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二章
第八話
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「セリーナさんの買い物って何を頼まれたんですか?」
今更だけど、買い物を頼まれたってことで出掛けてるのに、何を頼まれたのか聞いてないことに気が付いた。
どうやら、外出することに思っていた以上に浮かれてたみたい。
「今日は本ねー。お嬢様が贔屓にしてる作家の新作が出たとかで」
「あー、あれか。お嬢様お気に入りのロマンス小説ってやつか」
前世ではゲーマーであり、ラノベも大好きだったと語るセリーナさん。
今世でもその趣味は継続中のようだ。
「そ。あまり貴族向けのものではないけど、お嬢様が楽しめるんならそれで良いのよ」
この世界の貴族が一般的に読む本は、難しい哲学書とか伝記とかが多いらしい。
セリーナさんくらいの年代のご令嬢だと、詩集とか……。
うーん、確かにそういった物を読むセリーナさんは想像出来ないかも。もちろん、私も無理だ。
本日ご所望のロマンス小説は、もっぱら庶民向けで貴族が読むことは滅多にないらしい。
セリーナさんは、そんなことお構いなしに自ら足を運んで買い漁っているらしいが、今日はどうしても予定が合わなかったとのことでマリーさんに頼んだそうだ。
「セリーナさん忙しいですもんね」
「まぁ、未来の王太子妃だもんなー。
あの王太子にはもったいないけど」
よっぽど王太子様が嫌いらしく、またまた毒づくジャックさんに、私とマリーさんは苦笑いするしかない。
そんなやり取りをしてる間に、お目当ての本屋に到着。
お目当ての本は人気作らしく、店内の一番目立つ場所に陳列されていたので、探すことなく買うことが出来た。
頼まれた本はあっさり買うことが出来て、ここまでは順調だった。
そう、ここまでは……。
「もう、勘弁してください……」
疲れ切って助けを求めるが、それに応じてくれる人はいない。
ジャックさんに助けてもらおうと姿を探すも、身の危険を感じたのだろうか。
早々に退散しており、見渡す範囲にその姿はない。
一体何のための護衛なのよっ!!
そんな八つ当たり気味の怒りを押し殺しつつ、この事態の元凶に目を向ける。
「なーに言ってるの!まだまだよ!
ほら、これも着てみて?」
そこにいるのは、可愛らしい服を手に持ったままニコニコとしているマリーさん。
その背後、そして私の周りには数え切れないほどの服と、満面の営業スマイルを浮かべた店員の皆さん。
よくよく見てみると、いつの間にか完全に包囲されていて逃げ場がなくなっている。
「私なんかの服をそんな頑張って選ばなくても……」
何とか慈悲を求めようと、マリーさんに懇願する。が、当然それは無視される。
もう1時間以上はずっと取っかえ引っ変え試着させられているので、どの服を試着してどれをしてないのかすらわからなくなって来た。
「ミリはせっかく魅力的な女の子なんだから!
もっと魅力を引き出してくれる服を着なきゃ!」
いや、私にそんな魅力なんてありません……。
私の心の叫びは誰にも届くことはなく、マリーさんが満足するまで服選びは続いた。
今更だけど、買い物を頼まれたってことで出掛けてるのに、何を頼まれたのか聞いてないことに気が付いた。
どうやら、外出することに思っていた以上に浮かれてたみたい。
「今日は本ねー。お嬢様が贔屓にしてる作家の新作が出たとかで」
「あー、あれか。お嬢様お気に入りのロマンス小説ってやつか」
前世ではゲーマーであり、ラノベも大好きだったと語るセリーナさん。
今世でもその趣味は継続中のようだ。
「そ。あまり貴族向けのものではないけど、お嬢様が楽しめるんならそれで良いのよ」
この世界の貴族が一般的に読む本は、難しい哲学書とか伝記とかが多いらしい。
セリーナさんくらいの年代のご令嬢だと、詩集とか……。
うーん、確かにそういった物を読むセリーナさんは想像出来ないかも。もちろん、私も無理だ。
本日ご所望のロマンス小説は、もっぱら庶民向けで貴族が読むことは滅多にないらしい。
セリーナさんは、そんなことお構いなしに自ら足を運んで買い漁っているらしいが、今日はどうしても予定が合わなかったとのことでマリーさんに頼んだそうだ。
「セリーナさん忙しいですもんね」
「まぁ、未来の王太子妃だもんなー。
あの王太子にはもったいないけど」
よっぽど王太子様が嫌いらしく、またまた毒づくジャックさんに、私とマリーさんは苦笑いするしかない。
そんなやり取りをしてる間に、お目当ての本屋に到着。
お目当ての本は人気作らしく、店内の一番目立つ場所に陳列されていたので、探すことなく買うことが出来た。
頼まれた本はあっさり買うことが出来て、ここまでは順調だった。
そう、ここまでは……。
「もう、勘弁してください……」
疲れ切って助けを求めるが、それに応じてくれる人はいない。
ジャックさんに助けてもらおうと姿を探すも、身の危険を感じたのだろうか。
早々に退散しており、見渡す範囲にその姿はない。
一体何のための護衛なのよっ!!
そんな八つ当たり気味の怒りを押し殺しつつ、この事態の元凶に目を向ける。
「なーに言ってるの!まだまだよ!
ほら、これも着てみて?」
そこにいるのは、可愛らしい服を手に持ったままニコニコとしているマリーさん。
その背後、そして私の周りには数え切れないほどの服と、満面の営業スマイルを浮かべた店員の皆さん。
よくよく見てみると、いつの間にか完全に包囲されていて逃げ場がなくなっている。
「私なんかの服をそんな頑張って選ばなくても……」
何とか慈悲を求めようと、マリーさんに懇願する。が、当然それは無視される。
もう1時間以上はずっと取っかえ引っ変え試着させられているので、どの服を試着してどれをしてないのかすらわからなくなって来た。
「ミリはせっかく魅力的な女の子なんだから!
もっと魅力を引き出してくれる服を着なきゃ!」
いや、私にそんな魅力なんてありません……。
私の心の叫びは誰にも届くことはなく、マリーさんが満足するまで服選びは続いた。
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