セカンドコンタクト

アカネラヤ

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セカンドコンタクト7

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 ヤバい。
 気付けば風呂場で太栄さんを抱き潰してしまっていた。
 
 ──まあ。
 
 
『俺、佑哉のチンコ挿れて欲しい!…チンコやったら、その……奥まで届くやろ…ッ?』


 可愛すぎる太栄さんも悪いんですけど。
 あのセリフで全部ブッ飛んだもんなぁ……。
 ホントはもっと、優しくしたかったのに。
 今ここにいるのは。
 グッタリしてる太栄さんで。

 ヤりすぎちゃったな。
 すいません太栄さん。
 意識のない太栄さんを着せ替えて。
「よいしょ……ッと」
 両腕で抱き上げ階段を上がり部屋に戻る。
 
 ──あ。
 あとで設定パネルの電源消さなきゃだ。
 

 ベッドベッド……、あ、あった。
 ベッドの上に太栄さんをそっと寝かせる。
「んン…ぅ……佑、哉ぁ……」
 ふふ。可愛いなぁもう。
 寝ている太栄さんの頬にキスをして、俺は台所に向かう。

 設定パネルの電源を消して階段を上がり、太栄さんの部屋に戻ると。

「ゆ、佑哉ぁ!?」
 起きていた太栄さんが扉前まで来ていて。
「よかった、いたアァァ!!」
 俺思いっきり抱きついてきた。
「あ、太栄さん起きたんですね」
「お前……!俺が寝てる間に勝手に東京に帰ってしもたんかと……ッッ!」
「そんな事しないですよ、安心してください」
「ほんまに……?」
 上目遣い。
 哀しそうな顔をする太栄さんは、本当に可愛い。
「ほんまですよ」
「なんやその変な関西弁」
「まあまあ、まだ寝ててくださいよ」
 そう言って太栄さんをベッドに押し戻す。

 なによりも。
 いつもの明るい太栄さんに戻ってくれて、本当に良かったと思う。

 
「すまんな、俺。その……気ぃ失ってもて。コレ佑哉が着せてくれたんやろ?」
 布団の中に入りながら申し訳なさそうな顔をする。
 まあ。
 気絶させたのは俺のせいですし。
「いっつもほんまにありがとな。佑哉の気遣い、俺ほんま好きやで」
 ふいに「好き」言われて、なんだかドキッとする。
 もちろん本人にそんな気は微塵もないことは百も承知だ。
「あっ…!好きや言うてもそっちの好きやないからな!?……いや、俺ら両想いやから合ってんのか?」
「ふふ、そんなことで真剣に悩まないでください」
 ぐぬぬと腑に落ちない顔をしている太栄さんも可愛い。
「あれから体調はどうですか?……その、また生えてきたりとかしてません?」
「今んとこなんもなしやで」
 そっか。

 ──そっか……。

 なら……。

「じゃあ、俺の出番はここでおしまいですね」
「え……っ?────ぁ…っ」
 
 太栄さんも気付いてしまった。
 そう。
 俺がここまで来た本来の目的。
 わざわざ新幹線を使って深夜に関西まで飛んできた理由。
 それは、太栄さんに耳と尻尾が生えて困っていたからで。
 今はそれがなく、現在も進行していないとなれば。

 今の俺にする事は何もない。
「佑哉、帰ってまうんか……?」
 あ……寂しそう。
「そうですね。俺の役目は終わりましたから、今俺がここに居てもなんの役にも立たない訳ですし」
「役に立たへんとか……」
 とりあえず乗換アプリで新幹線の時刻表を確認することにする。
 ──が。

 やっべ、最終間に合わねぇかも。
 でも……。
 
「佑哉明日休みやんな?その、せっかくやし俺んち泊まっ──」
「いえ!俺その辺のホテル泊まりますんで!」
「なんでぇな!?」
 そんなの当たり前だ。
 今の俺ならまたヤりかねないからですよ。
 太栄さんは確か明日は仕事だったはず。なら余計に泊まるわけにはいかないッ!
「じゃ、俺ホテル探さないとなんで。そろそろ行きますね」
 無になれ、俺。
「なんで??ウチ泊まってったらええやんけ!?」
 アンタの身に危険が降りかかるっつってるんですよこっちは。
「佑哉、俺のこと嫌いになってもぅたんか……?」
「ぐ」
 耐えろ、俺。
「そ、そんなことある訳ないでしょ…」
 好きだから大事にしたいんだよアンタを。
 もう獣みたいなセックスはしたくねえんだこっちは。
 頼む、空気読んでくれ太栄さん。

