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第五十一話 海竜の襲撃(恐竜、残酷表現)
しおりを挟む『ん? ドローンがビービー言いだしたぞ』
サングラスの男が空を見上げた。すると、そこには、何台かのドローンが集まって来ていた。
『なんなのアレ? ドローンの撮影かな?』
女が手を振りながら、ドローンへと近づいて行く。
すると、ドローンの一機が砂浜に向かって降りてきた。そして、そこに何かを、そっと置くと直ぐに離れて行った。他のドローンも一斉に距離を取る為に移動した。
何機かのドローンが同じように、砂浜に何かを置いた。
『ウケる。置き配みたいじゃない?』
女は、ドローンが置いた、五センチほどの厚さの丸い缶を撮影するために、カメラを近づけた。
『何なのコレ?』
『何置いたんだ? 見せてみろよ』
リーダーが声を掛けると、女がその丸い缶に手を伸ばした。
ドーーーン
という音と爆風が襲ってきた。
『ひいいいいい!』
『うわあああ!』
周囲の尋常では無い様子に、まだ収まらない咳を堪えながら、寧々は体を起こした。
水を吸ったワンピースが重く体に纏わり付く。
(なに……今の? 戦闘が始まったの? ドローンの攻撃? 女性は……何処へ行ったの?)
『じ、地雷だ! 地雷が置かれたんだ!』
『ふっ、ふざけんな! 俺達は海竜じゃねぇ! 人間だぞ!』
『あいつ……吹っ飛んだ……い、今の撮った、俺……今の撮ったぞ!』
(吹き飛んだ……さっきの女性が⁉ そんな……)
四人の男達が、興奮と恐怖で目を見開いて叫んでいる。
その間にも、先ほどのドローンは等間隔に空中で待機をしている。寧々は恐ろしくて、必死に呼吸をしながら俯き、震えていた。
『に、逃げようぜ! 俺はもう戻る!』
ピアスの男が、恐る恐る歩き出した。
『くそっ! あのドローン、何処に置いたんだよ! 暗くなってきてよく見えねぇよ!』
ピアスの男が情けない声で叫んでいる。
『やだよ……おれ、吹き飛ばされたくねぇよ!』
『ビビってんじゃねーよ、ほら!』
サングラスの男が、ふざけてピアスの男を突き飛ばした。
『ひいあああ! ふざけんな! ふざけんなよ‼』
『あははは』
男達が揉めている間に、何とか逃げないと、寧々はそう考え、いうことの聞かない体を起こし、必死に立ち上がった。
すると、島の方から突然、ライトが砂浜に向かって照射された。
見上げると、高台の対海竜用迎撃場に、軍のジープが何台も停まっている。やって来たヘリも一台降り立った。
『た、助かった! おーい! 助けてくれ!』
ピアスの男が大きく手を振った。
『ぐあああああ!』
突如、周囲にサングラスの男の悲鳴が響き渡った。男は、突然砂浜に倒れ込んで、必死に砂浜の砂を掴もうと藻掻いている。
彼の足には、海から大きく細長い顔を出した、何かか食いついていた。
『うわあああ!』
ピアスの男が、その正体に気がつくと、男を振り返る事も無く地雷の存在も忘れ、一目散に走り出した。
『ひいい、離せ! 助けてくれ! 痛え! うぅぐっ……』
男の足に食らいついたノトサウルスは、男を海の中に引きずり混もうと動き出した。
ノトサウルスは、体長が四メートルほどで、海竜の中では小型な為、熾烈な生存競争から逃れる為に、進化の過程で四肢が更に発達し、陸地も自在に走り回り、現代では人の住む場所に現れると一番厄介な種類とされている。外見は、まさに巨大化したトカゲのようだが、歴史上、人類を一番食べていると言われるのもノトサウルスだった。
大きな口に太股まで食らいつかれた男は、玩具の人形のように振り回されていた。
(……海竜……海竜が…人を食べている……)
寧々は、あまりの衝撃的な出来事に、息を殺し、呆然と固まった。
『おっ、おい軍隊! 何やってるんだよ!』
リーダーの男が高台に向かって叫んだ。
すると、ジープの光を遮るように前に立った人物が、マイクを通して話し始めた。
『避難勧告に従わなかった人間を救助する義務は無い。当初の作戦通りその場で海竜を駆除する。巻き込まれたくなければ、自力で戻れ』
「……匠さん」
姿はよく見えないけれど、声で分かった。上に居るのは匠だと。その声に、少し現実を取り戻した。
でも、匠の様子や口調は、寧々の全く知らないもので、思わず体が震えた。
(どう、しよう……もし、ここに居るのが私だと分かったら……匠さんは、此処に来る……それは駄目……)
『くそおお! 此処には、島民の女もいるんだぞ!』
タトゥーの男が、寧々の肩を掴んで引き上げた。
「いっ……いや……だめ……」
寧々は必死に頭を下げて。拘束された腕を上げて顔を隠した。
男の【島民の女】という言葉に、軍人達の様子がざわついた。総員招集されている今の状態ならば、誰かの配偶者である可能性が高い。この島に住む人間で興味本位で緊急時に海岸にくる人間なんて居ない。巻き込まれて此処につれてこられたと予想できる。
ライトが一斉に男に捕まっている寧々に当てられた。
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