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25.日曜日が唯一の楽しみ ~日曜日よりの使者~

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25.日曜日が唯一の楽しみ ~日曜日よりの使者~
 日曜日だ。ねこきちくんの将棋教室は、日曜日が受講日だが、基本的に1週目と3週目しかないので、残念ながら、今日はない。日曜日、週二回。私はなかなか付き添えないが、楽しみの一つだ。
 休職前から、日曜日はもちろん好きだが、今はもっと好きだ。家族が揃うので楽しみだ。平日は妻は仕事、子供は学校と習い事に追われる。私は一人、ベッドの中。このままどこ
か遠く連れっていってくれないか……とは思わない。
ねこきちくんは、将棋連盟の将棋教室に、1月に入会して、1月は全勝、2月も全勝、しかし、3月に入り足踏みしている。1週目は、2勝1敗で、2週目は、2勝2敗。
 4月の第1週も2勝2敗だった。
 ねこきちくんは、近所のご老人や子供が集まる地域の将棋サロンに向かった。日曜日の2週目だけ開かれている。子供は無料で将棋が指せる。ちょっと無理をして付き添った。おじいさんと子供が半々だった。
 ねこきちくんは、別の小学校から来た5年生の5人組と対戦した。ほとんど、圧勝した。将棋は年齢に関係なく勝ち負けがはっきりするところがいい。2年生なったばかりのねこきちくんが5年生たちに勝ち続ける。最後に5人組の一人が「こいつはうちの学校で最強なんだぜ」と言った相手と指す。ねこきちくんはまたも勝つ。
 一方、奥では、子供と指さずに、大人としか指さない子供もいる。かなり手ごわそうだ。あとで聞いた話だが、将棋のプロの養成機関「奨励会」を今年受けるそうだ。アマチュアで四段くらいの棋力がないと受からない世界である。
その日は、ねこきちくんは気分のいいまま、将棋サロンを去った。
 私は帰宅して休んだ後、読みかけの『〈銀の匙〉の国語授業』(橋本武)を手に取った。名門の灘中学では、中学3年かけて、中勘助の『銀の匙』を横道に入りながら、ゆっくり読み進める授業があるらしい。「勉強は入試のためにあるのではない」東大合格者1位になったことのある灘の先生の言葉。学ぶための力の背骨である国語の基礎力を涵養するために実践してきた。その根源は「書くこと」だと説く。
 今は、「書くこと」は困難だが、首がましになったら、やはり読んで書くことを続けていきたい。

※副題は「THE HIGH-LOWS」の「日曜日よりの使者」
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