首が勝手に右へ右へ回る奇病!~プロ棋士を目指す長男と中学受験の長女を抱えながらのジストニア闘病記~

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感謝 ~君と生きる東京~

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 家路へ向かう車が、
 東京のど真ん中を突き抜ける。

 246号線から青山方面に進む。
 九州の田舎街から、
 上京してもう二十年。

 妻は生まれたときから東京なので、
 車窓から見える風景の感じ方が違うかもしれない。
 
 車が帰路に着き、
 一息つく。

「おかえりなさい」
 上京中の母と子供たちが出迎えてくる。

「ついでに職場に寄って、荷物の整理なんかしてきた」

 妻が両手いっぱいに荷物を抱えている。

 ソファに腰を下ろす。
 一瞬にして、疲れを感じる。

 外に出ていたので、
 かなり気を張っていた。

 痛みも我慢していた。
 首のコルセットを取る。
 首がどんどん右に回っていくので、
 今ではコルセットで首を固定している。

 母に今日の経緯や状況を報告した。
 少し安心してくれたようだ。

 自分の荷物を片づけて、
 いただいた手紙や品物を丁寧に確認する。

 気になっていた二人からのメッセージもあった。

 何度か足を運んでくれた人もいたようで申し訳ないと思った。
 
 メッセージは、封書もあれば、メモ書き、Eメールなど、
 媒体は違えど、一つ一つ言葉が心に沁みる。
 大変なこともあるけれど、この仕事をしていてよかった。
 
 早く復帰したいそう思った。

 中には、私と出会って「人生が変わった」と
 大げさなことを書いてくれる人もいた。
 それはそれで嬉しいし、逆に病気の私の方が励まされる。

 いただいた品物の中には、生菓子もあったので、
 本当に行けるときに行っておいてよかった。

 二週間後から、本格的な治療を始められる。
 それまで、「身体が持つかな?」と不安もある。

 そんなことを考えていると、娘が塾の時間になった。
 受験は本当に大変なのだ。週に三回、三時間。
 さらに宿題も盛りだくさん。
 しかも、彼女は一年遅れでのスタートだった。

 娘も頑張っている、みんなも応援してくれている。
 私も「感謝の気持ち」を忘れずに頑張らねばならない。
 
 さらに試練の二週間が始まろうとしていたが、
 それはほんの序章に過ぎないことにその時は知る由もなかった……。


※副題は、「福山雅治さん」の「東京」の歌詞の一部です。
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