「ならなんで泊まれへんのや……」
 今度は拗ね始めた。
 負けるな、俺。
 とりあえずベッドから離れよう。
 まずはそこからだ。

 離れなきゃ。
 離れなきゃなのに。
 太栄さんの手がそれを拒否する。
 
「太栄さん……」

「堪忍や。行かんといて佑哉……」
 袖を掴まないでください。

 俺の意志を。
 尊重させてください。
 これ以上、アンタを傷付けさせないでください。

「お前、俺んこと……好きなんちゃうん?好きやったら、一緒にいたなるんとちゃうんか……?」
 顔が、見れない。
 きっと悲しい顔をしている。
「逆ですよ」
「え?」
 もう、言ってしまえ。
「好きだからこそ、壊したくないから。今は離れたいんです」
 分かってください、太栄さん。
「なんやのそれ……」
「……すみません……──って、痛てぇァッ!?」
 突然、袖から手を掴まれて、思いっきりツネられた。
 いきなりの出来事に、つい振り返ってしまう。
「何すんですか!?」
 そこには。涙目で半怒り気味の太栄さんの顔があって。
「まぁたお前俺の気持ちも知らんと無視しよったなアホンダラが。せやから言うとったやろ、お前一人で解決すんなて。俺の気持ち聞いてから判断せいやクソが」
「太栄さん……」
「お前が心配しとるのは百も承知や。どうせ俺の身体が~~とか明日の仕事が~~とかで遠慮しとんのやろ?それが余計やっちゅうねん。好きなんやから一緒に居たいんのどこがあかんねん?」
「いやだから……」
「あああもうッ!だから~~……ッッ!!」
 ん?
 急に重力を感じ、俺は太栄さんに引き寄せられた。
「ぉわ…ッ!?」
 というか。
 強引に、引っ張られて。
 そこには真っ赤な顔の太栄さんがいて。
「あの……──ッ!?」
 状況把握するよりも先に、またもや強引に唇を奪われた。
 まさか太栄さんからキスされるなんて思わなかったから余計に混乱して。
 目が丸くなる。
 しかも長めで濃厚なキス。
「……はぁ…ぁ……ッ──こんくらいの覚悟は、こっちは出来とんねん!言わすなや恥ずいねんぞ!」
 真っ赤な太栄さんの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいて、その表情が彼の覚悟を物語っていた。
「太栄さん……」 
 また俺は一人で先走って、彼の気持ちを無視してた。
 自分では分かってたつもりになって、置いてけぼりにして。
 結局太栄さんを悲しませてただけだった。
 
「すみません、俺。また一人で突っ走ってしまって」
「分かればええねん。けど、それがお前のイイトコでもあんねやからな。そこははき違えたらあかんで?そんだけお前は周囲を気遣える人間っちゅうこっちゃからな?」
 褒められるとは思わなかった。
「せやから俺はお前が好きになったんやで?佑哉」
 聖母のように微笑む太栄さん。
 やばい。可愛い。
 抱きしめたい。
 キスしたい。
 襲いたい……。
「なあ、佑哉」
 名前を呼ばれてビクッとする。
「抱きしめて、ええねんぞ?今更遠慮すんなや」
 その言葉が心に染みる。
 俺は。
 ゆっくりと太栄さんを抱きしめた。
「ん。それでええんや」
 よしよしと背中をさすられる。
「太栄さん……俺……」
「なんや?」
「キス、してもいいですか?」
「もちろんええよ?……おいで、佑哉」
 
 穏やかな口調で誘われて。
 俺は、誘われるままに。

 たおやかに微笑む太栄さんに、唇を重ねた。
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