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お見舞いに来たよ
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「裏では、街一番の腕利きだという事で…本来、チーロ様が足を踏み入れていい場所ではないのですが…」
「みすぼらしいし、汚いな…チーロ帰ろう」
薄暗い路地に立ち並ぶ、古い木造の3階建ての一軒家。
震度4位で、崩れそう。
日本だったら違法建築だと思う。
窓も石投げたら割れそうに薄い。木がギシギシ悲鳴を上げそうだ。
「チーロ、お見舞い来た」
正直、本来の目的であるオルニスの診察は必要が無くなった。
どうやら、怪我は治っている。
飛べないのはメンタルの方みたい…。
ただ、外の人の様子も気になる!
この世界に転生して初めて接点を持った人だから。ぜひ元気になって全うな道に進んでほしい。
「ごめんなさーーい!」
木戸をコンコン叩いて叫んだ。
「…チーロさま、ごめんくださいかと…」
「アガメル…余計な事を言うな……かわいいから正解だ」
オルニスが真剣な顔で言い切った。
「ごめんくっさい」
後ろの二人が何か言っているけど、構わずに勝手に戸を開けた。
鼻に消毒液の匂いが広がった。
中は、意外と広く机や棚にはガラスの瓶や、本、金具などが乱雑に置かれていた。
椅子に座っていた、お医者さんらしき中年男性が、僕を見て固まっている。
「あっ…チーロ、顔は病気じゃないよ!お見舞いに来ましたよ!」
この超絶不細工は病気ではありません。このフード付の羽根を隠すローブから、ついピョコピョコ出る羽根も気にしないでほしい。
「先日運びこんだボブの見舞いに参りました。」
僕の前に出て、アガメルが言った。
若干お腹周りが太くなった先生は、まだ固まったまま、アガメル、オルニス、僕を目だけキョロキョロ動かして見ている。
「さっさと済ませたい、あいつは上か?」
オルニスが横で腕を組みながら、不機嫌そうに言い放った。
オルニス!めっちゃ失礼。
僕は、オルニスの肘を掴んで、めっ!と怒った。
不細工のせいで不当な扱いを受け続けて、ツンツンしちゃうのかな?
「あっ…はい!上です!こちらへ」
お医者さんが、ピンと立ち上がるとテーブルから物がこぼれて落ちた。
病院なのに?と思う程の急な階段を登ると、二階は入院スペースになっていて、5台程のベッドが設置されていた。
「………」
入院患者さんの視線が一斉に僕らに集まった。
「こんにちは」
害はないですよ…と示したくて、ニコニコ皆さんに微笑んで先生の後をついて歩いた。
外の人…さっきアガメルがボブって言ってた。
「ボブ!!」
「はいっ!」
ボブは一番奥のベッドで上半身を起こして座っていた。
ベッドの間に仕切りのカーテンなどは無い。ベッドは木製のフレームで、現代のようなスプリングではなく布団が敷かれていた。
「ボブ大丈夫ですか?」
ボブのベッドに近寄ろうとしたら、オルニスに掬い上げられるように抱っこで拘束された。
「近寄るな」
「…チーロさま、誤って傷に触れるといけませんからね」
おぉ…確かに、この羽根の生えた体になってからバランスが難しくて、色々な所に突っ込んじゃうから、ボブの足にダイブしちゃうかもしれない。
「ボブ、お見舞い来たのです」
アガメルのお見舞いの品を指差しながら微笑んだ。
太ももから、ふくらはぎにかけてぐるぐるに巻かれた包帯が、若干染み付いているのは、洗って何度も使っているからだろうか…。
そういえば…現代の病院の包帯とかって、どうなっていたのだろう…と疑問に思った。
「こちらは、チーロさまが自らお書きになったカードです。そしてこちらは、オルニスさまが育てましたヨギーの葉です。お納めください」
アガメルが、カードをボブに、葉っぱを先生に渡した。
「すごいな…これは…治療費はもう貰っているのに…」
先生が受け取った葉っぱを、呆然と見下ろしている。
どうやら結構高価みたい…菓子折りの下の札束的な!
「……うっ……うう…」
「ど…どしたの?!ボブ、苦しいの?」
突然、ボブが嗚咽し、前屈するように顔を伏せた。
ドレッドの髪で顔が隠れてて、よく分からないけど、体が異常な程に震えてる!
