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第2部 第8話
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「ほぉ、『オソイ』を倒したソラ・ヒイロ様は誰かに守ってもらわなければいけないほど弱かったのですか。これは僥倖ですね。」
ヒイロたち全員が声のした方を振り向いた。
そこには身長2メートルくらいの体が黒くて異様に細いピエロのような顔をした怪物とそれよりも大きい黒い球体がいた。ヒイロたちとはまだ十数メートル離れていたが、コウイチはその距離が安全性という点で全く意味を成さないと知っていたので、すぐに怪物を攻撃するようにリョウスケとユイに目で合図を送った。
リョウスケとユイはそれを理解して、ユイは人形を動かしてリョウスケを怪物から見えないようにした。コウイチは怪物の視線を自分に向けるために怪物に話しかけた。
「やっぱり来たな。まぁ、お前が来ることは分かっていたけどな。」
「私と『カタイ』の会話を盗み聞きして知ったくせに随分と偉そうですね。しかも戦うふりをしてヒデオ様を連れて逃げたくせに。」
「戦略的撤退だ!全然恥ずかしいことじゃない!そのおかげでこうしてお前を倒せるメンバーを集められたんだからな!」
「フッ、物は言いようですね。ところで気付いてないとでも思いましたか?」
「何のことだ?」
「誤魔化しても無駄ですよ。あなたの頼りになるメンバーさんの一人がこっそりと地面を凍らせていって、私たちを足元から凍らせようとしていることですよ!」
そう言うと「ハヤイ」という怪物はパッとその場から消えて、リョウスケの近くまでやって来た。コウイチが「リョウスケ、気をつけろ!」と言うよりも早くリョウスケに近づき、リョウスケを右足で蹴り飛ばそうとした。
しかし、その蹴りが当たる前にリョウスケは空気中の水分を凍らせて氷の壁を作り、「ハヤイ」の蹴りを防いだ。
「ほお、やりますね。じゃあ、これはどうです?『カタイ』!」
「ハヤイ」が呼ぶと、「カタイ」は「ハヤイ」程ではありませんが、ゴロゴロとかなりの速さで転がりながらリョウスケに向かってきた。
しかし、動きが一直線なのでリョウスケはまた氷の壁を作って「カタイ」の攻撃を防いだ。氷の壁にひびが入ったが、「ハヤイ」の攻撃の時より時間があったので、氷を厚くすることが出来て何とか防ぐことができた。
「甘い。甘い。その程度の攻撃が俺に通用するわけないだろ!なんだ、ヒデオに勝ったっていうからどれほどの強さかと思ったらこの程度か?」
リョウスケが挑発すると、「ハヤイ」は全く動じることなく「フッ。それはこちらのセリフですよ。わたしたちを倒すとか言ってた割にはこの程度ですか?少々がっかりです。『カタイ』、遊びは終わりにしてさっさと倒してしまいなさい。」と「カタイ」に指示を出した。
「カタイ」は丸い球体の状態をやめて、背中や腕や脚に外皮が付いた二足歩行のアルマジロみたいになった。そして自分とリョウスケの間にある氷の壁をパンチ一発で粉砕して、リョウスケに襲い掛かった。瞬く間のことでリョウスケは対応することが出来ず、固まってしまった。もう少しで「カタイ」のパンチがリョウスケの顔面に届きそうなところで「カタイ」の動きが止まった。
「ふぅ、僕がいることを忘れちゃだめですよ。」
チカラが能力で「カタイ」の動きを止めたのだった。
「チッ、そう言えば一番厄介な能力の方がいらっしゃったのを忘れていました。あなたから倒さなきゃいけないようですね!」
そう言って「ハヤイ」がチカラのところへ行こうとするよりも先に誰かが「ハヤイ」の顔面にパンチを食らわせた。
「チッ、誰ですか今のは?」
「ハヤイ」がパンチしてきた相手の方を向くとそこにいたのは、ユイが操作する人形のうちの1体だった。
「悪いのですが、今はあなたの相手をしている暇はありません!」
「ハヤイ」は人形を無視してチカラのところに行こうとしたが、またパンチを顔面に食らった。「ハヤイ」が体勢を立て直して周りを見てみると、すでにユイの操作する人形5体に取り囲まれていた。
「邪魔しないでいただけますか?」
「それは無理な相談だね。ヒデオさんに勝ったっていうあんたは私が倒す!」
