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第2章 魔獣狩り
第28話「ご一緒してもよろしいでしょうか」
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月明かりを頼りに、リュールは三つ目の村へと急いでいた。夜通し歩けば、日の出までには到着できるはずの距離だ。それで間に合わなければ、仕方のないことだ。
「うおっ」
「わっ、きゃ」
移動中、唐突にブレイダが剣から人の姿に戻る。鞘は腰に差してあったため、そのまま地面に落下しそうになった。
リュールは慌てて左腕でブレイダを支えた。腕で抱えられる格好で、少女は落下を免れた。剣の時は重さがないようなものだったが、少女になると相応のものがある。柔らかさも温もりも、生きている人間そのものに感じられた。
「あ、ありがとうございます」
「おう」
「びっくりしちゃいました」
「ああ、そうだな」
ブレイダをそっと足から地面に下ろし、鞄から外套を手渡す。
「呼んでないのに、人になるんだな」
「はい、そうみたいです」
どうやら、一定の時間が経つと人になるらしい。いつしか、人の状態が基本形になっているようだった。
「なぁ、結局、人になるのって、何なんだろうな」
「全然わかりません」
持ち主であるリュールも、変わってしまったブレイダ自身も、その意味を知らない。起きた現実を受け入れるしかないというのが現状だ。
ブレイダといい、魔獣といい、ここ数日でリュール知る世界の常識が変わりつつあった。
「考えるのは後にして、まずは仕事だ」
「そうですね」
「あの騎士団長、何か知っているかもしれないしな」
「そうですね。あのニヤけ顔は何か隠しているに違いありません」
ブレイダは、リュール以外には辛辣な発言が多かった。
当初の予定通り、空が白みつつある頃に目的の村へと到着した。朝日に照らされて見える限り、魔獣の襲撃は受けていないようだった。
人前で突然姿が変わることを避けるため、リュールはブレイダの名を呼ばないままにしておいた。いざと言う時は、どこかに隠れて剣なってもらえばいい。
村の長に事情を話し、いくらかの硬貨を渡した。これで数日間、村に滞在することになる。それで魔獣が現れなければ、マリムへ報告に戻る予定だ。
少女ブレイダの存在は、彼らの警戒心を薄める効果もあったようだ。見知らぬ大剣を持った男よりも、女連れの旅人の方が話を聞いてもらいやすい。思いもよらぬ副産物だった。
「とりあえずは暇になるな」
「はい」
「俺は一眠りするよ」
あてがわれた小屋の中、藁に布を張って作られた寝床に腰を下ろす。予想通り魔獣が夜に来るなら、昼間にはやることがない。
小さな村だから、家などの配置を確認するのもすぐに終わってしまった。夜通し歩いた疲れもあるため、リュールは仮眠をとっておこうと考えていた。
「あの、リュール様」
「あん?」
「ご、ご一緒してもよろしいでしょうか」
ブレイダは小屋の隅で下を向いたまま、リュールに問いかける。
「ああ、いいよ」
「剣なのに、少しだけ、あ、少しだけですよ。眠いのです」
「寝られる時に寝ておけ」
「は、はい。失礼します」
寝転がったリュールのすぐ横に、ブレイダも体を横たえた。背中をリュールに向け、すぐに寝息を立て始める。
食事はとらないが、睡眠は必要とする。思考は武器らしく物騒なのだか、人間の少女らしい側面もある。リュールの愛剣は、未だに剣なのか人なのか判別がつかない存在だった。
「うおっ」
「わっ、きゃ」
移動中、唐突にブレイダが剣から人の姿に戻る。鞘は腰に差してあったため、そのまま地面に落下しそうになった。
リュールは慌てて左腕でブレイダを支えた。腕で抱えられる格好で、少女は落下を免れた。剣の時は重さがないようなものだったが、少女になると相応のものがある。柔らかさも温もりも、生きている人間そのものに感じられた。
「あ、ありがとうございます」
「おう」
「びっくりしちゃいました」
「ああ、そうだな」
ブレイダをそっと足から地面に下ろし、鞄から外套を手渡す。
「呼んでないのに、人になるんだな」
「はい、そうみたいです」
どうやら、一定の時間が経つと人になるらしい。いつしか、人の状態が基本形になっているようだった。
「なぁ、結局、人になるのって、何なんだろうな」
「全然わかりません」
持ち主であるリュールも、変わってしまったブレイダ自身も、その意味を知らない。起きた現実を受け入れるしかないというのが現状だ。
ブレイダといい、魔獣といい、ここ数日でリュール知る世界の常識が変わりつつあった。
「考えるのは後にして、まずは仕事だ」
「そうですね」
「あの騎士団長、何か知っているかもしれないしな」
「そうですね。あのニヤけ顔は何か隠しているに違いありません」
ブレイダは、リュール以外には辛辣な発言が多かった。
当初の予定通り、空が白みつつある頃に目的の村へと到着した。朝日に照らされて見える限り、魔獣の襲撃は受けていないようだった。
人前で突然姿が変わることを避けるため、リュールはブレイダの名を呼ばないままにしておいた。いざと言う時は、どこかに隠れて剣なってもらえばいい。
村の長に事情を話し、いくらかの硬貨を渡した。これで数日間、村に滞在することになる。それで魔獣が現れなければ、マリムへ報告に戻る予定だ。
少女ブレイダの存在は、彼らの警戒心を薄める効果もあったようだ。見知らぬ大剣を持った男よりも、女連れの旅人の方が話を聞いてもらいやすい。思いもよらぬ副産物だった。
「とりあえずは暇になるな」
「はい」
「俺は一眠りするよ」
あてがわれた小屋の中、藁に布を張って作られた寝床に腰を下ろす。予想通り魔獣が夜に来るなら、昼間にはやることがない。
小さな村だから、家などの配置を確認するのもすぐに終わってしまった。夜通し歩いた疲れもあるため、リュールは仮眠をとっておこうと考えていた。
「あの、リュール様」
「あん?」
「ご、ご一緒してもよろしいでしょうか」
ブレイダは小屋の隅で下を向いたまま、リュールに問いかける。
「ああ、いいよ」
「剣なのに、少しだけ、あ、少しだけですよ。眠いのです」
「寝られる時に寝ておけ」
「は、はい。失礼します」
寝転がったリュールのすぐ横に、ブレイダも体を横たえた。背中をリュールに向け、すぐに寝息を立て始める。
食事はとらないが、睡眠は必要とする。思考は武器らしく物騒なのだか、人間の少女らしい側面もある。リュールの愛剣は、未だに剣なのか人なのか判別がつかない存在だった。
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