そして、ボブの手には僕が贈ったカードが握られている。
【貴方の足が速くなりますように】
あっ…足が早く良くなりますようにだったか!
「…こんな…こんなの始めてだ…」
まぁ、そうだよね。
アホだ…僕、アホだよ。
「こんな、社会のゴミのような俺に……うぅ……」
あれ?違うな…喜んでくれているの?!
ボブ…良いやつだ。
あれ?
他のベッドの人たち…みんな顔を伏せてどうしたの?!
手を組んで何かに祈っている人までいる。
「ぼ…僕たち…さっさと帰った方がいいかな…」
「ああ」
オルニスにぎゅっと抱きついて、耳元で聞いた。
オルニスは僕の頬に自らの頬をスリスリさせた。
「一時は危なかったですが、大した生命力ですよ…もう心配無いです」
先生が片手でボブの頭を叩いた。
「良かったね、ボブ…チーロ嬉しいです」
ボブに向かって微笑むと、顔を上げたボブと目があった。
ボブの目からは、ボロボロと涙が流れている。
ボブって盗賊なのに泣き上戸なの?
ちょっと可愛くてクスクス笑ってしまう。
「……俺…俺……アンタに助けられた命だ……心を入れ替えて生きる……」
「俺もです!!」
「私も…」
「っ!」
なぜだか病室全体が涙に包まれている。
こ…これは、超絶不細工でも頑張って生きている僕らを見て…何か心に響いちゃった?
「みんな、早く良くなりますように……先生、よろしくお願いしまっす」
「……」
先生が背筋を伸ばして真剣な顔で頷いた。
「では…チーロ様、皆様が休めないですし、そろそろ参りましょう」
「うん!」
僕を抱いたオルニスが早々と背を向けあるき出した。
僕はオルニスの上から、ボブや病室の患者さんに手を振る。
僕らが病院から出ると、薄い窓が割れそうなくらい、中が騒がしくなった。
なんだあの生き物は!!とか死ぬかと思った!!とか聞こえて来て、ちょっぴり切なくなったけど、ボブが元気そうで安心した。
「みすぼらしいし、汚いな…チーロ帰ろう」
薄暗い路地に立ち並ぶ、古い木造の3階建ての一軒家。
震度4位で、崩れそう。
日本だったら違法建築だと思う。
窓も石投げたら割れそうに薄い。木がギシギシ悲鳴を上げそうだ。
「チーロ、お見舞い来た」
正直、本来の目的であるオルニスの診察は必要が無くなった。
どうやら、怪我は治っている。
飛べないのはメンタルの方みたい…。
ただ、外の人の様子も気になる!
この世界に転生して初めて接点を持った人だから。ぜひ元気になって全うな道に進んでほしい。
「ごめんなさーーい!」
木戸をコンコン叩いて叫んだ。
「…チーロさま、ごめんくださいかと…」
「アガメル…余計な事を言うな……かわいいから正解だ」
オルニスが真剣な顔で言い切った。
「ごめんくっさい」
後ろの二人が何か言っているけど、構わずに勝手に戸を開けた。
鼻に消毒液の匂いが広がった。
中は、意外と広く机や棚にはガラスの瓶や、本、金具などが乱雑に置かれていた。
椅子に座っていた、お医者さんらしき中年男性が、僕を見て固まっている。
「あっ…チーロ、顔は病気じゃないよ!お見舞いに来ましたよ!」
この超絶不細工は病気ではありません。このフード付の羽根を隠すローブから、ついピョコピョコ出る羽根も気にしないでほしい。
「先日運びこんだボブの見舞いに参りました。」
僕の前に出て、アガメルが言った。
若干お腹周りが太くなった先生は、まだ固まったまま、アガメル、オルニス、僕を目だけキョロキョロ動かして見ている。
「さっさと済ませたい、あいつは上か?」
オルニスが横で腕を組みながら、不機嫌そうに言い放った。
オルニス!めっちゃ失礼。
僕は、オルニスの肘を掴んで、めっ!と怒った。
不細工のせいで不当な扱いを受け続けて、ツンツンしちゃうのかな?
