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第25話

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 カジワラとハタケが昇降口に向かうため廊下を曲がって行ったのを何も考えずに見送って数分後、俺はこのままボーっとしていても仕方ないことに気付き、これからどうするかを考え始めた。

う~ん?まだ5時前だから、ナツキが所属している女子バレー部だけじゃなくて、ほとんどの部活が終わってないし、今ナツキのところに行ってもしょうがないよな。だからといってこのまま教室に戻って時間をつぶすのもなぁ……。そうだ!せっかくなら図書室で時間つぶすか!カジワラを楽しませることを考えたら、カジワラの好きな推理小説を読んで、もっと話ができた方がいいもんな!

俺はそう考え、図書室へ向かった。

そして図書室のドアの前まで来て、ドアを開けて中に入ろうとした時、俺はナツキが昨日言った「ハナザワさんにはもう会わないで。」という言葉を思い出した。

うわぁ、どうしよう?図書室なら時間をつぶせていいと思ったんだけど、ハナザワさんと会う可能性があるんだよな。もし今図書室に入ってハナザワさんと会ってしまい、そのことがナツキの耳に入ったら、偽の本命の彼女になってくれる約束を反故にされてしまうかもしれない!それはまずい!図書室に入るのはやめておこう!

俺は図書室には入らず、自分のクラスの教室に戻った。そこでスマホで漫画を読んだり、明日の英語の授業で当てられそうだったので、教科書の本文を訳したりしていた。1時間ぐらい教室で時間をつぶしていたら、見回りに来た先生に早く帰宅するように促された。教室の時計を見ると6時を過ぎていた。

女子バレー部もそろそろ終わってナツキも帰るかもしれないな。

俺はバレー部が練習している体育館に向かった。体育館に着くと、まだシューズの靴底が体育館の床と擦れる音やボールを手で打つ音、そのボールをレシーブする音、掛け声などが聞こえてきた。女子バレー部(と男子バレー部)はまだ終わっていなかったみたいだ。

俺は体育館の横にある出入口が開いていたのでそこから中の様子を覗き込んだ。すると今まさにトスで上げられたボールをナツキが打つところだった。ナツキが打ったボールを相手チームは返球することができなかった。

こうしてナツキがバレーをしているところをじかに見るのは久しぶりな気がした。中学3年の時には県大会の決勝まで行ったくらいだから上手なのは分かっていたが、今練習している中には3年の先輩がいるはずなのに、この中ではナツキが頭一つ抜きん出ているように見えた。

俺が出入口からナツキが練習している様子を見ていると、俺が見ていることに気付いた女子バレー部の部員と目が合った。するとその女子は俺の方へやってきて、「誰かに用事ですか?」と尋ねてきた。それに対して俺は、「用事というか、ヒナタナツキを待っているだけだけど。」と答えた。

すると、その女子は明らかに機嫌を悪くした表情をして、「ナツキ先輩を待っている?ふーん。そうですか。帰ってください!ナツキ先輩は忙しいんです!」と言ってドアを閉めてしまった。

俺が訳が分からずポカーンとしていると、「何でドア閉めちゃうの?暑いでしょ!」という聞きなじみのある声が聞こえてきて、ドアがまた開いた。

そして今度はドアを開けたナツキと目が合った。

「セイ、どうしたの?」

「え?この人、ナツキ先輩の知り合いなんですか?」

さっきドアを閉めた女子がひどく驚いていた。

「そうだよ。私の幼馴染。ところでミナ、何でドアを閉めたの?」

「え?いや、その、いつもみたいにナツキ先輩に付きまとう変な輩だと思ったので、ドアを閉めました……。」

「そっか。まあ疑われても仕方ないか。セイ、見るからに怪しいもんね。」

「おい!どういう意味だよ?」

「アハハハ!ごめんごめん。冗談だよ。ところでセイは私に何か用?」

「あ!えーと、その、たまには一緒に帰ろうと思ってさ。」

「え?」

俺が、「一緒に帰ろう。」と言うと、ナツキは数秒間何も言わずに固まった。

俺が、「どうかしたか?」と尋ねると、ナツキはハッとした顔をすると右手を口に当てて、「そうだよね。私たち……んだから、一緒に帰ってもおかしくないよね。」と何かをごにょごにょと言っていたが、良くは聞き取れなかった。

「もう少しで部活終わるから、ちょっと待ってて!」

「分かった。また変な疑いがかけられないように離れた場所にいるから。」

「了解!」

「ヒナター、何やってんの?早く戻りなさい!」

顧問の先生に呼ばれたナツキは「はい!今戻ります!」と言って、練習に戻って行った。

俺は体育館から少し離れた場所でナツキを待つことにした。
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