ユイが操作する人形が「ハヤイ」を取り囲んでパンチやキックを繰り出したが、「ハヤイ」は何とかギリギリのところでよけていた。
「リョウスケさん大丈夫ですか?」
ユイが「ハヤイ」の相手をしている間に「カタイ」の動きを止めながら、チカラはリョウスケに無事か尋ねた。
「ああ、大丈夫だ。助かったぜ。」
「それじゃあ、早速で悪いんですが、この怪物を凍らせてくれませんか?動きを止めるの結構つらいんですよ。」
「ああ、分かった。」
そう言ってリョウスケが「カタイ」に触れて凍らせようと近づいたら、止まっていた「カタイ」のパンチがリョウスケに向かってきた。ドシーンッ!リョウスケはギリギリのところで「カタイ」のパンチをよけたので、「カタイ」の右手は地面にめり込んだ。
「な、な、何やってんだよ、チカラ!危ないだろ!」
リョウスケがチカラの方を振り向くと、「チカラ~!」と叫んで、額から血を流してよろけるチカラに近寄るヒイロが視界に入った。
「フッ、うまく行きましたね。」
なんと「ハヤイ」がユイが操作する人形の攻撃をよけつつ、地面に転がっている石を蹴り、チカラの額に命中させたのだった。
ただしユイはそれに動じることなく人形を動かし、パンチを2発「ハヤイ」に食らわせた。
「チッ、まあこのくらいはいいでしょう。これで当分あの方は能力を使えないでしょうから。それからあなた!どさくさに紛れればどうにかなると思いましたか?」
そう言って「ハヤイ」は、いつの間にか自分に近づいて来ていたヒカルに蹴りを食らわせようとした。
しかし、「ハヤイ」の蹴りは、ヒカルの顔に当たりそうで当たらなかった。
「チッ、もう少しだったのに。」
ヒカルはまた隙が出来るのを待つため、「ハヤイ」から距離をとった。
「『カタイ』、何をやっているんですか?さっさとそいつを倒してしまいなさい!」
「ハヤイ」に言われて、「カタイ」が今度は左手でリョウスケに向かってパンチを繰り出そうとした。リョウスケは恐怖からか、いつもの癖で氷の壁を作って「カタイ」の攻撃を防ごうとしたが、「カタイ」のパンチはその氷の壁を簡単に砕いてしまった。
ドシーンッとまた「カタイ」の手が地面にめり込む音がして、ユイとヒカルはリョウスケがやられてしまったと思った。
「ハハハ。よくやりました、『カタイ』。さあ、こっちに来て、この人形使いを何とかしてください。…いや、その前に一番厄介なサイコキネシスの能力を持っているあいつの息の根をきちんと止めてやりなさい!」
「ハヤイ」に言われて、チカラの方へ向かうため地面にめり込んだ左手を「カタイ」が持ち上げると、そこにはリョウスケの死体はおろか、リョウスケの体の一部すらなかった。
「カタイ」が状況を理解できずうろたえていると、「ハヤイ」が「どうしました?『カタイ』?」と「カタイ」が今直面している状況を把握しようと「カタイ」に尋ねた。
「なに!死体がないだって!いったいどこに消えたって言うんですか?」
「おーい、こっちだぞー!俺を忘れてんじゃねぇよ!」
「ハヤイ」や「カタイ」だけでなく、ユイやヒカルも声のする方を振り向いた。するとそこには、リョウスケを抱きかかえたヒイロがいた。
「おーい、お前『カタイ』とか言ったっけ?お前のノロい攻撃なんて絶対当たらねぇよ!悔しかったらかかって来いよ!」
何か考えがあるのか、ヒイロは「カタイ」を挑発し始めた。
言葉をしゃべれなくても理解は出来るみたいなので、「カタイ」はヒイロの挑発に乗って、また球体に戻りヒイロの方へ転がっていった。
「お前なんかに追いつかれるか!」
ヒイロはリョウスケを抱えたまま飛んで「カタイ」から逃げ始めた。
「チッ、そういうわけですか。まあ、あの2人の能力では『カタイ』には勝てない…グッ…。」
「ハヤイ」が「カタイ」の方ばかり見ていたので、ユイの操作する人形が今度は脇腹にパンチを一発食らわせた。
「あんたよそ見しすぎ。ていうか問題ないから。あんたなんかさっさと倒して私が『カタイ』ってやつも倒すから。」
「フッ、まあいいでしょう。だったら私はあなたたちを倒して、『カタイ』が追っている2人を倒しに行くとしますか。」
ユイの操作する人形の猛攻が続いたが、「ハヤイ」はギリギリのところで人形の攻撃をよけ続けた。
一方でヒイロとリョウスケの方はというと、「おい!何で怪物の注意をこちらに向けたりしたんだ?こっそりと近づいて俺が直接怪物を凍らせる方が良かっただろ!」とヒイロに抱えられたリョウスケがヒイロに向かって文句を言っていた。
するとヒイロは「でもそうするとチカラが怪物に襲われるかもしれなかったので。」と冷静に怪物の注意をヒイロたちに向けた理由を説明し始めた。
「コウイチが近くにいただろ!いざとなったらワープして逃げられただろ!」
「怪物を倒すためにはチカラの能力がどうしても必要なので、今いなくなられたら困るんですよ。今はイトイさんが相手をしているから大丈夫ですけど、『ハヤイ』とか言う怪物はすごいスピードで移動できるみたいなので動きを止められるチカラの能力が絶対必要なんですよ。」
「でもチカラは怪物にやられてケガをしたじゃないか?すぐに戦える状態なのか?」
「すぐには無理かもしれませんが、一応意識はあったので少し時間があれば戦えると思います。」
「そうか…なら怪物の注意をこっちに向けたことはいいとして、なんでさっさとあの転がって俺たちを追ってきている怪物を引き離さないんだ?おま…ヒイロはもっと早く飛べるんだろ?だったらさっさとスピードを上げてアイツを引き離すか、上に飛んであいつをまくかして、イトイたちのところへ戻って『ハヤイ』とか言う怪物を先に倒した方が良くないか?」
「いえ、それよりも僕に『カタイ』と言う怪物を倒すいい作戦があるので聞いてもらえますか?」
「どんな作戦だ?一応聞くだけ聞いてやる。」
ヒイロはリョウスケに自分の考えた「カタイ」を倒すための作戦を説明した。
それを聞いたリョウスケは「作戦と呼べるほどのものじゃないけど、一応やってみるか。」とヒイロの作戦を了承した。
「ありがとうございます!」
「ただし、失敗したらさっさとあの怪物を引き離してイトイたちのところへ行くからな!」
「わかりました!」
「あと…さっきは助かったよ。」
リョウスケは恥ずかしいのか視線をそらして「カタイ」の攻撃から守ってくれたことのお礼をヒイロに言った。
「いえいえ、僕にはこんなことしか出来ないので。じゃあ作戦通りお願いしますね。」
「ああ、任せろ。」
ヒイロたち全員が声のした方を振り向いた。
そこには身長2メートルくらいの体が黒くて異様に細いピエロのような顔をした怪物とそれよりも大きい黒い球体がいた。ヒイロたちとはまだ十数メートル離れていたが、コウイチはその距離が安全性という点で全く意味を成さないと知っていたので、すぐに怪物を攻撃するようにリョウスケとユイに目で合図を送った。
リョウスケとユイはそれを理解して、ユイは人形を動かしてリョウスケを怪物から見えないようにした。コウイチは怪物の視線を自分に向けるために怪物に話しかけた。
「やっぱり来たな。まぁ、お前が来ることは分かっていたけどな。」
「私と『カタイ』の会話を盗み聞きして知ったくせに随分と偉そうですね。しかも戦うふりをしてヒデオ様を連れて逃げたくせに。」
「戦略的撤退だ!全然恥ずかしいことじゃない!そのおかげでこうしてお前を倒せるメンバーを集められたんだからな!」
「フッ、物は言いようですね。ところで気付いてないとでも思いましたか?」
「何のことだ?」
「誤魔化しても無駄ですよ。あなたの頼りになるメンバーさんの一人がこっそりと地面を凍らせていって、私たちを足元から凍らせようとしていることですよ!」
そう言うと「ハヤイ」という怪物はパッとその場から消えて、リョウスケの近くまでやって来た。コウイチが「リョウスケ、気をつけろ!」と言うよりも早くリョウスケに近づき、リョウスケを右足で蹴り飛ばそうとした。
しかし、その蹴りが当たる前にリョウスケは空気中の水分を凍らせて氷の壁を作り、「ハヤイ」の蹴りを防いだ。
「ほお、やりますね。じゃあ、これはどうです?『カタイ』!」
「ハヤイ」が呼ぶと、「カタイ」は「ハヤイ」程ではありませんが、ゴロゴロとかなりの速さで転がりながらリョウスケに向かってきた。
しかし、動きが一直線なのでリョウスケはまた氷の壁を作って「カタイ」の攻撃を防いだ。氷の壁にひびが入ったが、「ハヤイ」の攻撃の時より時間があったので、氷を厚くすることが出来て何とか防ぐことができた。
