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自由の代償
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葵がおそるおそるドアノブを回す。
がちゃ。
開いた。というか、開いていた。開いちゃった。この北校舎に侵入するときと言い、セキュリティがばがばすぎないか。まあ、この際そんなことはどうでもいいんだけど。葵と顔を見合わせる。葵がにやっと口角を上げたかと思うと、勢いよくドアを押した。
ぶわっと、外の冷たい風が顔を撫でた。
目の前に広がる景色。
地上を飾る煌びやかな街明かり。それに負けじと輝いている夜空に散りばめられた星々。
「…うわぁ…!」
思わず、おれたちは声を漏らしていた。
「こんな場所があったんだね…!」
葵がはしゃぐようにぐるぐると回転しながら周りを見渡す。おれも別世界を思わせるような景色に、少し心が躍る。
「ああ、屋上がこんなになっているなって、知らなかったよ」
授業で北校舎にはたまに訪れていたが、いつもなら屋上へと続く通路は、バリケードによって封鎖されているので、通ることが出来ない。そんなこともあって、屋上がどうなっているか気になってしまったおれたちは、好奇心に抗うことができず、バリケードを越えてきたのだった。
「なんでこんな綺麗な場所、封鎖してたんだろ、勿体ない」
葵はむすっと眉を顰めて腕を組んだ。
「そりゃあ、落ちたら危ないからだろ。先生たちも、生徒に怪我させて怒られたくないだろうしね」
「…そうやって、大人はさぁ」葵は、ふーっと大きく息を吐いて空を見上げる。
「わたしたち子どもの自由を奪ってくるよね。子どもっていう括りで縛りつけて、自分たちの敷いたレールに従わせる。従わないやつは非行やら不良やらとか言って淘汰する。もしくは従わせる。出る杭を打つみたいに」
葵は夜空を見上げたまま、動かなくなった。おれは彼女の目を見たけれど、そこからは感情が読み取れない。
「…でも」おれはきらきらと光っている地上の街を見下ろす。
「それは曲解なんじゃ?さっきも言ったけど、ここは危ないから封鎖されてるだけでさ」
「違うよ」葵はおれを見返していた。
「それは大人が勝手にそう決めつけてるだけ。危ないって。自由でいいんだよ、もっと。好奇心、探求心、何でもいい。何かしたい、って気持ち。その気持ちが思うままに動ける。その自由が本当はあったはずなのに」
「それでもさ、皆が皆自分勝手にしてたら、世界が成り立たないんじゃない?」
「まあ、そこはさ、人に迷惑を掛けない程度の自由ってことだよ。誰かを殺したいって思っても、さすがに他人の自由に危害を加えちゃいけないよね」
葵は、よっこらせ、と言いながらスカートを抑えながら地面に体育座りしてしまった。
「じゃあ」おれも葵に倣って、横に座る。
「本当に、大人が言う通りここが危なくて、それで死んじゃったらどうするの?」
「それも、自由なんだよ」
今度は座ったまま、葵はまた空を眺め始めた。
「何をしても自由。それで死んじゃっても、自分が決めたんだから。どう死のうと、わたしたちの勝手じゃん。他人にどうこうされたくないよ」
「…そうかもしれないけどさ」葵の言葉を聞いて、心の奥底が少し揺れた気がした。
「自分はそれで良くても、勝手に死なれたら、迷惑だと思うよ」
「…どういうこと?」
葵は首を傾げて、真顔でおれを見ていた。おれは、彼女の顔を見返すことはできずに俯く。
「…おれさ」俯いたまま、言葉を漏らす。今日は、羽目を外したせいかもしれない。心の奥深くにしまい鍵を掛けていた感情も、外れてしまったみたいだった。
「中学の頃、母親が死んだんだ」
このことを話すのは、いつぶりだろうか。本当に、暫く思い出しもしなかった。そういう話をする機会も無かったし。こんな話をする相手もいなかったと思う。
