超短編小説集 2024

次の駅で

せっかちで短気
いつも前のめりで先のことばかり考えて生きている
もったいぶれず堪え性がない
カップ麺は時間を計らないから
かたいままでも平気で食べる

読むスピードを好きに決められるからひとりで黙って本を読むのが好きで
先へさきへと知りたくなるから情報番組は倍速で見る方がしっくりくる
誰かと話すなら早口で喋って目の前の人にできるだけたくさん何かを伝えたい

考えていること思っていることを吐き出すためのノートは
追い立てられるような汚い文字で埋め尽くされ
キーボードの文字変換が遅すぎると苛立つ始末
病院にかかるなら話すことは事前にメモで準備して
占い師に会うなら当ててもらうのを待つなんてせず
全部情報開示してしまう

とにかくじっと待つことができない
駆け引きはできず
ダメだと思ったらさっさと見切りをつけて立ち去る
いろんなものを切り捨てて
せっかちで落ち着きがない

急いでいるけれど実のところ目的地は特に決まっていない
みんなを締め出して手に入れた余白の時間を
何をするでもなくもて余す

短時間しか人にいい顔ができないから
偶然隣り合わせた人と打ち解けて話すのは気楽
長い付き合いになると辛くなる

昨日のわたし、過去のわたし、それから今のわたしが
どんなわたしになっているのか見るのが怖い

不格好でみっともない
わたしのことを見たらみんなイヤな気分になるだろうから
次の駅で降りてもう一生会うことのない関係が
一番好きだ