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一件落着
しおりを挟む車の前で待っていた僕らの元に、夕太郎が戻ってきた。
掛けられている手錠も外して貰えたようだ。
何で?
僕が首を捻ると、桜川さんが「アイツも犬になるんだな」と言った。僕は、ギョッとして隣に立っている桜川さんを見た。な、なんで僕と夕太郎が、ワンワンごっこをしていた事がバレたんだろう。
まさか、兄さんにもバレたのかな。怖、特殊能力って怖い!
「りとぉ~、助けてぇ。お兄さんが俺の股間を狙ってるのぉ」
走ってきた夕太郎が、僕の背中に頭を隠した。
「ええ⁉」
まさか、兄弟で三角関係? 確かに夕太郎は一目惚れしちゃうくらい格好よくて美しいけど。僕、兄さん相手に勝てる所なんて一つも無いんだけど。
「おぞましい事を言うな!」
「俺、お兄さんみたいな男はタイプじゃないんですよぉ。理斗、ちゃんと俺にたかる悪い虫を追い払ってぇ」
夕太郎が、僕の後ろから兄を指さしている。
「えっ……え……」
「悪い虫は貴様だろうが!」
夕太郎を激しく指さす兄のスーツからチラチラ拳銃が見えて怖い。夕太郎、唇切れてるし……でも、まさか撃ったりなんてしないよね。
「おい、お前ら……ふざけるのも大概にしろ。そこの食虫植物な弟を、病院に連れて行くんだろう?」
「そうだよ! 理斗、なんで怪我しているの? 痛いよ! 救急車? 救急車呼ぶ?」
夕太郎が僕の横にしゃがみ込んで、泣きそうな顔で応急処置の施された肘を観察している。
「だから、貴様のせいだろうが! くそぉ!」
なおも五月蠅い二人を無視した桜川警部補が、僕を車に乗せた。そして、自身も運転席に乗り込んだ。
「待て、桜川警部補!」
「ちょっと、ナナフシみたいなエリートさん⁉」
結局。僕には何が何だか分からないうちに、事件は丸く収まった。
兄や夕太郎に色々と聞いても、特殊能力の関わる重大事件は、これ以上報道もされないし、一般人には何も話せない。そう言われてしまった。
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