「甘い。甘い。その程度の攻撃が俺に通用するわけないだろ!なんだ、ヒデオに勝ったっていうからどれほどの強さかと思ったらこの程度か?」
リョウスケが挑発すると、「ハヤイ」は全く動じることなく「フッ。それはこちらのセリフですよ。わたしたちを倒すとか言ってた割にはこの程度ですか?少々がっかりです。『カタイ』、遊びは終わりにしてさっさと倒してしまいなさい。」と「カタイ」に指示を出した。
「カタイ」は丸い球体の状態をやめて、背中や腕や脚に外皮が付いた二足歩行のアルマジロみたいになった。そして自分とリョウスケの間にある氷の壁をパンチ一発で粉砕して、リョウスケに襲い掛かった。瞬く間のことでリョウスケは対応することが出来ず、固まってしまった。もう少しで「カタイ」のパンチがリョウスケの顔面に届きそうなところで「カタイ」の動きが止まった。
「ふぅ、僕がいることを忘れちゃだめですよ。」
チカラが能力で「カタイ」の動きを止めたのだった。
「チッ、そう言えば一番厄介な能力の方がいらっしゃったのを忘れていました。あなたから倒さなきゃいけないようですね!」
そう言って「ハヤイ」がチカラのところへ行こうとするよりも先に誰かが「ハヤイ」の顔面にパンチを食らわせた。
「チッ、誰ですか今のは?」
「ハヤイ」がパンチしてきた相手の方を向くとそこにいたのは、ユイが操作する人形のうちの1体だった。
「悪いのですが、今はあなたの相手をしている暇はありません!」
「ハヤイ」は人形を無視してチカラのところに行こうとしたが、またパンチを顔面に食らった。「ハヤイ」が体勢を立て直して周りを見てみると、すでにユイの操作する人形5体に取り囲まれていた。
「邪魔しないでいただけますか?」
「それは無理な相談だね。ヒデオさんに勝ったっていうあんたは私が倒す!」
ユイが操作する人形が「ハヤイ」を取り囲んでパンチやキックを繰り出したが、「ハヤイ」は何とかギリギリのところでよけていた。
「リョウスケさん大丈夫ですか?」
ユイが「ハヤイ」の相手をしている間に「カタイ」の動きを止めながら、チカラはリョウスケに無事か尋ねた。
「ああ、大丈夫だ。助かったぜ。」
「それじゃあ、早速で悪いんですが、この怪物を凍らせてくれませんか?動きを止めるの結構つらいんですよ。」
「ああ、分かった。」
そう言ってリョウスケが「カタイ」に触れて凍らせようと近づいたら、止まっていた「カタイ」のパンチがリョウスケに向かってきた。ドシーンッ!リョウスケはギリギリのところで「カタイ」のパンチをよけたので、「カタイ」の右手は地面にめり込んだ。
「な、な、何やってんだよ、チカラ!危ないだろ!」
リョウスケがチカラの方を振り向くと、「チカラ~!」と叫んで、額から血を流してよろけるチカラに近寄るヒイロが視界に入った。
「フッ、うまく行きましたね。」
なんと「ハヤイ」がユイが操作する人形の攻撃をよけつつ、地面に転がっている石を蹴り、チカラの額に命中させたのだった。
ただしユイはそれに動じることなく人形を動かし、パンチを2発「ハヤイ」に食らわせた。
「チッ、まあこのくらいはいいでしょう。これで当分あの方は能力を使えないでしょうから。それからあなた!どさくさに紛れればどうにかなると思いましたか?」
そう言って「ハヤイ」は、いつの間にか自分に近づいて来ていたヒカルに蹴りを食らわせようとした。
しかし、「ハヤイ」の蹴りは、ヒカルの顔に当たりそうで当たらなかった。
「チッ、もう少しだったのに。」
ヒカルはまた隙が出来るのを待つため、「ハヤイ」から距離をとった。
「『カタイ』、何をやっているんですか?さっさとそいつを倒してしまいなさい!」
「ハヤイ」に言われて、「カタイ」が今度は左手でリョウスケに向かってパンチを繰り出そうとした。リョウスケは恐怖からか、いつもの癖で氷の壁を作って「カタイ」の攻撃を防ごうとしたが、「カタイ」のパンチはその氷の壁を簡単に砕いてしまった。
ドシーンッとまた「カタイ」の手が地面にめり込む音がして、ユイとヒカルはリョウスケがやられてしまったと思った。
