婚約破棄をされたので～こうして私は素敵な人と出会いました～

1話 婚約破棄をされました

「ミスティ！　俺はお前との婚約を破棄させてもらう」
「はいっ！？　今なんておっしゃったんです？」

　私ことミスティ・ヴァリエールは突然の事に半ばパニックだ。
だって婚約者のセルゲイ・ウォルコットから突然婚約破棄をされたのだ。
冷静でいられるわけがない。
　つい数時間前、私はセルゲイに呼ばれてウォルコットの邸宅を訪れたばかり。
そして家に行ったら彼以外誰もいないとのことだった。
初体験かもと期待していたのにそしたらこの仕打ち。
　冷水をかけられたみたいに私の体温は下がっていくのを感じる。

「正気ですか？　私達の婚約は両家の発展のために必要なことなのですよ。それをどうして……」
「決まってる。俺には好きな女がいるんだ」
「……それならとりあえず結婚だけでも私として下さい。　後は側室でも作って好きになさって構いません。私も結婚後は他の男性の恋愛しますからとりあえず籍だけは私とお願いします」

　私は落ち着いて頭を下げる。
ウォルコット家は大公家に繋がる大物貴族なのだ。
　そして対するヴァリエール家は侯爵貴族。
はっきり言ってパワーバランスが違いすぎる。
仮にウォルコットからの婚約破棄でも私の家に何らかのダメージがくる可能性は否定できない。
　それに両親も大公と縁戚関係になるのを喜んでいる。
簡単に引きさがりたくはないのだが……

「断る。それに俺はお前のことはあまり気に入らなかったんだ」
「どうしてですか……」
「決まってる。ブロンドヘアの女は馬鹿が多いと相場で決まっている。実際俺の友人は『お前の婚約者は何か馬鹿っぽい』とか言うのが多くて辟易していたんだ」
「なっ！？　そんな私の自慢のブロンドヘアが馬鹿っぽいって……酷すぎます！？」
「知るか。　それじゃお前はさっさと帰れ。　お前の顔はもう見る気もない」
「……」

　駄目だ。
取り付く島もないとはこの事だろう。

「……分かりました」

　これ以上問答しても私が傷つくだけでそれ以上の利はない。
私はセルゲイの邸宅を後にした。

それから暫くして私の実家であるヴァリエール家に帰って来た。
そこで父や母にも相談するが、父は無言で肩に手を置くだけだったし、母は逆に私を抱きしめてくれた。

「うわーん！！ こんな理不尽なことがあっていいんですかぁ！！」
「ミスティ。辛いでしょうけど貴方は何も悪くないのよ。悪いのは全てあの男なんだから」

そう言って母は優しく慰めてくれる。
その優しさが余計に私の涙腺を刺激する。
こうして私の初恋は終わりを告げるのだった。