愛用の大剣が銀髪美少女になった元傭兵は魔獣を狩る

日諸 畔(ひもろ ほとり)

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第3章 開戦

第46話『そう、一人と一振りです!』

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 ブレイダを疑うわけではないが、リュールとしてはジルが単独で来るとは思えなかった。仲間に勧誘するにしても、命を奪い合った相手が適任とは思えない。戦うにしても、昨夜の戦いでは不意をついた初手以外、大きな危険を感じなかった程度だ。
 考えられるのは、ルヴィエを連れて来ているか、何らかの策を弄しているか。慎重になりすぎても悪いことはないはずだ。

「もう一人は来ていないんだな?」
『はい。あの人の剣はかなり離れたところにいます』
「信用しよう」
『嬉しいです!』

 ブレイダの話によると、もう随分近くまで来ているらしい。こちらが探知できるのだから、相手も同様だと考えられる。
 ここまで早いお越しだとは、リュールも予想できていなかった。その甘さは、落ち度であったと自覚している。だから、利用できるものは利用するし、頼れるものは頼ることにすると決めていた。

「マリム! 奴らが来る!」

 中央の天幕では、マリムが座ったまま仮眠をとっているようだった。その傍らにはレミルナの姿も見える。

「いちゃついてる場合じゃない! 起きろ!」
「な、ななななな……」

 慌てた様子で体を震わせるレミルナを無視して、リュールはマリムの肩を揺すった。さらに隣にいるレピアが「まだ何もしてもらってないのよ、この子」などと言っていたが、それも無視をした。

「そうか」

 あっさりと目を覚ましたマリムは、一言発して頷いた。

「説明は後でする。町を守れ」
「わかった」
「ちょっと、団長になんて言葉を!」

 詳しく説明している暇はない。それでもマリムなら理解してくれると、リュールは確信していた。人としての好き嫌いは別として、彼の力は信頼に値する。

「いいんだよレミィ、総員起こしだ」
「はっ! レピア!」

 マリムの指示を受け、レミルナは天幕を飛び出した。すぐに彼女の「総員起きろ! 町の防衛だ!」という叫び声が聞こえた。

「優秀だろう? 私の部下は」
「そうだな。いい加減応えてやれよ」
「考えておくよ」

 簡単な軽口を交わした後、マリムの顔から笑みが消えた。

「独りで大丈夫かい?」
「ああ、任せろ。それに、独りじゃない」
『そう、一人と一振りです!』

 鞘の中でブレイダは嬉しそうだ。まるでその声が聞こえたかのように、マリムは口だけ歪ませた。

「ならば、頼む」
「おう」

 これで町の心配はない。あとはリュールとブレイダ次第だ。今度は殺さない程度に痛めつけて、知っていることを吐かせてやろう。
 中央の天幕を飛び出し、ブレイダが告げる位置へと目を向ける。野営地から見て町の反対側、ちょうど昨夜に彼らと相対した場所だ。

「町を突っ切るぞ」
『はい』
「これが俺達の開戦だ」
『お供します!』

 走りながらブレイダを鞘から取り出す。リュールは、自分自身がこれまでより速くなっていると感じていた。ただし、そこには何の違和感もない。あまりにも自然に、当然のことであるように異常を受け入れていた。

 人々の悲鳴が聞こえる。町には既に何体か入り込んでいるようだった。通りすがりに二体の狼型魔獣を斬り捨てた。しかし、今のリュールは雑魚を相手にするつもりはない。
 狙うは、魔獣を操る細長い男とその剣だ。町のことはマリム達に任せたのだ。

「見えた!」
『はい!』

 視線の先には、右腕に包帯を巻いた元仲間の姿があった。
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