77 / 81
さらなる高み
しおりを挟む
富めるものはさらに繁栄し、貧しいものは何をやっても這い上がれない。
金さえあれば、と困難を前にした人はよく嘆く。
確かに銭金の問題さえなければ人はもう少し楽に生きることもできそうだ。
金が無いばかりに人はパンを盗んで投獄され、生活のために体を売り、家族や友を裏切る。
フィクションの世界なら物語をドラマチックにする効果もあるだろうが、現実を生きる人間にとっては枷でしかない。
どうせ生きるなら余分な苦労や回り道などせず、更なる高みを目指したい。しかし現実はいまも所有する金の多寡によって運命が決まり、持たざる者にとってこの世はひどく冷たい。
だから私は若さと美しさを最大限に活用して、金持ち男を大勢たぶらかし、その財産を巻き上げてきた。
私のことを独占したくて札束を積み上げる者もいたが、妻や愛人になるつもりなどない。哀れな動物の皮を剥ぎ、小さな子供にダイヤを探させて、安楽な暮らしを手に入れるだけのそんな人生になんの意味がある?
いくら欲しい?と偉そうに言った男たちも、最後は私に懇願する。
私のために「すべてを投げ出してもかまわない」と男たちは言った。
築いた巨万の富を私の前に差し出して「欲しいのは君だけだ」と涙を流す者もいた。
バカバカしい。
安っぽい言葉にはうんざりだ。
金を払えば私を好きにできると思っている、その考えが気に入らない。
私を思い通りにできず自棄になった男が札束を投げつけると、舞い散る紙幣を一枚でも多く拾おうとその場に居合わせた者たちはみんな地面に這いつくばった。
そんなことをしたって、私を手に入れることなどできない。
傲慢で下品で厚かましい、金以外に誇れるもののないお前にいったい誰が情けをかける?
私は徹底的に冷酷で無慈悲なやり方で彼らを叩きのめす。
こうして手に入れた金を、私は再分配していった。
金さえあればと嘆く人たちを救い続け、世の中の不平等を正し、人類をさらなる高みへと導こうとした。
私の若さも美貌も底をついたいま、果たして少しはマシな世の中になっただろうか?
たくさんの金を集め再分配したはずだが、金がないばかりに嘆く人は減らない。
相変わらず他人を羨み、幸福を金の多寡で計り、
道端に転がる私の姿は誰にも見えない。
金さえあれば、と困難を前にした人はよく嘆く。
確かに銭金の問題さえなければ人はもう少し楽に生きることもできそうだ。
金が無いばかりに人はパンを盗んで投獄され、生活のために体を売り、家族や友を裏切る。
フィクションの世界なら物語をドラマチックにする効果もあるだろうが、現実を生きる人間にとっては枷でしかない。
どうせ生きるなら余分な苦労や回り道などせず、更なる高みを目指したい。しかし現実はいまも所有する金の多寡によって運命が決まり、持たざる者にとってこの世はひどく冷たい。
だから私は若さと美しさを最大限に活用して、金持ち男を大勢たぶらかし、その財産を巻き上げてきた。
私のことを独占したくて札束を積み上げる者もいたが、妻や愛人になるつもりなどない。哀れな動物の皮を剥ぎ、小さな子供にダイヤを探させて、安楽な暮らしを手に入れるだけのそんな人生になんの意味がある?
いくら欲しい?と偉そうに言った男たちも、最後は私に懇願する。
私のために「すべてを投げ出してもかまわない」と男たちは言った。
築いた巨万の富を私の前に差し出して「欲しいのは君だけだ」と涙を流す者もいた。
バカバカしい。
安っぽい言葉にはうんざりだ。
金を払えば私を好きにできると思っている、その考えが気に入らない。
私を思い通りにできず自棄になった男が札束を投げつけると、舞い散る紙幣を一枚でも多く拾おうとその場に居合わせた者たちはみんな地面に這いつくばった。
そんなことをしたって、私を手に入れることなどできない。
傲慢で下品で厚かましい、金以外に誇れるもののないお前にいったい誰が情けをかける?
私は徹底的に冷酷で無慈悲なやり方で彼らを叩きのめす。
こうして手に入れた金を、私は再分配していった。
金さえあればと嘆く人たちを救い続け、世の中の不平等を正し、人類をさらなる高みへと導こうとした。
私の若さも美貌も底をついたいま、果たして少しはマシな世の中になっただろうか?
たくさんの金を集め再分配したはずだが、金がないばかりに嘆く人は減らない。
相変わらず他人を羨み、幸福を金の多寡で計り、
道端に転がる私の姿は誰にも見えない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【新作】読切超短編集 1分で読める!!!
Grisly
現代文学
⭐︎登録お願いします。
1分で読める!読切超短編小説
新作短編小説は全てこちらに投稿。
⭐︎登録忘れずに!コメントお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる