犬の駅長

cassisband

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第1章

18.

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 翌朝は講義のない曜日だった。早くに目が覚めたが、二度寝をし、次に起きたのは昼過ぎだった。
 母親はどこかに出かけたようでいなかった。冷蔵庫を開けると、ラップにかけられたサンドイッチが目につくところに置いてあった。母親が作る朝食は、決まってサンドイッチだ。サンドイッチを取り出して、テーブルに置く。コーヒーメーカーもテーブルにはセットされていたが、面倒に思って、また冷蔵庫を漁った。コーラでも入っていればよかったのだが、ジュース類が何も見当たらないので、母親が自分のために買ってきたであろう低脂肪牛乳を出してきて、グラスになみなみと注ぐ。長く寝ていたせいか、喉はからからだった。牛乳の独特な臭いも気にならないくらい、ぐいぐいと飲み干していく。グラスが空になると、また注いで、今度はサンドイッチのラップをはずし、食べはじめる。
 いつになくぼんやりとしていた。昨日の息苦しさは多少薄まったようだったが、考え出すと、またいろいろな思いに捕われそうだった。
 今日は何をしようか、考えても何も浮かばない。大学に行かない日は、女子大と合同のテニスサークルの練習に顔を出したり、何も予定がなければ、単発のバイトで小遣いを稼いで過ごすことが多いが、どこにも行く気分ではない。部屋で大学の勉強でもすればいいのかもしれないが、そういった習慣もないので、さらさらそんな気にもならない。
 もともと勤勉なタイプではなかったが、二年生になってからは、ますますその傾向が強くなった。とはいえ、三年生になったら、厳しい就職活動に専念するつもりなので、今年履修可能な科目はできるだけ落としたくない。最低限の労力でうまく単位を取れればいいと思う。一年生で思いの外、あっさり単位が取れていたので、怠惰な姿勢は学年が上がって助長されたかもしれない。
もうすぐ、就職活動も本腰を入れて始めなければならない。将来の目標を見い出せずに悶々としている。むしろ最近は苛立ちに近かった。
 結局今日一日ぼんやり過ごした。何もせず、何も考えず。テレビにはお笑い芸人が映っていた。サラリーマンの扮装をして何かをしゃべっている。千鳥足で真っ赤なメイクをしていたので、酔っぱらいのコントであることだけはわかった。
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