.24〜2023.8.9

ニンジャマスター・ダイヤ

竹井ゴールド
キャラ文芸
 沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。  大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。  沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。

処理中です...