溺愛攻め×ツンデレ受け

のんさん

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おうちデート

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(小鳥遊視点)

「あれ、前この辺になかったっけ」

「場所移動したんじゃね?」

「あ、本当だ。海外ドラマコーナー向こうになってる」

日曜、予想より混雑していたレンタルビデオ店に俺と仁坂はDVDを借りにきていた。

「前どこまで観たっけ?」

「確か8じゃなかった?でも内容あんまり覚えてないよね。8と9まとめて借りとく?」

俺が頷くと仁坂は8と9をまとめてカゴに入れた。

「やっぱり次からは借りに来るんじゃなくて動画配信サービスに登録したほうが楽なんじゃね?好きな時にぱっと見れるし」

「まあ動画配信サービスでも悪くはないけど……うちのテレビ配信サービスと繋がらないし、2人でスマホは観にくくない?それに……」

僕は小鳥遊とこうやって出掛けるのが好きなんだけど、と言い仁坂はカゴを持っていない左手をさりげなく俺の左手に絡めてきた。

「……っ………ばかっ……ここ外っ…………」

仁坂の体温とお互い休日以外は外している薬指のペアリングの冷たさが同時に伝わってくる。

「大丈夫だよ、これくらい」

にっこり笑われ流されそうになるが子どもの甲高い笑い声と足音ではっと我にかえった。

「……っ……レジ行ってくる…!」と仁坂からカゴを半ば奪うように取り、仁坂が何か言う前に車の鍵を押し付けた。



─────────────────

(仁坂視点)

────手軽く握っただけで赤くなっちゃって可愛かったな。

会計をしている小鳥遊を店の外で待ちながらスマホで時間を確認する。

"11:45"

昼飯になるようなもの家に残ってたっけと考えていると「あの~」と間延びした声で話しかけられた。

声のほうを向くとロングヘアーの大学生ぐらいの女性が立っていた。

「仁坂さんですよね?あたしのこと覚えてますか?3ヶ月くらい前に仁坂さんにカラー担当してもらったユイです」

「…………ああ、高橋さん。こんにちは」

休日に同期や上司に会うことはあるだろうとは思っていたけれど1回しか担当していないお客さんにこんな風に話しかけられるとは思わなかった。

「覚えててくれたんですね!今日はお休みなんですか?何か映画でも借りに来たんですか?」

私生活にずかずか入り込んで来ないでくれという言葉を飲み込み営業スマイルで「ええ、まあ」と短く答える。

「あたしも新作の映画借りに来たんです!え、仁坂さん指輪してる!あたしを担当してくれた時はしてなかったですよね!?」

ひとりできゃあきゃあ騒がしい人だなと少しうんざりする。
適当に答えて離れるかと考えていると最悪なタイミングで小鳥遊が店から出てきた。
僕の名前を呼ぼうとして状況に気づき足を止めたのが視界の端に入った。

そんなことは想像もしていない目の前の彼女は「え~仁坂さん結婚してたんですか~!?ショック~」と続ける。

空気を読んで他人のフリをしてくれている小鳥遊がその言葉に少し反応したのがわかった。

「────すみません、今は『美容師』の仁坂じゃないので。お話はまた店に来ていただいた時に」

それだけ言うと小鳥遊のもとへ歩いて行きさっきより強く手を握り引っ張るような形で車へ向かった。


─────────────────

(小鳥遊視点)


「…………良かったのか?」

お互い無言のまま家に到着し軽めの昼食をとった後、借りてきたドラマ観よう?とソファに座って笑う仁坂に俺は切り出した。

「何が?」

「話してた女の人、仁坂の大事な客だったんじゃ……」

「小鳥遊以上に大事なものなんてないけど」

音声と字幕の設定をしながら仁坂がさらっと言う。

「…………っ…………でも……ショック受けてたみたいだったし……手まで繋いじゃったし……仁坂も店で変な噂たてられたりしたら……」

「ショックでも幻滅でも勝手にさせとけばいいよ。それにこんなことで評判落ちるほど適当に仕事してないから」

スタートボタンを押しドラマがしっかり始まったことを確認すると肩に手を回されぐっと抱き寄せられた。

「な、なに」

「今日はもう離れたくないなと思って」

「……………ん」

優しく抱きしめられドキドキしながらも俺は安心してテレビに顔を向けた。









『あっあんっ……!』


ドラマが進んでいくにつれ今までには無かったセックス一歩手前の濃厚なラブシーンが始まった。
さっきまでとは違うドキドキを感じ目線をどこにやったらいいかわからなくなる。

ちらっと仁坂を見たがラブシーン以外のシーンを見ている時と同じように顔色も表情も変わっていなかった。

「………………なに、したいの?」

気づかれないようにみていたつもりがそう聞かれ、バレバレだったんだと余計に恥ずかしくなる。

「や、別にしたいわけじゃ……」

ふいっと顔を背けると首すじに仁坂の唇があたる感触がした。

「…………………!」

軽いキスかと思ったらそのまま強く吸われその気持ちよさに身体の力が抜けていく。

「………………本当にしたくない?」

キスマークが綺麗についたのか満足そうな顔の仁坂が俺の顔を覗き込んでそう聞いてくる。

「………………………………………………。」

思う壷になるのが悔しくて目線だけ逸らして何も言わないでいると、俺の閉じた口に仁坂の唇が重なった。
重なったのは本当に一瞬ですぐに唇は離れていく。

「僕はもっとしたいんだけど」

「…………………その言い方、ずるい」

仁坂の首に腕を回して今度は俺から唇を重ねる。
口を開けると仁坂の熱い舌が入ってきてさっきの何倍も気持ち良かった。

「ぁっ……んん、ふぁ………っ……………!」

息をする間もないような激しいキスを何度も繰り返されると次第に頭がぼんやりしてくる。

「………………んっ………はっ………ぁ…………」

唇が離れた後も追いかけるようにぎゅっと抱きつくと、仁坂の乱れた息が首すじにかかり身体全体がゾクゾクした。

「………………仁坂、もっとして……」

返事の代わりに唇がまた重なる。
密着した身体は同じくらい熱くて仁坂も俺を求めてくれているんだというのがたまらなく嬉しかった。

「んっ……んんっ………ぅ………」

唇が離れるとお互いの口の間を混ざり合った唾液が少し糸を引いていた。

「────キス以外にもされたいことある?」

「……………ん………キスマーク……もっとつけて欲しい………」

「どのあたりに?」

ふふ、と楽しそうに笑いながら仁坂は俺のシャツのボタンを1つ1つ外していく。

「………う、腕とか……胸……とか……」

「さっき女優さんが気持ち良さそうに腕や胸にキスマつけられてるシーンあったよね。同じことされたくなっちゃった?」

「…………っ………なんでそういうことっ……」

ボタンを外し終えると仁坂は焦らすようにゆっくりと俺の身体に唇をつけていく。
期待と興奮から唇が触れた感触だけで身体がびくっとはねた。

「……………んっ………!」

声が抑えられないのが恥ずかしくて顔を背けて口元を手で抑えた。

「声我慢しないで、こっちみて」

俺の様子に気づいた仁坂が身体から唇を離してそう言った。
さっきまで抱き合ってたのにいつの間にかソファに押し倒されるような格好になっている。

「…………でも……恥ずかしい……」

何を今さら、と笑うと仁坂は口元を抑えていた俺の手をとり指を1本ずつ舌で愛撫していく。

されるがままになりながらうっすらと視界に入ったドラマはもうラブシーンなんてとっくに終わり新しい場面に切り替わっていた。
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