転生して羽根が生えた僕の異世界生活

いんげん

文字の大きさ
上 下
15 / 27

少年の浪漫

しおりを挟む
いやはや、市場ってたくさん人が居て、まっすぐ歩けないじゃないですか、普通は。

でも、それはそれは、快適にスイスイ歩けていますよ。

何せ超絶不細工な上に、天人と仮面ですからね、関わりたくない度合い100%だよね。

僕らの前には道ができる。

何やら容赦なく、ヒソヒソ話をされている。


「チーロ、ほら巷で流行っている菓子だぞ」

オルニスが棒に刺さった揚げパンのようなものを、一口かじって僕の口元に持ってくる。

パクリ

「…これ、美味しいね」

「よし、待ってろ全部買う」
「ちょと、まつ!チーロ1つ良い!お腹ポンポンポンよ!」
甘いパンを頬張りながらオルニスの腕を掴んだ。
さっきから目についたものをどんどん買いまくるの…本当にやめてほしい。
おかげで、大分お腹が重い。

「そうか…チーロはもっと食べた方が良いと思うぞ。今でも十分可愛いが、華奢過ぎて心配だ」

こうやって金持ちの子供はちょっと丸くなって行くのだろうか。

「チーロさま、口元が…」

アガメルが、ハンカチを取り出して僕の口についてる粉を拭き取ってくれた。大分、神経が繋がって来た羽根がプルプルと動く。
仮面から出ている、日本人に馴染みが深い黒い瞳と目が合う。

周囲から謎のため息が聞こえて来る。

「アガメル、あっと…ああ!!」

視線の先に道具屋さんを発見した。
何だか色々と商品が並んでいる。
僕は、そこへ駆け寄って商品を眺め始めた。後ろから二人がついてくる。

「いらっしゃ…」

新聞を眺めていた店主が、こちらを見て、フリーズした。
ごめんオジサン。不細工だけど害は無いから。

「おぉ…羽根のペン!」

オタクなアートをこよなく愛する僕は、自分も絵を書く。
そろそろ絵が描きたいと思っていた。
最近、僕が突然羽根を開いちゃって、色んな物にぶつかるからか、宿の部屋の物が色々撤去されて筆記用具も消えた。

だって…感情に羽根の動きが左右されて制御できないんだ。
大きな物音とかすると、バサっと開く。
羽根は大きくないけど、たまたま水差しに当たって、落とした時は大騒ぎだった。
二人が血相変えて突進してきて、僕が抱きあげられている間に、アガメルが瞬時に片付けた。
「いいか!割れたガラスには絶対に触るなよ!絶対にだ!」
と、オルニスにいい含められて、おぉ…そうか!僕は生まれたてだから何もわかって無いと思われているのかと気が付いた。

残念だったなオルニスくん。僕は前世の記憶があるので、頭脳チートだ!前世での成績は、常に下の上程度だったけど。

ここはお絵かきという特技を披露して、彼らを、ぎゃふんさせる時が来た!!

「オルニス、これ買えるできる?」

クリーム色の羽根ペンを持って、追いついてきたオルニスを振り返る。

「駄目だ。どこの鳥の羽根かわからないような物を触るな…」
何故か不機嫌なオルニスに、羽根ペンを取り上げられた。
もともとキツイ目元が上がって、迫力が増して超怖い。

バサッ

フードの中で羽根が広がった。

「あー、別に怒ってない…悪い…」
オルニスが羽根ペンをお店のテーブルに戻して、僕の頭をポンポンした。
「チーロさま、オルニスさまは、貴方が、他の鳥の羽根に触れたから嫉妬してるだけです」

ん?ちょっと意味がわからない。
鳥人間って、家族が他の鳥のものを入手するのタブーなの?

「…今度、俺の羽根で作って持ってこさせるからな」

「……て…天人さまの……羽根ペン…」
店主が何か呟いた。

「店主、一番上質な紙とインクを仕入れて、ホーの宿まで届けて下さい」
「…は、はい!!」




あっちこっち見て回って、ふと視界に、仄暗い道が入ってきた。

これは!

裏路地というやつでは?!

キタァァァ!
裏路地=腕利きの闇医者=どんな患者も金さえ払えば見てくれる!!

オルニスのお医者さんを探すぞ!

僕は一目散に駆け出した。

「チーロ、走ると危ないぞ」

二人がゆったり追いかけてくる。
この上なく怪しい僕らには裏路地のチンピラも逃げ出すこと間違いなし!

昼間なのに薄暗いのは、市場と違って道が開けてないから、建物で影が出来ているからだろう。

木造の3階建て程の古い建物が密集している。

「ああ!」

黒に近い青色の、1メートルくらいのツボが10個くらい壁に並んでいる。

RPG定番の並んでるツボ!

コインが入ってるの!?
アイテムなの?

僕は、目を爛々に光らせてツボに駆け寄った。

「お…おい、チーロ」

「チーロは、ちゅぼを調べた!何もない!」
片っ端から覗いていく。

「チーロ、やめろ。汚いぞ」

僕の行動に困惑気味のオルニス。
アワアワしている、アガメル。
二人にはこの浪漫がわからないかぁ。

「チーロは、ちゅぼを……ぎゃあああ!!」



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり… 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...