あの時、君の側にいられたら 【恋愛小説】

いんげん

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第六話 相手に嫌われるプラン

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「で、お見合いの報告を聞こうじゃないか」
 日曜日のお昼。寧々は美怜の一人暮らしの部屋にやって来ていた。
 二人はワンルームの部屋に置かれた小さい正方形のテーブルに向かい合って座り、至近距離で顔をつきあわせている。

「それがね。私がホテルについた直ぐに緊急警報がなって、お相手の平さんが出撃しちゃって、もう来ないだろうな、帰ろうって思ってたら、平さんが全速力で走り去って……」
「馬じゃん!」
 美怜がテーブルの上で右手の四本の指を器用に動かして馬を表現して走らせた。
「もー、美怜ちゃんが馬、馬っていうから、その後、会えてお話しした時に笑っちゃったよ」
「お礼はいいわ」
「それで、埋め合わせにもう一度会うってなったの」
「全然嫌われてないし、怯ませてないじゃん! もーなんで、来た瞬間に、何時間待たせるんだよ、て言わないのよぉ」
「えっ……だって、出撃だよ」
「良いのよ、嫌われる為よ。非常識なことしないと」
「た……確かに、美怜ちゃんの言う通りかも……」
 寧々が、うんうんと頷いた。

「じゃあ、次で後腐れ無く終わるように、ワガママ言いまくりなよ。ストーカーになられても困るでしょ」
「そういうタイプの人じゃ無さそうだけど……」
「良いの!」
「はい!」
 びっしっと指を差す美怜に、寧々が姿勢を正して敬礼をした。

「まず、自分だけが楽しいプランを考える。あとは男が好きそうな事をあえて外しまくって、嫌いそうな要素をモリモリに入れるのよ。あーでもなぁ、相手がアンタだと、何してても楽しいみたいなのあったりするからなぁ……よし! こじらせ初恋の彼の話題出しまくって、うぜぇ感出していこう」
 うんうんと頷いて寧々が頭のメモ帳に美怜の言葉を記した。


「自分だけが楽しいプラン……男の人が嫌いそうなお出かけ……ねぇ、ハルさん。ハルさんの旦那さんが嫌がるお出かけってどんな所?」
 家に帰り、寧々は昔からお世話になっている家政婦のハルに質問をした。
 ハルが庭の落ち葉掃除をする手を止めて考えている。

「旦那が嫌がるお出かけですか?まぁ、大体すぐ不機嫌になるんで何とも言えませんけど、先週、お友達とコスモス畑に行く予定だったんですけど、友人が膝の関節炎酷くなっちゃって、チケット勿体ないし車出して欲しかったから旦那誘って行ったんですけど、もー高速から文句たらたらですし、着いても花なんか見やしないし、人が多くて食事処混んでて入れないから、お腹空いて更に不機嫌になって、目に付いて買ったソフトクリーム食べたら寒いし、帰りの車内はお通夜ですよ」
「そうだったんだ、誘ってくれれば、私一緒に行ったよ」
「お嬢様ぁ」
 ハルが寧々の頭を抱きしめた。

「ハルさん、そのコスモス畑、まだ見頃かな?」
「ええ、来週くらいが一番かもしれないので、混みそうですよ」
「どうもありがとう」
(よし、コレで完璧ね……でも……ちょっと心が痛い……でも、駄目! 美怜ちゃんの作戦通りにしよう! ちょっと偉そうに上から目線でワガママを……)

スマホを取り出して、詠臣の連絡先を開く。
ドキドキしながら、あーでもない、こーでもないと文面を書いては消して、やっと納得のいくメッセージができあがり、送信した。
『私、遠足に行ったことがないので、連れて行って下さい。場所は此処が良いです』
(なんだか、とっても緊張する……なんなの、この偉そうな文章……あぁ……胃が……痛いかも)
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