「あっ…はい!上です!こちらへ」
お医者さんが、ピンと立ち上がるとテーブルから物がこぼれて落ちた。
病院なのに?と思う程の急な階段を登ると、二階は入院スペースになっていて、5台程のベッドが設置されていた。
「………」
入院患者さんの視線が一斉に僕らに集まった。
「こんにちは」
害はないですよ…と示したくて、ニコニコ皆さんに微笑んで先生の後をついて歩いた。
外の人…さっきアガメルがボブって言ってた。
「ボブ!!」
「はいっ!」
ボブは一番奥のベッドで上半身を起こして座っていた。
ベッドの間に仕切りのカーテンなどは無い。ベッドは木製のフレームで、現代のようなスプリングではなく布団が敷かれていた。
「ボブ大丈夫ですか?」
ボブのベッドに近寄ろうとしたら、オルニスに掬い上げられるように抱っこで拘束された。
「近寄るな」
「…チーロさま、誤って傷に触れるといけませんからね」
おぉ…確かに、この羽根の生えた体になってからバランスが難しくて、色々な所に突っ込んじゃうから、ボブの足にダイブしちゃうかもしれない。
「ボブ、お見舞い来たのです」
アガメルのお見舞いの品を指差しながら微笑んだ。
太ももから、ふくらはぎにかけてぐるぐるに巻かれた包帯が、若干染み付いているのは、洗って何度も使っているからだろうか…。
そういえば…現代の病院の包帯とかって、どうなっていたのだろう…と疑問に思った。
「こちらは、チーロさまが自らお書きになったカードです。そしてこちらは、オルニスさまが育てましたヨギーの葉です。お納めください」
アガメルが、カードをボブに、葉っぱを先生に渡した。
「すごいな…これは…治療費はもう貰っているのに…」
先生が受け取った葉っぱを、呆然と見下ろしている。
どうやら結構高価みたい…菓子折りの下の札束的な!
「……うっ……うう…」
「ど…どしたの?!ボブ、苦しいの?」
突然、ボブが嗚咽し、前屈するように顔を伏せた。
ドレッドの髪で顔が隠れてて、よく分からないけど、体が異常な程に震えてる!
そして、ボブの手には僕が贈ったカードが握られている。
【貴方の足が速くなりますように】
あっ…足が早く良くなりますようにだったか!
「…こんな…こんなの始めてだ…」
まぁ、そうだよね。
アホだ…僕、アホだよ。
「こんな、社会のゴミのような俺に……うぅ……」
あれ?違うな…喜んでくれているの?!
ボブ…良いやつだ。
あれ?
他のベッドの人たち…みんな顔を伏せてどうしたの?!
手を組んで何かに祈っている人までいる。
「ぼ…僕たち…さっさと帰った方がいいかな…」
「ああ」
オルニスにぎゅっと抱きついて、耳元で聞いた。
オルニスは僕の頬に自らの頬をスリスリさせた。
「一時は危なかったですが、大した生命力ですよ…もう心配無いです」
先生が片手でボブの頭を叩いた。
「良かったね、ボブ…チーロ嬉しいです」
ボブに向かって微笑むと、顔を上げたボブと目があった。
ボブの目からは、ボロボロと涙が流れている。
ボブって盗賊なのに泣き上戸なの?
ちょっと可愛くてクスクス笑ってしまう。
「……俺…俺……アンタに助けられた命だ……心を入れ替えて生きる……」
「俺もです!!」
「私も…」
「っ!」
なぜだか病室全体が涙に包まれている。
こ…これは、超絶不細工でも頑張って生きている僕らを見て…何か心に響いちゃった?
「みんな、早く良くなりますように……先生、よろしくお願いしまっす」
「……」
先生が背筋を伸ばして真剣な顔で頷いた。
「では…チーロ様、皆様が休めないですし、そろそろ参りましょう」
「うん!」
僕を抱いたオルニスが早々と背を向けあるき出した。
僕はオルニスの上から、ボブや病室の患者さんに手を振る。
僕らが病院から出ると、薄い窓が割れそうなくらい、中が騒がしくなった。
なんだあの生き物は!!とか死ぬかと思った!!とか聞こえて来て、ちょっぴり切なくなったけど、ボブが元気そうで安心した。
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