上 下
8 / 15

7話 これがアマ棋戦なの!?

しおりを挟む
 大会に出ると決めてから約一週間。
その間にこの世界の新たな将棋の戦法も完全に覚え対策も練った。
準備万端での大会デビューだ。

両親からは

「いちごも将棋やるのね。頑張ってね」
「目指せ全国だぞ、いちご!」

 という激励を貰った。
私が将棋を指すのを応援してくれている両親には本当に感謝だ。

「ここが会場?」

 大きなビルで将棋のアマ竜王戦神奈川予選は行われる。
一応調べたがアマの神奈川県レベルは相当に高いらしい。
まあ元の世界も東京や神奈川、千葉や埼玉の一都三県はハイレベルなのでそこは同じだ。
だけど一つ大きな違いもある。
 この世界はプロ入りへの敷居は元の世界よりはかなり低く設定されているので、全国レベルは毎年大量にプロへと行ってくれる。
現に去年の神奈川トップレベルはほとんどが既にプロ入りを決めているのでこの大会には出ない。
 また元奨励会の人も強い人は確実にプロ入りとなるルールのおかげでやばいレベルの実力者が参加することはほぼ無い。
 そういう意味じゃハイレベルといっても、どうしようもない地獄のレベルじゃないのは救いだ。
 そもそも元の世界に比べて競技人口の大幅な増加と賞金額の桁違いの増額の影響もあって将棋のプロのレベルは数段上がっているのだ。
 現にこのアマ竜王戦も竜王戦と同じで主催があのアップルなのでアマだけどかなり高額の賞金が用意されている。
 当然アマの方も底上げがあるので、元の世界と同じようにプロが狭き門だとアマのレベルもやばすぎて私でもかなり苦戦しそうだったので本当に良かった。
それでもまあハイレベルには変わりはないけどね。

「さてと、それじゃ受付を済ませてと……」

 さっそく受付に行こうとすると突然肩を叩かれた。

「なああんた大会でるの?」
「えっ、 そうですけど」

 振り返ると茶髪のショートヘア―の女の子が立っていた。
顔は結構可愛い。

「そうなんや。 ウチも出るねんけど、同世代があんまおらんから不安やったんや。良かったわおって。 アンタは何歳?」
「15歳の中3ですけど……」
「うっそ同い年やん。 ウチは大西 夢言うねん。アンタは?」
「星河いちごです」
「そうなんや。 学生の大会出んとこっち出るってやっぱプロ棋戦出るの狙ってる?」
「まあそうですけど……」
「やっぱそうか。 ウチもやねん。ウチな。こう見えても現在2勝してんねん。今年の3月に鳳凰戦で3回戦まで行ったんや。 もうそうなったらプロ目指すしかないやろ」
「そうなんですか……」

 鳳凰戦? 聞いたこと無いな。 帰ったらちゃんと調べようかな。

「なああんたは今何勝してん?」
「えっ……何勝も何も今日がデビューです」
「そうなんや。 まあ頑張ってな。 緊張せんのが一番やから」
「はい」
「それじゃーなー」

 それだけいうと夢さんは去っていった。

「なんだか元気な人だったな……」

 でも緊張はほぐれたな。
さっそくエントリーしよう。

 こうして私もエントリーを行った。
 いよいよアマ竜王戦が始まる。
しおりを挟む

処理中です...