滅茶苦茶酷い理由で婚約破棄された私ですが素敵な男性と出会えました。でも元婚約者は許しません。

王都の舞踏会はシャンデリアの光に照らされ、貴族たちの笑い声が響き合っていた。その中心にいたセシリア・ド・フロレンティアは、金髪が陽光のように輝き、青い瞳が湖面を思わせる侯爵令嬢。婚約者のレオナルド・ヴァン・クロイツェルと並ぶ姿は、まさに社交界の華だった。けれどその夜、すべてが崩れ落ちた。レオナルドの冷たい声が広間に響き、偽りの罪を突きつけられた彼女は、婚約破棄を告げられる。嘲笑と冷ややかな視線の中、セシリアはドレスの裾を引きずり、涙をこらえて王都を彷徨った。

足が導いたのは「星降る森」。魔獣の咆哮が響く禁域で、彼女は赤い目の狼に襲われる。絶望が胸を締め付けたその瞬間、鋭い剣の音が夜を切り裂いた。「危なかったな、お嬢さん」――現れたのはエイドリアン・シルヴァン。黒いマントを羽織り、緑の瞳が月光に映える傭兵だ。血の滴る剣を手に、彼はセシリアを小さな小屋へと連れていく。暖炉の火がパチパチと鳴り、差し出されたスープの温もりが、凍えた彼女の心を溶かした。「何してるんだ、こんな場所で?」と軽く笑う彼に、セシリアは初めて安堵の息をつく。

森での日々は、貴族社会の冷たさから遠く離れた穏やかな時間だった。けれど静寂は長くは続かない。巨大な魔獣が現れ、エイドリアンが剣を振るう中、セシリアの胸に熱いものが込み上げた。「あなたを助けたい」――その思いが、彼女に眠る星魔法を呼び覚ます。光の矢が魔獣を貫き、二人は肩を並べて勝利を掴む。暖炉の前で傷を手当てしながら、セシリアはエイドリアンの硬い掌に触れ、彼の優しさに心が震えた。「また助けられたな」と笑う彼に、彼女はそっと微笑む。

裏切りで砕けた令嬢と孤独な傭兵。二人が星降る森で紡ぎ始めた絆は、冷たい過去を温め、新たな光を灯していく。月光の下、魔獣の咆哮と星の輝きが交錯するこの物語は、傷ついた心が再び立ち上がり、愛を見つけ出す旅の始まりだ。

銀の冠と星の誓いからタイトルを変更しました。
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