「持病でさ。一回体調崩したら、それきりずっと入院しちゃったんだ。でも、ポジティブな人でさ。『これでいいんだよ。もし病気で死んじゃっても、これはあたしの死でしかない。あんたには何も関係ない。だから、あたしが死んでも、何も気にするな。あんたはあんたの人生をしっかり生きろ』って。笑いながら言うんだよ。今でも覚えてる。その後、潔く、っていうか、本当にぽっくり逝っちゃって。唐突だったよ」
おれは葵を見ていなかったけれど、彼女はじっとおれの話を聞いているようだった。
「まあ、母さんの言う通り、母さんからすれば、それは自分の死でしかない。どう死のうが、母さんの自由だったんだと思う。んでも、残された人は、そうじゃないんだ。勝手に死なれちゃ、困るんだよ。やっぱり悲しいし、虚しい。そのせいで、父さんは精神的に参っちゃったし、おれも、家に居づらくなって、高校に上がってからは、こうやって一人暮らしをしてる。これって結局、他人に迷惑を掛けてる、ってことなんじゃない?」
おれはやっと、葵の方に振り向くことができた。でも、彼女はいつの間にか地面に目を落としていた。
そして、ぽつっと呟く。
「…ごめん。不躾だった」
ひどく暗い声音だった。見たことが無いくらい表情が暗かったので、それなりに落ち込んでしまったのだろう。
「あ、いや!葵、違うんだ」おれは慌てて取り繕った。
「おれは、葵が言っている自由を否定しているんじゃなくて。なんだろうな、別に、迷惑かけちゃって良いんじゃないかって、思ってるんだよ」
「…え?」葵は少し怪訝そうな顔でおれを見る。
「そりゃあさ、人を騙すとか、危害を加えるとか、そういうレベルで迷惑を掛けちゃいけないとは思うけどね?要するに、悪意が無い自由なら、迷惑を掛けても良いと思うんだ」
「悪意が無い、自由?」
「うん」おれは頷いて、目の前に広がる街明かりを眺めた。
「というか、それはもう迷惑と言うか、影響?みたいなもんかな。誰かの自由で受けた影響をどう受け取るか、結局それはその人自身の問題だからね。それも回り回って、その人の自由なんだと思う。まあ、その影響が悪い方向になることもあるんだけどね。むしろ、その方が多いのかもしれない。だからこそ、自由を制限して、誰にも迷惑を掛けない、掛けられないようにしている。これが、今の社会なんだよ、たぶん」
話し終わったら、冷たい夜風が首筋を流れるのを感じた。自分らしく、なかったかな、と思う。なんでだろう、葵と話していると、言葉がすらすらと出てきた。
まるで、今まで話せていなかった時間を、取り戻すかのように。
「…そういう」葵がすくっと立ち上がった。
「勇人の言うような自由が、許される世界だったら、いいのにね」
「うん」おれも立ち上がって、うーん、と背伸びをしたあと、急に恥ずかしくなって頭を掻いてみる。
「…なんかごめん、しんみりさせちゃって。せっかく楽しかったのに、水を差したね」
葵はにやっと白い歯を見せて笑う。
「いいよ別に!それも、悪意が無かったら、自由なんでしょ?勇人の言ってたことをどう受け取るかも、わたしの自由。そうでしょ?」
おれは苦笑いを浮かべた。
「あ、あはは。そうだね、その通りだった。自分で言ったのに」
「勇人って、いつも人の顔色窺ってるよね。そんなんじゃ、いつまで経っても自由になれないよ?」
いつまで経っても自由になれない。確かにそうかもしれない。さっきも自分で言った理想の自由がどんなものか、理屈では分かっている。でも、実際に行動しようとすると、どうやっていいか分からない。理想と現実が違うように、簡単には、理想に近づけない。
いや、それとも、おれがほしいものは自由なのだろうか。そうじゃない気がする。そうじゃなくて、もっと何か──。
