転生して羽根が生えた僕の異世界生活

いんげん

文字の大きさ
上 下
25 / 27

チーロ、ナンパに行く

しおりを挟む

「ぐらぐら…」

僕の頭の中で、巨大な渓谷の間にかかる大きな吊り橋が、強風に揺られている。

「ぐらぐら…」

そこを渡る、僕…うわぁ…超怖い! いつ吹き飛ばされても不思議ではない。
すごい馬鹿みたいに震えながら吊り橋のロープにしがみついて、もう前にも進めず、後ろにも戻る事が出来ない場所で、鼻水ながしながら、ひぃいいと言っている。

そんな、僕の元に颯爽とやって来て、優しく抱きしめて、前に進もうとしてくれるオルニス。
包み込んでくれる逞しい体に、少し切れ長な秀麗なお顔。そして何より、僕を見つめる…熱い眼差し。

トゥクン

高鳴る僕の胸。

えっ…コレは何ですか?

もしかして…恋?

心臓がドキドキして、ちょっと苦しい。

これは…恋……

「じゃない!そうじゃない!これは…」

『萌え萌え、ダーリンと私のラブ、ぐらぐらブリッジ』でやっていたアレだ。
恋の吊り橋効果音…ドドン…ドドン…あっ、これ高架下の効果音だ。

とにかく、これは恋じゃなくて…なんかそういう、心理的な異常! だってオルニスって僕のお兄さんだし!
気の迷い! 駄目だ、僕。吊り橋のアッチ側に渡っちゃ駄目。
何とか、元来た道に引き返さないと!

そう…その為には、何が必要か…それは…

「チーロは、おんなこのを探しに行くみたいですからね」

僕はお出かけの支度を一人ですませ、若干緊張して言葉がいつもよりおかしくなりながら言った。だって恥ずかしいじゃないか、兄に「僕、今から恋を探しに行ってきます」って。
まぁ、今まで恋なんてクラスのマドンナの斉藤さん可愛いなとか、そのレベルですし。外を歩いただけで恋が始まるなんて甘いことは考えてません。
いいんです、ほんのりと片思い出来る、あぁ…素敵だなあと思える相手に出会えれば、僕の目が覚めるはず!

かわいいは、全てを解決してくれるはず!

でも、この世界…美醜逆転しているから…僕は相手を可愛いと思っても、相手は現在の僕の容姿は「うわ…キモい」と思われてしまうけど…。

「おんなこの…」
甘い微笑みで僕を見守っていたオルニスが、キョトンとした顔で呟いた。
「女の子でしょうか…」
アガメルが僕の言いたいことを通訳してくれた。

「そう、そうです。チーロは、女の子を見て来ます。行ってきます!」

声に出して言うと、何だかチャラ男か、変態のどちらかだな…。
色々聞かれる前に、脱出しようと早々に部屋を出る。

「待て!チーロ。何だか分からないが、危険だ。俺も行く」
閉めようとした扉は、オルニスの逞しい腕で押し返された。

「間に合ってます!」
誰がナンパ的な活動に保護者同伴で行くっていうの。
僕は、オルニスの返事を待たずに、走り出した。

邪魔になる長い髪はアップにして、羽根と一緒にフード付きケープで隠してある。
パッと見は、女性か少年だろう。

走りだして、宿の外まで出て、何だかふと背後に気配を感じて振り返った。
周囲の人々が何だかザワザワとしている気がするけど…気のせいかな?
僕は。フードを目深に被りなおして、足を進めた。

「……」

オルニスとアガメルと出かけると、明らかに衆人の注目を集めるけど、今、僕に注目する人は居ない。
あぁ、そうそう…これが普通の感覚だよね。彼らは目立ち過ぎる。


それにしても、何処へ行こうか。
女の子の多い場所って何処? 日本だったら、都心のファッション系のお店は女の子だらけだけど、この世界も洋服屋さんとかは、そんな感じ? それとも、安いオシャレ系カフェとか?
まさか…まさか……いや、行かないけど……花街みたいな店があったり?

僕の手のひらに汗が滲む。

そんな事を考えながら街を歩いていると、噴水の前のベンチで、推定十代後半の女の子が二人、何かの紙を見ながら、キャッキャとおしゃべりをしている。
特別美少女ではないけど、生き生きとした笑顔が可愛くて、元気な二人組だ。

何をそんなに盛り上がっているのか、僕は興味をそそられて、彼女たちの近くへ足を進めた。

「ホント美しさの権化!」
「もやは人間じゃないからね!もう…眼福…」
「…この絵姿に家の手伝いで貰ったお金全て使ったけど…良い買い物だったよね…」

これは…もしや、この世界のアイドルに盛り上がる少女達の姿では?

「あぁ…格好いい……」
「本当に素敵」

この世界の美形!
とても興味ある。
凄いゴツい、顔まで筋肉みたいなタイプかな?それとも、こう…ふくよかな、富がある感じかな?
僕は、そっと彼女たちの座るベンチの斜め後ろに回った。ちらっと。ちらっとだけ見せてい
ただければ幸いです…。決して…変態ではないので…許して欲しい。

「……えぇ!」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり… 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...