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2話 悩みの相談

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それから数日、私は呆然としていた。

「どうしよう……このままじゃ結婚できないよ。何とかしないと!」

だけど私にはどうしていいかわからなかった。

「駄目だ。一人で家にいてもへこむし、外の空気でも吸わないと」

私は気分転換も兼ねて町まで出かけることにした。



「ふーん。それで俺のところに来たのか」
「はい。クリスさんなら色々経験してますし、何かアドバイス頂けたらと……」
「まあいいけど、お前みたいな可愛い女が振られるなんて何があったんだ?」
「それが……」

 私は事のいきさつを話すことにした。

「なるほどね。それは酷いな」
「ですよね! やっぱり酷いですよね!」
「ああ。俺だったらそんなことは言わないな」
「はい! 私もそう思います!」

私はつい興奮してしまった。

「まあ落ち着けって。とりあえず今の状況を整理するぞ」
「はい!」
「まず第一に、マリアはその男のことを好きか?」
「正直好きでしたけど、もうあれじゃ無理だと思いますし、諦める覚悟は出来てます」
「それなら話は簡単だ。その男が別の女と幸せになるのを見ていろ。それだけだ」
「えっ?」
「なんだ不満なのか?」
「いえ。そういうわけじゃないんですけど……」
「お前さっき言ったよな。諦める覚悟は出来てるって」
「はい」
「なら見届けるくらい出来るだろう」
「確かにそうですけど……」
「そもそもだ。お前の言う通り、そいつが他の女と付き合うようになったとしてだ。お前は本当に平気なのか?」
「……」
「ほれみろ。答えられないじゃないか。つまりはそういうことだ」
「じゃあどうしたらいいんですか? 婚約破棄されたのにみっともなく縋りつけというんですか?」
「誰もそこまで言ってないだろう。それにお前だって悪いとは思ってるんだろう? ならちゃんと話し合ってみれば良かったんじゃないか? 少なくとも一方的に婚約破棄されるよりはマシだと思うぜ」
「話し合いですか?」
「そうだ。今のままだとお前は何もしないで終わることになるぞ。後悔だけはしないようにしろよ」
「わかりました! ありがとうございます! 早速お屋敷に戻ってダニエルとお話をしてきます!」
「おう。頑張れよ」

私は急いでダニエルの家へと向かった。

(大丈夫。まだチャンスはあるはず)
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