ガーデン【加筆修正版】

いとくめ

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24・助けてあげる

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ようやくスイッチのある場所までたどり着き、杏は電灯をつけた。
居間の床には、ミノルさん、父と祖母、そして叔母の若葉が倒れていた。

テーブルの上には食べかけのゼリーとスプーンが散乱している。

「父さん起きて!」

一番近くにいた父の体を揺り動かしてみたが反応はなかった。
ほおを叩いてみても同じだった。

「無駄よ。みんな眠っているから」

「どうして?」

「さあ?このゼリーを食べたからかしら。あなたも食べてみる?」

彼女は妖艶な笑みを浮かべ、手付かずのゼリーを手にゆっくりと杏のところへ近づいてきた。
いつの間にやってきたのか、ハスが唸り声をあげていた。
ハスは女をにらみつけ今にも飛びかかろうとしている。

しかし、女はそんなこと気にする風でもなかった。
一歩、また一歩と杏に近づいてくる。
盾のようになって杏を守っているハスが、振り返らず言った。

「ついに来たぜ、奴らだ」

「来た、って言われても困る。どうしたらいいの?」

女は立ち止まり、杏とハスを見てうれしそうな顔をした。

「あなた、持ってるのね?いまその犬と喋ってたでしょ?」

女の目がぎらりと光った。

「やっぱりね。ここだと思っていたけれど、探す手間が省けたわ。ねえあなた、わたしにそれをくれるならみんなを元に戻してあげる」

それを聞いた杏は、無意識に首から下げた布袋に手をやった。
女はそれを見逃さなかった。

「そこにあるのね?それを渡してくれたらみんなを助けられるわ」

涼華が優しくあやすように杏に囁いた。
杏は床に倒れている家族をもう一度見た。

「本当に助けてくれるんですね?」

杏が布袋を取り出そうとした時だ。
ハスは杏に飛びかかり「ばかやろう!」とその横っ面をぱしんと叩いた。

「言いなりになるな!そんなの嘘に決まってるだろ」

「でもみんなを助けないと」

「騙されるな。渡したら最後誰も助けられない」

杏とハスのやりとりを見ていた女が、大きな声で怒鳴りつけた。

「いいからさっさとそれをよこしなさい!」
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