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第十二話 お助け美怜と平会
しおりを挟む「美怜ちゃーん!」
次の日、大学で美怜を見つけると寧々が小走りで駆け寄った。
「おー、寧々。どうだった馬面。撃退できた?」
「……」
「え? 何? しつこくされたの?」
美怜の眉間に皺が寄って、声のトーンが下がった。
「あのね……実は、凄く凄く楽しくて……また、会うことになったの」
寧々は、気まずそうに目を泳がせて言った。
美怜の顔が歌舞伎役者のような何とも言えない表情になった。
「チョロ! チョロ過ぎん? 寧々、ちょっとあんた大丈夫? 馬でしょ? いいの?」
美怜が寧々の肩を掴んで顔を近づけた。
「だって……私が馬にならなかったら、平さん他の馬を探しちゃうし……」
「惚れちゃってんじゃん! うそー、えっ? 何なの? え、純粋培養すぎたの? いや、うーんまぁ、即結婚ってわけじゃないだろうけどさぁ、まさか、もう付き合ってんの?」
「ううん、多分……まだ」
「はーー、馬面すごいね、ゴリゴリの強欲サラブレッドなの?」
「美怜ちゃん、だから平さんは馬面じゃないの……」
「写真ないの? 撮らなかったの?」
寧々は撮ってないと首を振ってから、そういえば……と思い出して空軍のPR動画を開いた。美怜が寧々のスマホを取り上げて、画面に見入る。
「……」
「美怜ちゃん?」
無言で何度も再生する美怜に、どうしたのか尋ねた。
「あー、しょうがない。これは利用されてもいいレベルだわ……で、この空軍のエリートの友達、いつ紹介してくれるんですか、寧々様」
美怜がわざとらしく寧々に肩を寄せてもみ手をして頼んだ。
「美怜ちゃんもお見合いしたいの? 彼氏さんはどうするの?」
「見合い⁉ 重い! そこまでじゃない。空軍のエリートの前に今彼など塵に等しい」
「彼氏さん泣いてるよきっと」
「タクミさんも泣いてますよ」
寧々の耳元で美怜が囁いた。
「匠さんは、片思いで終わった初恋だよ」
「へー、ふーん。まぁ良かったわね、新しい恋が始まりそうで」
「……言わないで……凄く恥ずかしい」
「今、私……ちょっと雄の心芽生えたわ……」
「で、どうだったんだ、平は」
いつもの店で、第二回平会が開かれていた。
意気揚々と話し始めるかと思った飯島は、沈黙している。その隣に座る岡前は苦笑気味だ。
「平と現れた女性は、あの平の隣にいても少しも霞まない、儚げな美人で、二人はもう、別世界の初々しいカップルそのものでした」
何故か岡前が鼻息荒く語った。
「写真はないのか」
「遠目ですが撮りました」
岡前がスマホを取り出して、画像を出すと拡大した。それに男達が密集し見入った。
「おお‼ さすが平!」
「おい……ちょっと待て……この子、義川空将のお孫さんだぞ。間違いない」
上官がスマホを取り上げ、じっくり見て言った。
「何ですって⁉」
ソレまで意気消沈していた飯島が、火が付いたかのように叫びだした。
周囲の隊員達が恐怖に戦く。
「そうね! そうよね! あの平先輩が女に夢中になるなんてありえない。これは義川空将の圧力によるものなのね!」
「空将はそんなお方では……」
上官の声は飯島には届かない。
「平先輩、おかわいそうに……」
「いや……お前何見てたんだよ、平、今まで見たことないくらい楽しそうだったじゃないか……」
嘆く飯島に岡前が冷静に突っ込みを入れたが、凄い目で睨まれた。
「やっぱり、平が我が空軍の次期トップだな」
「実力だけでも十分だけどな」
隊員達がうんうんと頷く中、飯島は「私がお救いします!」と叫び、岡前が「現実を見ろ」とその肩を叩いていた。
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