転生して羽根が生えた僕の異世界生活

ひな鳥

ヘイヘイ、ブラザー教えてたもれ。
あなたは、どうしてオルニスなの。 

オルニスのルッキズム＝グット、ルッキング、鳥人間。 
ビューティーホー、トリ、チュン、メン。

 きっと、ハリウッドのポスターなら中心にドーンと羽広げてるはず! 

武器は、巨大な串。 
決め台詞は「刺したら、焼く!焼き鳥だ!!」 
シュール、ブラックコメディ、ヒーロー。
Yakitori bird 全鳥が泣いた。 

頭の中が、鳥散らかりながら、僕は、家にたどり着いた。 

ドアの前で、ぜぇぜぇ、苦しい呼吸を落ち着けてから、部屋へ乗り込んだ。 

「オルニス！」 
「おかえり、チーロ」 

オルニスとアガメルは、なぜか不自然な格好で僕を迎えてくれた。 

後ろの窓は、珍しく全開でカーテンがはためいている。 

「オルニス、美しい鳥人間、なぜ」

 なぜか、法廷にでもいるような気分で、オルニスに詰め寄った。 
「ん？」 
被告人、オルニスは困惑している。 
「なぜ、オルニスの美しさ秘密してた」 
僕は、ビシッと指を指した。 
「んん？」 
「あなたには、モクヒケンがあります」
 僕は、カッコいいポーズを意識して顔を手で覆った。 
「モクヒ剣とは、何のことだ？」 
「言いたくないことは、言わなくて良いケンです」 
「口封じに使う剣か？どうして、そんな物騒な話を？」 

「だから、オルニスが美しいってはなしです!」 
「……こ、光栄だ」
オルニスは、はにかんで笑いながら目を泳がせた。
「あれ……と言うことは、僕も将来は、オルニスそっくりになるから……楽しみです!」
「そっくりですか？」
アガメルが、頬に手を当てて不思議そうに僕の顔を眺めた。

「そうです、番だから、大きくなったら、そっくりになります」
「番だから、そっくり？　それは、夫婦は似てくるという人間達の通説みたいな話か？」
「フーフ？」
「ああ、生涯を共にする愛し合う仲だ」
「ショー貝を、友にする、アイ、しあう中だ」
オルニスの腕が僕の腰に伸ばされ、抱き寄せられた。
僕の額に、オルニスの唇が触れる。

その頃、僕の頭はもつれていた。
上書きする内容が多すぎて、プスプスと湯気を出しそうだ。

ということは、なんですか。

オルニス＝美しい。
番＝夫婦

「僕たち、兄弟ではないですか？」
「は？　誰がそんな話を？」

誰も言っていない。

多分、きっと、間違いなく、誰も言っていない。

オルニスが不細工だとも、兄だとも。

「あれえええええ？」

僕は、思いっきり頭を下げて振った。

「チ、チーロ！　どうした⁉」
「チーロ様⁉」

慌てふためく二人に構っていられない僕は、ベッドに走り、飛び込んだ。
自然とパタパタ羽根が動くけど、落下速度は変わらなかった。

夫婦？
え……僕たち、夫婦なの？
動揺で羽根の動きが止まらない。

「オルニス！」
「どうした⁉」
「オルニスは、メスですか？」
「……」

オルニスの美しい顔面は、今、無に支配されている。石膏化している。

「まさか……僕は、メスですか？」
「チーロ様！貴方に、そんな下品な表現は似合いません！　チーロ様は、可憐で美しい男性体ですよ」
「……」

今度は、僕が無に支配される番だった。
ということは、何ですか？
鳥人間は、雄同士でも番になるのでしょうか？
え？　僕らは、雄夫婦？　

不思議と嫌悪感はないけれど、青天の霹靂すぎる。
チラリとオルニスに視線を送った。
ぐうの音も出ない程の美しい男だ。男だけど、美し過ぎて簡単に性別の壁越えられそうだ。
性格的にも、面倒見が良くて優しい。しかも飛べる。
良い匂いするし、羽根とか、手触り良すぎて一生触ってられる。

いや、でも無理。なんか、まだ恥ずかしいし、イキナリ夫婦できないし！

「ぼ……ち、チーロは、まだ子供です！ひな鳥なのです！」
「あ、ああ、可愛いな」
「ええ、とても愛らしいです」
「だから、びゅんびゅん飛び回れる大人になるまで、オルニスとは夫婦にはなりません！」

ぶわ！！
オルニスの大きな翼が開いた。
その勢いで風が巻き起こり、部屋のモノがゴトゴトと落ちたり、絵画が音を立てて揺れた。

僕は、表情を引き締めてオルニスの目を見つめた。
一歩も引かない所存です。

オルニスは、ふわりと優雅に片膝をついてしゃがみ込んだ。
その目は伏せられ、まるで悲哀にみちているようで、宗教画のような神々しさもある。

「わかった。よく、理解した。俺が必ず、チーロを羽ばたかせてみせる」
「あ、え……あの……よ、よろしくお願いします」