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4話 私攫われます。 それじゃさようなら!

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 彼ロバートの登場で場は更に深刻な空気になっている。
父は先ほど掴まれた腕を振りほどくとロバートさんに向けて指を指す。

「貴様か。私の娘のソフィアをたぶらかした不届き物は! 許さんっ! 許さんぞ!」
「あなたがソフィアさんのお父様ですか。 残念ですがあなたは父親失格だ」
「なんだとっ!」
「娘の幸せを考えずに得体も知れない男と結婚させようなど何という外道。 ソフィアさんが逃げ出したいと願うのも当然だ」
「貴様ぁ」

 父親はさらに怒りに顔を歪める。
そしてそれについにキールも入ってくる。

「ちょい待て! 俺が得体の知れない男だって言うならアンタは誰だよ! 俺は貴族のキールって言うんだ。 貴族様だぞ。 そういうお前はなんだってんだ!」
「申し遅れましたね。ロバートと申します。実業家をしております」
「はあっ! ロバート……なっ、お前あのロバートか!」
「なあっ! ロバートってあのロバートさまですか?」

 ロバートさんが名を明かした瞬間、父とキールの表情は凍りつく。
黙って場を見ていた母も愕然とした表情だ。

「貴様……いえロバート様はもしかしてあの大公位についてらっしゃる大貴族様ですか?」
「ええ、そうですよ」

 ロバートさんがそう言った瞬間に父は腰を抜かす。
そうだ。大公は貴族の階級の最上位に当たる。
ちなみに私の家は伯爵家。キールの家は準男爵に当たる。
つまり父は貴族の階級として五階級も上の人間を貴様呼ばわりしていたことになる。
それは貴族位のはく奪をされてもおかしくない最悪の暴挙なのだ。
 キールに至っては10階級も上の人間に対する傲慢な振る舞い。
 ロバートさんの意思一つでお家のおとりつぶしはもちろん、キールを断頭台にも掛けることが出来る。
そんな絶対の相手を前にキールは足をがくがく震わせ、立って居るのもやっとだった。

「それではソフィアさんは私が攫って行きます。 恐らく皆さまとは二度と会うことはないでしょう」

 ロバートさんはそういうと私をお姫様抱っこで優しく抱き上げ、そのまま我が家を後にする。
 そのロバートさんをもうだれも止めることは出来ない。
口を挟むことすら不敬に当たる。
 絶対の存在を前に皆は顔を伏せ、沈黙するしかなかった。

 こうして私は大実業家にして貴族の最高位大公の爵位を持つロバートさんと結婚した。
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