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後篇
ゆがみ①
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店に行くと、例の老女が迎えてくれた。そして訳を話すと、老女は目を伏せた。
「夢と現実が入り交じり始めていますね」
「え?」
このままでは、仮想空間でずっと生き続けることになり、現実には戻れなくなるかもしれないというのだ。
「どうすればいいんですか?」
「一度、ダリア・クロックを貸してください。特別メンテナンスをしましょう。そうすれば元通り使えます」
そう言われ、ダリア・クロックを老女に渡した。よかった、また三人と一緒に楽しく過ごせる……。
そう思った矢先、電話が鳴った。見ると妻からである。
(今更なんなんだ……)
正直、うんざりした。勝手に出て行ってそれから音沙汰がなかったのだ。こっちはもう離婚を考えていたというのに、身勝手すぎる……。
そう思って一言文句を言おうとした。すると、電話の声の主は義母だった。
「計希さん? あなたの連絡先が分からなかったから、娘の電話を使ったの」
「どうしたんですか?」
義母の息が上がっている。何かあったのか?
「娘が交通事故に遭って、今夜が峠らしいの!」
「え!?」
にわかには信じがたかった。妻が交通事故で瀕死!?
「すぐに来て!!」
「わ、わかりました!」
電話を切り、店を出て行こうとすると
「どうなされました?」
「妻が事故に遭って瀕死らしいんです!」
すると老女が冷徹な言葉を投げかけてきた。
「困りましたね、あなたはここにいてもらわないと」
「でも、メンテナンスが終わった頃にまた来ればいいでしょう?」
老女は首を振る。
「このダリア・クロックは、あなたの精神に感応します。途中で抜けられたら、どんな誤作動が起こるかしれません」
「何だって!?」
「どうなさいます? 奥さんを捨てるか、ダリア・クロックを捨てるかです」
急に酷な選択を迫られた。妻には愛想を尽かしているが、正直、このまま終わらせていいのか悩んでもいた。が、ここで妻を捨てたらもうやり直すどころか今生で会うこともできないかもしれない。
かと言って、ダリア・クロックを捨てる気持ちにもなれなかった。快楽という癒やしが、今の僕には必要だった。
しかし、なぜか僕の脳裏には「誤作動といっても本当に起こるかわからないはず」と、根拠のない自信がわいた。自分は大丈夫だろうという、いわば正常性バイアスが起こったのだ。
僕は店を出て、駅の方に駆けだした。
駅に向かって走り続けた。もう別れようとした妻なのに、自分は何をしているんだろう? でも、このまま終わらせるのは嫌だ。
駅に入り、電車に飛び乗った。この時間にしては満員に近かったが、なりふりかまってはいられなかった。頼む、間に合ってくれ……。
すると、近くにいた女性から声を掛けられた。
「大丈夫ですか? 息が上がっていますけど……」
「あ、大丈夫です、ありがと……」
顔を上げて血の気が引いた。七尾明日香さんであった。
「え、七尾さん!?」
「ふふふ、時任さん。あなたは逃げられませんよ」
彼女はそう言うと右手を上げた。途端に辺りの時間が止まる。
「今、動けるのは私とあなただけ」
「な、何を……」
「あれだけ私たちを犯しておいて奥さんのところに行くんですか? そうは行きませんよ」
美しいが陰のある表情で、僕のズボンのチャックを下ろした。
「な…」
「いつもやっているじゃないですか」
そういうと、僕の棒にむしゃぶりつく。口に含んでしごくと、あっという間に発射した。
「んん、おいしい」
「七尾さん、今はやめてくれ! 妻のもとに行かなくちゃならないんだ!」
抗議したものの、体が動かない。
「だめですよ、私を気持ちよくしてください」
彼女はスカートをたくし上げる。下着をはいていなかった。
「ほら、ここに……」
「だ、だめだ!」
彼女は立ったまま、強引に僕の棒を割れ目に入れる。上げた脚を手すりに掛け、腰を振ってきた。
「んんん、電車の中なんて興奮しますね」
「あああっ!」
僕は二回目を発射した。
どうなっているんだ? まさかもう仮想空間から抜けられないのか!? もう妻や子供と会えないというのか!?