「…あ」葵が不意に声を漏らした。
「インスタントカメラ、もうあと一枚しかなくなってる…」
「あーあ、だから言ったじゃん。無暗に撮りすぎなんだって」
ここに来る途中までに、葵が進むたびに写真を撮るものだから、もう使い切ってしまうみたいだ。葵は少し残念そうな顔をしたが、そのあとすぐにふふっと微笑んだ。
「なんかさあ、肝試しっていうよりか、冒険みたいだったね」
発端が、葵が漫画のインスピレーションのために行こうと言い出したことだったのを今更思い出す。
「うん、怖かったの最初だけだったね。冒険、冒険かぁ。確かにそうかも。知らない場所を突き進んで、こんなところがあるって知って。久々に、子どもの頃に戻ったみたいだったよ」
「じゃあ、最後に記念撮影だね!」
葵がおれの手を引いて、屋上の縁へと進む。その方角には、いつも葵が絵を描いている河川がある。
そして、おれと葵は、カメラに向かってVサインを立てた。
「ねえ、もうちょっと後ろじゃないと、景色も勇人も写らなくない?」葵がカメラの角度を変えながら言う。
「そうかな?」
「うん、そうそう。そこそこ。じゃあわたしも──」
がこん。
変な音がした。
音がした方を見る。葵がバリケードの手すりに手を掛けたところだった。
「あっ──」
スローモーションみたいだった。
次の瞬間には、根元から折れるバリケードにつられて、葵が倒れ掛かる場面。
ゆっくり、ゆっくりと、葵が空中目掛けて飛び出していく。
刹那、色んなことが頭を過った。
葵の遠くを見る目。笑った顔。頑張る意味を話した時。夜の学校に行こうと言われた時。屋上が封鎖されている理由。
おれのせい?
おれが、止めなかったから?止めていたら、何か変わった?
最後に過ったのは、自由の意味と、母さんの言葉だった。
『あたしが死んでも、何も気にするな』
葵は、一瞬だけ驚いたような顔をして。
でも、その後、満ち足りたような顔をして。
「─葵っ!!」
おれは彼女を追いかけるように手を伸ばしていた。
がちゃ。
開いた。というか、開いていた。開いちゃった。この北校舎に侵入するときと言い、セキュリティがばがばすぎないか。まあ、この際そんなことはどうでもいいんだけど。葵と顔を見合わせる。葵がにやっと口角を上げたかと思うと、勢いよくドアを押した。
ぶわっと、外の冷たい風が顔を撫でた。
目の前に広がる景色。
地上を飾る煌びやかな街明かり。それに負けじと輝いている夜空に散りばめられた星々。
「…うわぁ…!」
思わず、おれたちは声を漏らしていた。
「こんな場所があったんだね…!」
葵がはしゃぐようにぐるぐると回転しながら周りを見渡す。おれも別世界を思わせるような景色に、少し心が躍る。
「ああ、屋上がこんなになっているなって、知らなかったよ」
授業で北校舎にはたまに訪れていたが、いつもなら屋上へと続く通路は、バリケードによって封鎖されているので、通ることが出来ない。そんなこともあって、屋上がどうなっているか気になってしまったおれたちは、好奇心に抗うことができず、バリケードを越えてきたのだった。
「なんでこんな綺麗な場所、封鎖してたんだろ、勿体ない」
葵はむすっと眉を顰めて腕を組んだ。
「そりゃあ、落ちたら危ないからだろ。先生たちも、生徒に怪我させて怒られたくないだろうしね」
「…そうやって、大人はさぁ」葵は、ふーっと大きく息を吐いて空を見上げる。
「わたしたち子どもの自由を奪ってくるよね。子どもっていう括りで縛りつけて、自分たちの敷いたレールに従わせる。従わないやつは非行やら不良やらとか言って淘汰する。もしくは従わせる。出る杭を打つみたいに」
葵は夜空を見上げたまま、動かなくなった。おれは彼女の目を見たけれど、そこからは感情が読み取れない。
「…でも」おれはきらきらと光っている地上の街を見下ろす。
