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美醜逆転勘違いの果て
しおりを挟む少女達の掲げる姿絵を見て、僕は驚いた。
ナチュラルに二度見をしてしまった。
「オルニス…えっ…オルニス………どういうこと!?」
オルニスって、この美醜逆転した世界では不細工なんじゃなかったの?
いま…さっきの少女達は、格好いいとか、美しいとか言っていたよね?
ん?
オルニス普通に格好いいの?
この世界の人、僕と同じようにオルニスのこと美しいと感じるの?
「っは!」
ベンチの横で、噴水を見上げている風に立っていた僕は、気づくとベンチに片足を乗り上げていた。
少女達二人は、口を開けて僕を見つめていた。
不審者!
僕、完全に不審者じゃないか。
あっ…いつの間にかケープも取れていた。
「いや!あの!チーロなくて…えっと…僕は、あやくしくないです!」
「「……」」
何てことだ…、ちゃんと喋れないことが余計に怪しい。
くぅ…今まで、オルニスとアガメルと過ごすことばかりだったから…怠けていた、もっと言葉の矯正しておけばよかったよ。
あえいう、えおあお
赤巻紙、青巻紙、黄巻紙。
ただいま留守にしております、ピーという発信音の後に…
「きゃあああああ!!」
「いやああああ!!」
「ひぎゃああああ!!」
噴水の広場に響き渡る、少女たちの絶叫と僕の叫び。
どっ、どっ、どうしよう!痴漢疑惑!?
僕、逮捕。
僕、収監。
僕、裁判。それでもチーロはやってない。
「チー、ぼ、ぼく…そんなに怪しいですわ!」
「しゃっしゃべった!!」
「やああああああ!」
えぇ…どうしよう、不細工には発言も許されない。絶対しゃべったらあかん24時。
どうしたら、この誤解を解くことができるの?
ジェスチャー? 丸腰をアピール?
あれ? そういえば…美醜は逆転してない?
えっ…じゃあ…まさか、僕は見たとおり無害な美少年なの?
そういえば、よく見ると女の子たちは叫んでいるけど、僕の顔をマジマジと見ている気がする。
いや、自意識過剰?
「お…おどろかして…ごめんね」
ちょっと引きつりながら、少女達に向かってニコッと微笑んでみた。
決して怪しい者ではありませんという気持ちを込めて。
「「……」」
少女達は、固まった。
は…恥ずかしい。とてつもなく恥ずかしい!
今すぐ重機でこの石畳の道を掘り起こして埋まりたい。
もういっそ、噴水に飛び込みたい。
気がつくと、いつの間にか周囲の人達も僕らに注目している。
人がワラワラと集まって来ている。
果物を台車で販売している店員さんの手からオレンジのような果物が転がっている。
マチの警備兵も僕を呆然とみている。
犯人は、この騒ぎの中心に居る!
そう、僕。
不細工、騒乱罪。
「何で!何で!同じ生物と思えない!!キラッキラのさらっさら!」
「目が落ちちゃう。美しい宝石かっ!」
「……?」
ベンチ前に佇む僕の周囲を、少女二人が動き回る。
「肌にシミもソバカスも、黒子さえ見当たらない…もはや発光しているわ…」
「いや…あの…」
「顔が小さすぎる…綺麗すぎる…神様の創作意欲の違い著しい…」
まさか…僕、容姿を褒められている?
えっ…やっぱり美醜逆転は勘違いだったの!?
「かわいすぎる…美貌で有名なコーラル姫も霞むわ…」
「綺麗すぎて女子として嫉妬すら湧かない…さすが…オルニス様の番」
おっ…お尻がムズムズしてきた。
人生初の容姿を褒められるという状況に、居心地が悪い。
正直、僕は僕の姿を見る機会が少ないから、感覚はまだ千葉一郎で生きているのだ。
なのに、容姿を褒められると、壮大なドッキリか、からかわれているのかと感じる。
「あぁ…本当にお似合いだわ!愛する二人のツーショットが見たいですわ!」
ん?
お似合い?愛する二人?
ん?この世界だと兄弟もそういう表現するの?
「番様!ぜひ、お名前を教えて下さいませ!」
二人がキラキラと輝く瞳で、僕に迫る。
千葉時代、女子と何の接点もなかった、この僕に。
「な…」
「「ナ?」」
「名乗るほどの者じゃじゃいです!」
僕は、どこの武士だよ、という台詞を吐いて走り去った。
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