「夢と現実が入り交じり始めていますね」
「え?」
このままでは、仮想空間でずっと生き続けることになり、現実には戻れなくなるかもしれないというのだ。
「どうすればいいんですか?」
「一度、ダリア・クロックを貸してください。特別メンテナンスをしましょう。そうすれば元通り使えます」
そう言われ、ダリア・クロックを老女に渡した。よかった、また三人と一緒に楽しく過ごせる……。
そう思った矢先、電話が鳴った。見ると妻からである。
(今更なんなんだ……)
正直、うんざりした。勝手に出て行ってそれから音沙汰がなかったのだ。こっちはもう離婚を考えていたというのに、身勝手すぎる……。
そう思って一言文句を言おうとした。すると、電話の声の主は義母だった。
「計希さん? あなたの連絡先が分からなかったから、娘の電話を使ったの」
「どうしたんですか?」
義母の息が上がっている。何かあったのか?
「娘が交通事故に遭って、今夜が峠らしいの!」
「え!?」
にわかには信じがたかった。妻が交通事故で瀕死!?
「すぐに来て!!」
「わ、わかりました!」
電話を切り、店を出て行こうとすると
「どうなされました?」
「妻が事故に遭って瀕死らしいんです!」
すると老女が冷徹な言葉を投げかけてきた。
「困りましたね、あなたはここにいてもらわないと」
「でも、メンテナンスが終わった頃にまた来ればいいでしょう?」
老女は首を振る。
「このダリア・クロックは、あなたの精神に感応します。途中で抜けられたら、どんな誤作動が起こるかしれません」
「何だって!?」
「どうなさいます? 奥さんを捨てるか、ダリア・クロックを捨てるかです」
急に酷な選択を迫られた。妻には愛想を尽かしているが、正直、このまま終わらせていいのか悩んでもいた。が、ここで妻を捨てたらもうやり直すどころか今生で会うこともできないかもしれない。
かと言って、ダリア・クロックを捨てる気持ちにもなれなかった。快楽という癒やしが、今の僕には必要だった。
しかし、なぜか僕の脳裏には「誤作動といっても本当に起こるかわからないはず」と、根拠のない自信がわいた。自分は大丈夫だろうという、いわば正常性バイアスが起こったのだ。
僕は店を出て、駅の方に駆けだした。
駅に向かって走り続けた。もう別れようとした妻なのに、自分は何をしているんだろう? でも、このまま終わらせるのは嫌だ。
駅に入り、電車に飛び乗った。この時間にしては満員に近かったが、なりふりかまってはいられなかった。頼む、間に合ってくれ……。
すると、近くにいた女性から声を掛けられた。
「大丈夫ですか? 息が上がっていますけど……」
「あ、大丈夫です、ありがと……」
顔を上げて血の気が引いた。七尾明日香さんであった。
「え、七尾さん!?」
「ふふふ、時任さん。あなたは逃げられませんよ」
彼女はそう言うと右手を上げた。途端に辺りの時間が止まる。
「今、動けるのは私とあなただけ」
「な、何を……」
「あれだけ私たちを犯しておいて奥さんのところに行くんですか? そうは行きませんよ」
美しいが陰のある表情で、僕のズボンのチャックを下ろした。
「な…」
「いつもやっているじゃないですか」
そういうと、僕の棒にむしゃぶりつく。口に含んでしごくと、あっという間に発射した。
「んん、おいしい」
「七尾さん、今はやめてくれ! 妻のもとに行かなくちゃならないんだ!」
抗議したものの、体が動かない。
「だめですよ、私を気持ちよくしてください」
彼女はスカートをたくし上げる。下着をはいていなかった。
「ほら、ここに……」
「だ、だめだ!」
彼女は立ったまま、強引に僕の棒を割れ目に入れる。上げた脚を手すりに掛け、腰を振ってきた。
「んんん、電車の中なんて興奮しますね」
「あああっ!」
僕は二回目を発射した。
どうなっているんだ? まさかもう仮想空間から抜けられないのか!? もう妻や子供と会えないというのか!?
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