「それは曲解なんじゃ?さっきも言ったけど、ここは危ないから封鎖されてるだけでさ」
「違うよ」葵はおれを見返していた。
「それは大人が勝手にそう決めつけてるだけ。危ないって。自由でいいんだよ、もっと。好奇心、探求心、何でもいい。何かしたい、って気持ち。その気持ちが思うままに動ける。その自由が本当はあったはずなのに」
「それでもさ、皆が皆自分勝手にしてたら、世界が成り立たないんじゃない?」
「まあ、そこはさ、人に迷惑を掛けない程度の自由ってことだよ。誰かを殺したいって思っても、さすがに他人の自由に危害を加えちゃいけないよね」
葵は、よっこらせ、と言いながらスカートを抑えながら地面に体育座りしてしまった。
「じゃあ」おれも葵に倣って、横に座る。
「本当に、大人が言う通りここが危なくて、それで死んじゃったらどうするの?」
「それも、自由なんだよ」
今度は座ったまま、葵はまた空を眺め始めた。
「何をしても自由。それで死んじゃっても、自分が決めたんだから。どう死のうと、わたしたちの勝手じゃん。他人にどうこうされたくないよ」
「…そうかもしれないけどさ」葵の言葉を聞いて、心の奥底が少し揺れた気がした。
「自分はそれで良くても、勝手に死なれたら、迷惑だと思うよ」
「…どういうこと?」
葵は首を傾げて、真顔でおれを見ていた。おれは、彼女の顔を見返すことはできずに俯く。
「…おれさ」俯いたまま、言葉を漏らす。今日は、羽目を外したせいかもしれない。心の奥深くにしまい鍵を掛けていた感情も、外れてしまったみたいだった。
「中学の頃、母親が死んだんだ」
このことを話すのは、いつぶりだろうか。本当に、暫く思い出しもしなかった。そういう話をする機会も無かったし。こんな話をする相手もいなかったと思う。
「持病でさ。一回体調崩したら、それきりずっと入院しちゃったんだ。でも、ポジティブな人でさ。『これでいいんだよ。もし病気で死んじゃっても、これはあたしの死でしかない。あんたには何も関係ない。だから、あたしが死んでも、何も気にするな。あんたはあんたの人生をしっかり生きろ』って。笑いながら言うんだよ。今でも覚えてる。その後、潔く、っていうか、本当にぽっくり逝っちゃって。唐突だったよ」
おれは葵を見ていなかったけれど、彼女はじっとおれの話を聞いているようだった。
「まあ、母さんの言う通り、母さんからすれば、それは自分の死でしかない。どう死のうが、母さんの自由だったんだと思う。んでも、残された人は、そうじゃないんだ。勝手に死なれちゃ、困るんだよ。やっぱり悲しいし、虚しい。そのせいで、父さんは精神的に参っちゃったし、おれも、家に居づらくなって、高校に上がってからは、こうやって一人暮らしをしてる。これって結局、他人に迷惑を掛けてる、ってことなんじゃない?」
おれはやっと、葵の方に振り向くことができた。でも、彼女はいつの間にか地面に目を落としていた。
そして、ぽつっと呟く。
「…ごめん。不躾だった」
ひどく暗い声音だった。見たことが無いくらい表情が暗かったので、それなりに落ち込んでしまったのだろう。
「あ、いや!葵、違うんだ」おれは慌てて取り繕った。
「おれは、葵が言っている自由を否定しているんじゃなくて。なんだろうな、別に、迷惑かけちゃって良いんじゃないかって、思ってるんだよ」
「…え?」葵は少し怪訝そうな顔でおれを見る。
「そりゃあさ、人を騙すとか、危害を加えるとか、そういうレベルで迷惑を掛けちゃいけないとは思うけどね?要するに、悪意が無い自由なら、迷惑を掛けても良いと思うんだ」
「悪意が無い、自由?」
「うん」おれは頷いて、目の前に広がる街明かりを眺めた。
