Re:D.A.Y.S.

結月亜仁

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仲間と

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ホント、馬鹿みたいだ。

勝手に差をつけて、勝手に悩んで、勝手にムキになって。

だけど、さ。

巨人の剣が、目の前に迫った。避けようかな、とも思ったが、反射的に身体が動いていた。

左脚を軸に、身体を回転させる。剣が右側を通り過ぎていった。それを横目で視界に捉えたながら、巨人の剣を掴んでいる右手を直視する。

右手首に、ダガーを入れ込んだ。

すっと、綺麗に刺しこまれていく。あ、ここだな、という感触が脳に刺激を与えた。

今までとは違う手ごたえがダガーから伝わった。同時に私はダガーを握る手首に力を入れて、掻っ切る。

ガシャン、と音がした。振り返ると、巨人の剣が手ごと地面に横たわっていた。

「…ハルカァ!!」

低い声が響いた。ゲンの声だ。霧の隙間から、ゲンが見える。

準備が、整ったらしい。

私はゲンの方へ駆け出した。

巨人も、それを追ってくる。後ろから、ドス、ドス、と地響きがなっている。私は走りながら、振り返った。

巨人は、追いかけてくると同時に、妙な態勢をとった。あれは、見たことがある。さっき、腰から炎を噴出させた時と、同じ仕種だ。

でも。

腰からは、いくら経っても、炎が噴出されることは無い。

当たり前じゃない。何のための、水攻撃だったと思ってるのよ。

この霧は、巨人の視界を遮ることと、もう一つ、炎の噴出を抑える役割を果たしているのだから。

私は、まだまだだ。全然力が足りないし、そういう意識はある。

だけどね。

私なりに、考えることができる。知恵を振り絞ることができる。

巨人に追いかけられながら、通路に入った。巨人も、通路を破壊して、私を追いかける。

通路の先が見えた。右脚が悲鳴を上げている、汗だくで、服が霧で濡れていて、髪が頬に張り付いて、熱くて、最悪だけど、もう少しだ。

私は通路を抜けた先に飛び出した。そこはもう一つの部屋だ。部屋に着いた途端、右側に頭から緊急回避する。

巨人も部屋に走ってきた。足を、踏み入れようとする。

「…せぇーのぉっ!!!」

掛け声が聞こえた。ゲンとコウタだ。巨人が部屋に入った瞬間、ゲンとコウタが足元にロープを引っ張る。

巨人がロープに引っ掛かって、前へと態勢を崩した。

ドスン、と巨人が前のめりにスッ転ぶ。ロープが切れることはなかった。さすが、ミコトが強化した魔術特性のロープだ。

私は、まだまだだけど。
考えて、こうやって、一緒に行動してくれる仲間がいる。

前方に転んだ巨人は、そのままうつ伏せになった。そして、その頭上には。

「ヴォ・ズィ・ル・ヴァ・デ・ィラ」

大量の式紙を張り付けられた、大きな岩がぶら下がっていた。

ミコトの<呪文スペル>が発動すると共に、真上で今までにないくらいの爆音が轟いた。

私だけでは、こんなことはできない。

できないことは、仲間に頼る。

そうやって、あたしは強くなるんだ。いや。
強くならなければならない。

あのためにも。

巨大な岩と、数え切れないほどの瓦礫が、巨人の身体に降り注いだ。
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