「ハハハ。よくやりました、『カタイ』。さあ、こっちに来て、この人形使いを何とかしてください。…いや、その前に一番厄介なサイコキネシスの能力を持っているあいつの息の根をきちんと止めてやりなさい!」
「ハヤイ」に言われて、チカラの方へ向かうため地面にめり込んだ左手を「カタイ」が持ち上げると、そこにはリョウスケの死体はおろか、リョウスケの体の一部すらなかった。
「カタイ」が状況を理解できずうろたえていると、「ハヤイ」が「どうしました?『カタイ』?」と「カタイ」が今直面している状況を把握しようと「カタイ」に尋ねた。
「なに!死体がないだって!いったいどこに消えたって言うんですか?」
「おーい、こっちだぞー!俺を忘れてんじゃねぇよ!」
「ハヤイ」や「カタイ」だけでなく、ユイやヒカルも声のする方を振り向いた。するとそこには、リョウスケを抱きかかえたヒイロがいた。
「おーい、お前『カタイ』とか言ったっけ?お前のノロい攻撃なんて絶対当たらねぇよ!悔しかったらかかって来いよ!」
何か考えがあるのか、ヒイロは「カタイ」を挑発し始めた。
言葉をしゃべれなくても理解は出来るみたいなので、「カタイ」はヒイロの挑発に乗って、また球体に戻りヒイロの方へ転がっていった。
「お前なんかに追いつかれるか!」
ヒイロはリョウスケを抱えたまま飛んで「カタイ」から逃げ始めた。
「チッ、そういうわけですか。まあ、あの2人の能力では『カタイ』には勝てない…グッ…。」
「ハヤイ」が「カタイ」の方ばかり見ていたので、ユイの操作する人形が今度は脇腹にパンチを一発食らわせた。
「あんたよそ見しすぎ。ていうか問題ないから。あんたなんかさっさと倒して私が『カタイ』ってやつも倒すから。」
「フッ、まあいいでしょう。だったら私はあなたたちを倒して、『カタイ』が追っている2人を倒しに行くとしますか。」
ユイの操作する人形の猛攻が続いたが、「ハヤイ」はギリギリのところで人形の攻撃をよけ続けた。
一方でヒイロとリョウスケの方はというと、「おい!何で怪物の注意をこちらに向けたりしたんだ?こっそりと近づいて俺が直接怪物を凍らせる方が良かっただろ!」とヒイロに抱えられたリョウスケがヒイロに向かって文句を言っていた。
するとヒイロは「でもそうするとチカラが怪物に襲われるかもしれなかったので。」と冷静に怪物の注意をヒイロたちに向けた理由を説明し始めた。
「コウイチが近くにいただろ!いざとなったらワープして逃げられただろ!」
「怪物を倒すためにはチカラの能力がどうしても必要なので、今いなくなられたら困るんですよ。今はイトイさんが相手をしているから大丈夫ですけど、『ハヤイ』とか言う怪物はすごいスピードで移動できるみたいなので動きを止められるチカラの能力が絶対必要なんですよ。」
「でもチカラは怪物にやられてケガをしたじゃないか?すぐに戦える状態なのか?」
「すぐには無理かもしれませんが、一応意識はあったので少し時間があれば戦えると思います。」
「そうか…なら怪物の注意をこっちに向けたことはいいとして、なんでさっさとあの転がって俺たちを追ってきている怪物を引き離さないんだ?おま…ヒイロはもっと早く飛べるんだろ?だったらさっさとスピードを上げてアイツを引き離すか、上に飛んであいつをまくかして、イトイたちのところへ戻って『ハヤイ』とか言う怪物を先に倒した方が良くないか?」
「いえ、それよりも僕に『カタイ』と言う怪物を倒すいい作戦があるので聞いてもらえますか?」
「どんな作戦だ?一応聞くだけ聞いてやる。」
ヒイロはリョウスケに自分の考えた「カタイ」を倒すための作戦を説明した。
それを聞いたリョウスケは「作戦と呼べるほどのものじゃないけど、一応やってみるか。」とヒイロの作戦を了承した。
「ありがとうございます!」
「ただし、失敗したらさっさとあの怪物を引き離してイトイたちのところへ行くからな!」
「わかりました!」
「あと…さっきは助かったよ。」
リョウスケは恥ずかしいのか視線をそらして「カタイ」の攻撃から守ってくれたことのお礼をヒイロに言った。
「いえいえ、僕にはこんなことしか出来ないので。じゃあ作戦通りお願いしますね。」
「ああ、任せろ。」
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