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前篇
三村由希子
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午後二時頃。ピークも終わり、客足が引いた。僕はある程度チキンをストックしたら、休憩室に向かう。同じタイミングで由希姉も休憩室に来た。
「けっこうお客さん来たね」
「ああ」
タイムカードを切って休憩に入る。
由希姉は、かばんからコンビニで買っておいたハムやレタスのサンドイッチとインスタントのカップスープを取り出す。僕はリュックから弁当箱を取り出した。中身は焼きそばと卵焼きだ。これとは別におにぎりが一個と温野菜サラダのタッパがある。
「いいなあ、おいしそう! お母さんに作ってもらったんでしょ?」
うらやましがる由希姉に対し、僕はドヤ顔で言う。
「自分で作ったんだよ」
「ええ!?」
「昨日は母が仕事だから僕が作ったんだ。焼きそばとサラダは昨日の夕飯を多めにしておいた。卵焼きは今朝、自分で焼いた」
「かずくん、料理できるんだ!」
由希姉が近くに寄ってきてのぞきこむ。あの、僕の膝をあなたの太ももが挟んでいるんだけど。
「何かちょうだい」
「だめ」
僕は無下に断って、さっさと焼きそばを食べ始めた。
「けちー」
「自分の弁当を食べて何がけちじゃ」
僕はどんどん食べ進める。休憩は一時間だから、さっさとしないと夕方からの仕事の準備ができない。
由希姉はうらめしそうに自分のサンドイッチを食べ始める。……ちょっとかわいそうだったかな?
「卵焼き、一つあげようか?」
僕は自分が食べる卵焼きを箸でつかみながら言った。三切れあるので一個くらいはいいか。
「やったあ!」
そう言うや否や、由希姉は弁当箱にある卵焼きでなく、僕が箸でつかんでいる方をパクッと食べた。
「は!?」
「んー甘くておいしい☆」
普通、弁当箱にある方をとらない? というかそれ、間接キス…まあいいや。
自由奔放で、ほかの男ともなれなれしく接する。彼氏がいるって知らなければ、勘違いする男が続出するタイプである。
僕は焼きそばとサラダとおにぎりを交互に食べ進める。すると、サンドイッチを食べ終わった由希姉が、僕のおにぎりをじーっと見つめる。
「おにぎり食べたい」
「あのな……」
おにぎりは一個しかない。しかも僕の食べかけで、あと一口くらいだ。ところが由希姉は、そのおにぎりを僕の手もろとも「パクッ」とくわえ込んだ。
「ちょっ…」
さすがに焦る。すると由希姉は口をしばらくそのままにして、舌を動かしながら「んんっ」と色っぽくうめいた。誰かに見られると恥ずかしいぞ。
「おいしかった。今度は私のも作ってね」
上目づかいで見られ、心臓の鼓動が早くなるのが分かる。何なんだ、一体……。
「けっこうお客さん来たね」
「ああ」
タイムカードを切って休憩に入る。
由希姉は、かばんからコンビニで買っておいたハムやレタスのサンドイッチとインスタントのカップスープを取り出す。僕はリュックから弁当箱を取り出した。中身は焼きそばと卵焼きだ。これとは別におにぎりが一個と温野菜サラダのタッパがある。
「いいなあ、おいしそう! お母さんに作ってもらったんでしょ?」
うらやましがる由希姉に対し、僕はドヤ顔で言う。
「自分で作ったんだよ」
「ええ!?」
「昨日は母が仕事だから僕が作ったんだ。焼きそばとサラダは昨日の夕飯を多めにしておいた。卵焼きは今朝、自分で焼いた」
「かずくん、料理できるんだ!」
由希姉が近くに寄ってきてのぞきこむ。あの、僕の膝をあなたの太ももが挟んでいるんだけど。
「何かちょうだい」
「だめ」
僕は無下に断って、さっさと焼きそばを食べ始めた。
「けちー」
「自分の弁当を食べて何がけちじゃ」
僕はどんどん食べ進める。休憩は一時間だから、さっさとしないと夕方からの仕事の準備ができない。
由希姉はうらめしそうに自分のサンドイッチを食べ始める。……ちょっとかわいそうだったかな?
「卵焼き、一つあげようか?」
僕は自分が食べる卵焼きを箸でつかみながら言った。三切れあるので一個くらいはいいか。
「やったあ!」
そう言うや否や、由希姉は弁当箱にある卵焼きでなく、僕が箸でつかんでいる方をパクッと食べた。
「は!?」
「んー甘くておいしい☆」
普通、弁当箱にある方をとらない? というかそれ、間接キス…まあいいや。
自由奔放で、ほかの男ともなれなれしく接する。彼氏がいるって知らなければ、勘違いする男が続出するタイプである。
僕は焼きそばとサラダとおにぎりを交互に食べ進める。すると、サンドイッチを食べ終わった由希姉が、僕のおにぎりをじーっと見つめる。
「おにぎり食べたい」
「あのな……」
おにぎりは一個しかない。しかも僕の食べかけで、あと一口くらいだ。ところが由希姉は、そのおにぎりを僕の手もろとも「パクッ」とくわえ込んだ。
「ちょっ…」
さすがに焦る。すると由希姉は口をしばらくそのままにして、舌を動かしながら「んんっ」と色っぽくうめいた。誰かに見られると恥ずかしいぞ。
「おいしかった。今度は私のも作ってね」
上目づかいで見られ、心臓の鼓動が早くなるのが分かる。何なんだ、一体……。
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