「というか、それはもう迷惑と言うか、影響?みたいなもんかな。誰かの自由で受けた影響をどう受け取るか、結局それはその人自身の問題だからね。それも回り回って、その人の自由なんだと思う。まあ、その影響が悪い方向になることもあるんだけどね。むしろ、その方が多いのかもしれない。だからこそ、自由を制限して、誰にも迷惑を掛けない、掛けられないようにしている。これが、今の社会なんだよ、たぶん」
話し終わったら、冷たい夜風が首筋を流れるのを感じた。自分らしく、なかったかな、と思う。なんでだろう、葵と話していると、言葉がすらすらと出てきた。
まるで、今まで話せていなかった時間を、取り戻すかのように。
「…そういう」葵がすくっと立ち上がった。
「勇人の言うような自由が、許される世界だったら、いいのにね」
「うん」おれも立ち上がって、うーん、と背伸びをしたあと、急に恥ずかしくなって頭を掻いてみる。
「…なんかごめん、しんみりさせちゃって。せっかく楽しかったのに、水を差したね」
葵はにやっと白い歯を見せて笑う。
「いいよ別に!それも、悪意が無かったら、自由なんでしょ?勇人の言ってたことをどう受け取るかも、わたしの自由。そうでしょ?」
おれは苦笑いを浮かべた。
「あ、あはは。そうだね、その通りだった。自分で言ったのに」
「勇人って、いつも人の顔色窺ってるよね。そんなんじゃ、いつまで経っても自由になれないよ?」
いつまで経っても自由になれない。確かにそうかもしれない。さっきも自分で言った理想の自由がどんなものか、理屈では分かっている。でも、実際に行動しようとすると、どうやっていいか分からない。理想と現実が違うように、簡単には、理想に近づけない。
いや、それとも、おれがほしいものは自由なのだろうか。そうじゃない気がする。そうじゃなくて、もっと何か──。
「…あ」葵が不意に声を漏らした。
「インスタントカメラ、もうあと一枚しかなくなってる…」
「あーあ、だから言ったじゃん。無暗に撮りすぎなんだって」
ここに来る途中までに、葵が進むたびに写真を撮るものだから、もう使い切ってしまうみたいだ。葵は少し残念そうな顔をしたが、そのあとすぐにふふっと微笑んだ。
「なんかさあ、肝試しっていうよりか、冒険みたいだったね」
発端が、葵が漫画のインスピレーションのために行こうと言い出したことだったのを今更思い出す。
「うん、怖かったの最初だけだったね。冒険、冒険かぁ。確かにそうかも。知らない場所を突き進んで、こんなところがあるって知って。久々に、子どもの頃に戻ったみたいだったよ」
「じゃあ、最後に記念撮影だね!」
葵がおれの手を引いて、屋上の縁へと進む。その方角には、いつも葵が絵を描いている河川がある。
そして、おれと葵は、カメラに向かってVサインを立てた。
「ねえ、もうちょっと後ろじゃないと、景色も勇人も写らなくない?」葵がカメラの角度を変えながら言う。
「そうかな?」
「うん、そうそう。そこそこ。じゃあわたしも──」
がこん。
変な音がした。
音がした方を見る。葵がバリケードの手すりに手を掛けたところだった。
「あっ──」
スローモーションみたいだった。
次の瞬間には、根元から折れるバリケードにつられて、葵が倒れ掛かる場面。
ゆっくり、ゆっくりと、葵が空中目掛けて飛び出していく。
刹那、色んなことが頭を過った。
葵の遠くを見る目。笑った顔。頑張る意味を話した時。夜の学校に行こうと言われた時。屋上が封鎖されている理由。
おれのせい?
おれが、止めなかったから?止めていたら、何か変わった?
最後に過ったのは、自由の意味と、母さんの言葉だった。
『あたしが死んでも、何も気にするな』
葵は、一瞬だけ驚いたような顔をして。
でも、その後、満ち足りたような顔をして。
「─葵っ!!」
おれは彼女を追いかけるように手を伸ばしていた。
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